先鋭的な音楽シーンの最前線をひた走る、LA出身の男女デュオ。7年ぶりの新作。

 7年ぶりのアルバムだが、待った甲斐があるパーフェクトな出来だ。ノウワーは超絶技巧を誇るドラマーで敏腕プロデューサーのルイス・コールと、女性ヴォーカリストのジェネヴィーヴ・アルターディによるLA出身のユニット。クラシック、ジャズ、ゴスペル、アヴァンポップ、ベース・ミュージック、ヘヴィ・メタルなどを攪拌したような、過激なまでの折衷主義は新作『ノウワー・フォーエヴァー』でも不変。だが、サウンドのダイナミズムとパンチ力は大幅に増している。個々のソロ活動がノウワーに還元された部分もあったのだろう。表現のレンジもぐっと拡がっており、クインシー・ジョーンズから賛辞を受けた過去作を遥かに超えてきた。そう言って差し支えない。

KNOWER 『Knower Forever』 Knower/BEAT(2023)

 豪奢で優美なストリングス、性急で煽り立てるようなビート、自在にうねりまわるベースなど、エッジーでアグレッシヴなサウンドが展開されている本作。だが、尖り過ぎて聴きづらいことはない。そこは、ジェネヴィーヴのヴォイスが中和剤の役割を果たしているゆえだろう。ステレオラブのレティシア・サディエールにも通じる、チャーミングでコケティッシュな歌声が作品の間口を広げている。

 ゲスト陣も豪華。サックス奏者のサム・ゲンデル、キーボード奏者のサン・ライことライ・ティスルスウェイトなど、ルイスと親交の深いミュージシャンが的確でツボを押さえたプレイで盛り立てる。特にサム・ウィルクスのベースは、スクエアプッシャーことトム・ジェンキンソンやジャコ・パストリアスなどに通じる、躍動的で疾走感に溢れるプレイが魅力だ。

 また、めくるめく音響の快楽も美点のひとつ。これまで以上にハイファイで輪郭がくっきりとした音像は、リスナーに強烈な陶酔と覚醒をもたらすだろう。盟友サンダーキャットやフライング・ロータスと並び、LAシーンの最前線を示すマイルストーンのようなアルバム。その超然とした佇まいには、ただただ圧倒されるばかりである。

 


LIVE INFORMATION
KNOWER 来日公演

2024年3月28日(木)LIQUIDROOM
開場/開演:18:00/19:00
2024年3月29日(金)梅田TRAD
開場/開演:18:00/19:00
https://www.beatink.com/