中2の自分が喜ぶ音楽かどうか――武道館公演を控え、勢いを増す5人の指針はかくもシンプルなものだった。初のシングル“Hyper”には無敵状態の現在が映っている!!

 昨年はアルバム『telegraph』、今年はEP『MAGNET』をリリースし、いずれも高評価を獲得。また7月には「ミュージックステーション」に出演したり、来年1月の武道館公演も決定したりと何かと話題のKroiがシングル“Hyper”をリリースした。そんなハイパー大忙し中の5人が感じている変化とは?

 「バンド専用の制作部屋が出来て、今作のカップリングの“暴走”はそこで作りました。完全防音でドラムも叩けるし、制作環境が整ってきましたね」(千葉大樹、キーボード)。

 「変化が目に見えてわかるのはライヴやフェスの現場。集客が明らかに増えたし、俺らを初めて観るというお客さんたちも多くなった」(関将典、ベース)。

 「だから、できるだけ〈コアすぎないように、かつ怖すぎないように〉を意識しています。俺ら、黙ってると見た目が怖いじゃないですか? なるたけキャピキャピ振る舞うようにしてます(笑)」(内田怜央、ヴォーカル)。

 「とはいえ、前のツアーでおふざけを出しすぎちゃった反省もあるので、いまはライヴ自体のクォリティーを上げていく段階に入ってますね」(関)。

Kroi 『Hyper』 IRORI/ポニーキャニオン(2023)

 フィジカルでは初となるシングル“Hyper”。ホーン隊を従えたド派手な表題曲は、TVアニメ「アンダーニンジャ」のオープニング曲だ。

 「アニメの主題歌が決まって、どういう曲にする?という話になったときに、怜央がいくつかデモを持ってきたんです。そのなかで、この曲がいちばん作品の世界観と合いそうで」(関)。

 「アニメにマッチしすぎてて、他の曲を作るスキマもなかったっすね。サビ後の〈ややこいややこい〉というフレーズだけはデモから決まっていました。曲調は勢いがあるのに歌詞は気怠げ。そのミスマッチ感が、主人公の苦労してる感じや、出来事のひとつひとつは小さいながらも壮大なストーリーに繋がっていく世界観に合ってたんですよね」(内田)。

 「演奏面での挑戦は、鍵盤ハーモニカを入れたところ。デモにそれっぽい音が入ってたからレコーディング当日に買いに行ったんです。でも、いきなりレコーディングするのは厳しかった(笑)」(千葉)。

 「あとは何と言ってもホーン・セクション。サックスの永田こーせーさんが率いるホーン隊にお願いしたんですけど、かなりアタック感のある音で曲のシンボリックな部分になった。Kroiのファンキーさが倍増していると思います」(関)。

 近年、減少傾向の〈シングルCD〉をリリースしようと思った理由は?

 「シングルCDって流行じゃないというか、いまはそんなに出さないですよね。だからこそおもしろいと思った。カップリングには音数を削ってラップが多めの“暴走”を持ってきました。最近、要素を詰め込んだ曲をたくさん作っていたので、〈引き算〉の曲を入れたいという気持ちがあって」(内田)。

 「セッション感が出てると思います。プリプロ部屋で作業中にちょうどUber Eatsが来て、そのインターホンの音も入ってるし(笑)」(千葉)。

 武道館公演を目前に、知名度を上げ続ける現在も、ポップに寄せるわけでもなく、我を貫き通すだけでもなく、ただ攻めの姿勢を崩さない5人。目下の目標は?

 「リスナーの幅を広げていくための曲作りは意識しつつ、自分たちのやりたいことをいかに裏切らないか。そのバランスを考えながら、正解を探し続けていますね。でも最終的な指標は〈中2の自分がコレを聴いて喜ぶか否か〉。大人になるといろんな知見が邪魔をして、音楽を純粋に楽しめなくなるけど、やっぱり耳の気持ち良さだけが指針だった時期のピュアな自分に刺さるようにしたいとは思ってます」(内田)。

Kroiの近作を紹介。
左から、2021年のアルバム『LENS』、同年のEP『nerd』、2022年のアルバム『telegraph』、2023年のEP『MAGNET』(すべてポニーキャニオン)