ブラジル音楽リスナーだけでなく幅広い層から支持を得ているギタリスト兼作曲家ファビアーノ・ド・ナシメントと説明不要の独創派サム・ゲンデルが贈る初コラボ作。ソプラノ・サックスを用いて牧歌的、というかもっと自然の根源的な力強さや、それを慈しむひとびとの想いのようなものを表現したような主旋律をたおやかに吹くサムに対し、ファビアーノは瑞々しく繊細な一音を流麗に繋げ、疾走感のある細やかなフレージングでリズミカルに応える。レコーディングはたった2日で行われたそうだがそれが結果的にふたりの美意識を遺憾なく発揮させたように思う。

 


リオデジャネイロ生まれのファビアーノ・ド・ナシメントと、カリフォルニア出身のサム・ゲンデルによるコラボ・アルバム。ナイロン・ギターやソプラノ・サックスを用いたサウンドは、2人独自のフィルターを通した南米音楽という趣。流麗なメロディーを軸にしたシンプルなプロダクションは決して派手ではないが、ひとつひとつの音を丁寧に鳴らす滋味が光る良盤。