チャンスをうかがい、食らいついた25年。

 バンドネオン奏者の小松亮太がデビューから25年を迎えた。期待の新星として、アストル・ピアソラ・キンテートのメンバーとレコーディングしたアルバムで華々しくデビューを飾った小松。クラシック界も含めたアストル・ピアソラのブームや、ダンスに興味を持つ若い人が増えてきた時期の中での活躍は、〈古い音楽〉として思われてきた〈タンゴ〉の復権を期待させるものだった。

 では、小松自身はこの25年をどう捉えているのだろう。

「チャンスがあれば飛びついてきた25年ですね。メジャーとかマイナーいう言葉はあまり好きじゃないのだけど、比較的メジャーな所に立たせてもらってタンゴを演り、バンドネオンを弾いてきたけれどタンゴを取り巻く状況はあまり良くならなかった。もう少しましかと思いましたが」

小松亮太 『小松ジャパン第弐集~ザ・グレイテスト・ヒッツ』 ソニー(2023)

 なかなか厳しい分析だが、そんな発言を前提に、先日リリースしたベスト盤『KOMATSU JAPAN VOL. 2』の収録曲を見ると、小松の奮闘が伝わってくる。例えば純粋なタンゴではないいくつものカバー曲。正直なところ筆者などはこれらの曲を手がける小松の姿に、リリース当時違和感を感じたのだが、小松はタンゴへの興味を導く方策だと言う。

 「例えば映画やオリンピックで使われたことから興味を持ってくれるならいいなと思うんです。いきなりオーセンティックなタンゴを聴かせてもなかなか興味が向かないですから。だから“リベルタンゴ”“ラスト・タンゴ・イン・パリ”が聴きたくて手にした人が、例えば大貫妙子さんとの作品や、藤沢嵐子さんの歌をどう思うかですね。そうやって拡げていくしかないと思います」

 そういった観点から見ると、このベスト盤はタンゴからカバー曲。レジェンドとの共演、そしてオリジナルとバランス良く収められていることに気が付くのだ。

小松亮太 『コラソン・デ・アニソン』 ソニー(2023)

 そしてもう一枚リリースしたのがアニメ・ソングをタンゴにアレンジした『コラソン・デ・アニソン』。

 「“草原のマルコ”と“ひこうき雲”以外は僕が選びましたが、僕はこれらのアニメをリアルタイムで見ていたわけではないです。幼稚園の頃ですから(笑)。」

 これをただ耳障りの言い作品だと思ったら大間違い。小松は正しきタンゴの作法に則ったアレンジを施している。後は聴き手がそれに気づいてくれるかなのだろう。でも例えば“ルパン三世のテーマ”に不思議な感動を覚えたならば、それはタンゴへの扉が開いた証拠。臆せず先に進んでほしい。

 


LIVE INFORMATION
小松亮太プレミアライブ2023

2023年12月30日(土)神奈川・横浜 THUMBS UP
開演:1部14:30/2部18:00

小松亮太&N響メンバーによる ニューイヤーコンサート
2024年1月12日(金)神奈川・綾瀬市 オーエンス文化会館
開演:18:30

小松亮太 バンドネオン四重奏 ~アルゼンチン・タンゴとバンドネオンの世界~
2024年2月17日(土)東京・小金井 宮地楽器ホール
開演:14:00

小松亮太デビュー25周年CDリリース記念ツアー「コラソン・デ・アニソン」
2024年2月23日(金)ビルボードライブ大阪
2024年2月25日(日)ビルボードライブ横浜
2024年2月26日(月)ビルボードライブ東京

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