ラ・フォル・ジュルネはご存知の通り、クラシックのイヴェントとしては異例の独創的なコンセプトとプログラムで様々な層を楽しませて来た。そんなLFJならではと言えるプログラムが今回実現した。

メキシコ出身のMURCOFは日本に於いてはクラブ/音響アンビエント等をある程度フォローしてきた人でないと、その名前は知らないかもしれない。タンジェリン・ドリームジャン=ミッシェル・ジャールや、20世紀クラシックを自らの音楽の源泉とし、ペルトグレツキといった静謐な美しさを奏でる作曲家も思わせる弦楽器やアコースティック音の響きを独自の美意識によって取り入れたエクスペリメンタル/ミニマル・テクノでありながら、ポスト/モダン・クラシカルと呼ばれる音楽の先駆けと捉える事も出来る独創的な作品を発表し続けて来た。今回は日本初のパフォーマンスとなる。

MURCOF The Versailles Sessions Leaf(2008)

今回のLFJのプログラムはピアニストのヴァネッサ・ワーグナーとのコラボレーションによるプロジェクトで、ケージアダムスグラスフェルドマンの作品にMURCOFのエレクトロニック・ミュージックのアプローチを掛け合わせるもの。ワーグナーはパリ国立音楽院卒で、バロックから、デュサパンの初演など現代曲も得意とし、様々なコラボレーションも行う中、ワーグナーがMURCOFに声を掛けて始まったプロジェクトだそうだ。

【参考動画】MURCOFとVANESSA WAGNERによるライヴ映像

 

今回のプログラムで演奏される作曲家はクラシック以外のジャンルのアーティストよりたびたびリスペクトの対象とされてきた。例えばグラスはコーネリアスベック他参加のリミックスアルバムがあり、ケージはオノ・ヨーコ坂本龍一フランク・ザッパ等によるトリビュートアルバムがある。

これはミニマルがそもそも現代音楽の複雑化へのカウンターカルチャーとして生まれ、またテクノの始祖として、カット&ペースト的な音の捉え方をいち早く提示した事に対することにもよるだろう。

だからこそMURCOFの様な音楽性も受け入れる器を備えた作品群でもあり、ワーグナーの演奏がどの様に拡張/変容されるかも注目だ。

そして今回はMURCOF単独公演も開催される。自身の創作の源となった現代音楽の作品と合わせて聴くことで、この稀代のエレクトロニック・アーティストの感性の一端を掴む事ができるはずだ。

 

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ラ・フォル・ジュルネ(LFJ)2014 4都市で開催!

●東京国際フォーラム、東京・丸の内エリア 5/3(土・祝)~5(月・祝)
Jours de fetes 10回記念 祝祭の日
10人の作曲家と祝う10回記念~出会いと喜びに満ちた音楽の旅へ!~
東京国際フォーラム、よみうりホール、よみうり大手町ホール及び 大手町・丸の内・有楽町エリア lfj.jp/

○金沢 4/29(火・祝)~5/6(火・祝)「プラハ・ウィーン・ブダペスト ~三都物語~」 lfjk.jp/
○新潟 4/25(金)~27(日)「三都物語 ウィーン・プラハ・ブダペスト~ドナウとモルダウの間で~」 lfjn.jp/
○びわ湖 4/27(日)〜29(火・祝)「ウィーンとプラハ~音楽の都へ~」 lfjb.biwako-hall.or.jp/

■公演番号146
日時 5/3 (土・祝) 20:30-21:20
会場 ホールC
曲目
○ケージ:ある風景の中で 
○アダムス:中国の門
○グラス:メタモルフォーシス II、IV/デッド・シングス/ウィチタ・ヴォルテックス・スートラ
○フェルドマン:ピアノ小品 1952 
出演:ヴァネッサ・ワーグナー (ピアノ)
MURCOF (電子音楽)

■公演番号257
日時 5/4 (日・祝) 21:30-22:15
会場 ホールD7
曲目未定
出演:MURCOF (電子音楽)