アー・ユー・ハッピー? 何度目かのゴールドラッシュに瀕した男は、それでも気負いなく歌いかける。『G I R L』にあるのは時代を軽やかに踊り明かすためのグルーヴなのだ!!

決定的な局面

 「これが自分の人生におけるとても重要で決定的な局面だってことはよくわかってるつもり。いまのこの瞬間を無駄にしちゃいけないと思ってるよ」。

 ダフト・パンク“Get Lucky”とロビン・シック“Blurred Lines”の大ヒットに端を発する、昨年からのファレル・ウィリアムズ快進撃の集大成=『G I R L』。これ以上は求められない完璧なお膳立てが整ったなかで投下された彼の8年ぶりのソロ・アルバムは、意外にも本人が率先して制作を望んだものではなかった。

 「今回のアルバムは、もともとは作る気がなかったんだ。というのも、2006年に最初のソロ・アルバム『In My Mind』を作ったときのトラウマがあってね。あのアルバムはちょっと自己中心的すぎた気がしていたんだ。あまり楽しめなかったし、ライヴでパフォームするのが恥ずかしい曲もあったぐらい。だから、いずれまたソロ・アルバムを作るつもりではいたけど、当面は考えていなかった。どうせ前回の二の舞になると思っていたんだよ。そんなときにコロムビアのエグゼクティヴがミーティングをリクエストしてきて、まだリリース前だったダフト・パンクの“Get Lucky”を褒めてくれてさ。そして〈よく聞いてくれ。“Get Lucky”はダフト・パンクの新作からのファースト・シングルになる。君がアルバムを作りたくないのは重々承知しているが、どうかその考えを変えてほしい〉って言われたんだ。〈トレンドは気にせずに、やりたい音楽をやってくれればいい〉とも言ってくれたな。あのときの興奮はいまでもはっきり憶えてるよ。深呼吸して〈ワオ!〉って感じだった。〈俺の考えていることを知りたいって? 俺の心にある音を聴きたいって?〉みたいなね。直感的に、アルバムのタイトルは『G I R L』にしようと思ったよ。すべて大文字で、文字と文字のあいだにスペースを空けるんだ」。

PHARRELL WILLIAMS 『G I R L』 I Am Other/Columbia/ソニー(2014)

 さらにファレルは今回のソロ・アルバムの構想について「緊急性のある感じにしなくちゃいけないと思った」「聴き手の時間をあまりとらないように意識した」と付け加えてくれたが、「もともとは作る気がなかった」という成り立ちや閃き任せのシンプルなタイトルも含め、こうしたカジュアルさや気負いのなさが『G I R L』の大きな魅力になっているのは間違いない。歴史的名盤であることよりも、いまこのタイミングで出すことを重視したような、そんなポップなスタンスがアルバムを軽やかなものにしているのだ。