INTERVIEW

Keishi Tanaka、元Riddim saunter仲間や松田岳二ら多数ゲスト迎えてソロの可能性探りながらサウンドも歌も表現力増した新作

Keishi Tanaka 『Alley』 Pt.1

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  • 2015.05.21
Keishi Tanaka、元Riddim saunter仲間や松田岳二ら多数ゲスト迎えてソロの可能性探りながらサウンドも歌も表現力増した新作

ふと迷い込んだ裏通りから聴こえてくるのは、多様な楽器が奏でるグルーヴィーなアンサンブルと、伸びやかな歌声。そこから始まる物語は、あまりにもセンシティヴで……

 Riddim saunterの解散後、ソロ活動をスタートさせたKeishi Tanaka。同バンドが持っていた多彩な音楽性を引き継ぎつつ、より深く〈歌〉と向き合いはじめた彼が、セカンド・アルバム『Alley』を完成させた。本作には、元Riddim saunterの古川太一佐藤寛(共にKONCOS)をはじめ、伊藤大地SAKEROCKグッドラックヘイワ)、松田岳二CUBISMO GRAFICO)、吉澤成友YOUR SONG IS GOOD)など総勢19名ものミュージシャンが参加。さらにはストリングスやホーン・セクションを加えた、豪華なサウンド・プロダクションだ。そこには曲ごとの完成度を重視したKeishiの音に対するこだわりがあった。

 「前作はほぼ固定したメンバーだったんですけど、今回は、〈この曲はこの人のドラムが合ってるな〉とか〈この曲はこの人のギターで歌ってみたい〉とか、曲によってプレイヤーを変えました。前作に参加してくれた人もいるし、ライヴで一緒にやっている人もいて、みんな素晴らしいプレイヤーばかり。ほんと、贅沢なレコーディングでしたね」。

Keishi Tanaka Alley Niw!(2015)

 曲ごとにメンバーは違ってもバンドはKeishiの歌声にピタリと添い、しなやかなグルーヴを生み出している。そのタイトなバンド・サウンドは本作の重要なエッセンスだ。

 「最近、ずっとバンド・セットでライヴをしていて、その空気感をアルバムに入れたいと思っていたんです。ファーストの時と楽器の数とかはあまり変わらないんですけど、ちょっと踊れるサウンドを意識したところはありますね。今作の曲を作りはじめた頃、メイヤー・ホーソーンハー・マー・スーパースターの新作が出たりして、ブルーアイド・ソウルみたいな感じの曲を歌いたくなったのもあります」。

 そして、参加ミュージシャンとアイデアを交換しながら作り上げた今作では、ソウルやジャズを自分のマナーで吸収したKeishiのソングライターとしてのセンスが光っている。さらにプロローグ的なナンバーから始まる、ドラマティックなアルバムの構成も見事。まるでひとつの街を舞台にした一本の映画を観ているように、さまざまな情景が浮かび上がってくる。

 「僕にとって、歌詞、曲、情景は音楽の重要な要素で、それがきれいな正三角形の形になっているようなものを作りたい。情景を入れるので、季節感も大切にしています。今回のアルバムのテーマのひとつが〈春〉だったんですけど、いきなり春の歌を歌うより、最初は冬の空気があったほうが良いだろうな、と思って、最初の曲はあまり熱っぽくないサウンドを意識したりして。曲の流れもすごく考えますね」。

 そうやって、しっかり世界観を作り上げたうえでKeishiの伸びやかな歌声が曲に命を吹き込み、物語を紡ぎ出していく。ヴォーカルについて訊くと、シンガーとしてのプライドと緊張感が顔を覗かせた。

 「自分の音楽のジャンルなんて決めてないし何でもいい。重要なのは自分が歌っていることなんじゃないか、そんな根拠のない自信はありますね。僕が好きなシンガー・ソングライターのソンドレ・ラルケも突然ジャズをやったり、ロックをやったりする。ソロのいいところは、そういうフットワークの軽さだと思うんです。でも、前作の時は初めてのソロだし、歌や声を中心にすべてを考えて、コーラスも全部自分でやったんです。今回初めて女性コーラスを入れたのは心境の変化というか、ようやく心の余裕が出てきたのかもしれないですね(笑)」。

 ソロの可能性を探りながらサウンド面もヴォーカルも表現力を増した本作。「前作はひとり感が強かったけど、今回は仲間と遊んでいるような、街の音が伝わってくるようなアルバムになったと思います」と彼は語った。〈裏通り(Alley)〉から聴こえてくる歌は街を吹き抜ける風のようにしなやかで、シンガーであり、ストーリーテラーでもあるKeishi Tanakaの魅力をたっぷりと味わえるはずだ。