COLUMN

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2014(4)

こんな上品なプロをイチ押しする音楽祭なんて、日本ではたぶん他に存在しないだろう!

(C)三浦興一

 

 ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン熱狂の日」音楽祭(LFJ)も、早いもので今年が開催10回目となった。アーティスティック・ディレクターのルネ・マルタンによれば、今年は10人の作曲家が10回目を記念するパーティーに集まるという設定で、「祝祭の日Jours de Fêtes」というタイトルが付けられている。これは、ジャック・タチが1949年に監督・主演した『のんき大将脱線の巻』(カラー復元版は『新のんき大将』)の原題をそのまま引用したものだ。本編をご覧になった読者ならご存知のように、タチはフランスの牧歌的な風景の中でアメリカの消費文明を痛烈に皮肉り、ほとんど反米スレスレのところで笑いをとりつつも、アメリカ文化のステレオタイプ(西部劇など)に対しては限りない愛情を見せるという、いかにもフランス人らしい屈折した作品に仕上げている。そんなタチのスタンスを、そのままLFJに持ち込んでしまおうというのが、マルタンの目論見であることは言うまでもないだろう。当然のことながらアメリカ音楽、そのステレオタイプというべきガーシュウィンジャズがLFJの中で重要な位置を占めてくることになる。

 

 アメリカのクラシック作品といえば昔も今もガーシュウィン、というのが相場だが、最終日に小曽根真 feat. No Name Horsesが連続2公演(345、346)するガーシュウィン・プロ。特に前半の345で演奏する《ラプソディ・イン・ブルー》は、周知のように初稿はジャズバンド編成で書かれていたから、小曽根たちのようにビッグバンドで演奏するのを聴くのが本来の楽しみ方だ、とも言える。小曽根は5月2日の前夜祭公演でも同じ曲を演奏するが、そちらはグローフェ編曲のオケ版。異稿マニアには、たまらない企画だろう。ちなみに「アメリカの夜」と銘打たれた前夜祭公演では、バーバー《アダージョ》、バーンスタイン《シンフォニック・ダンス》、ウィリアムズ《スター・ウォーズ》、それに《ニューヨーク・ニューヨーク》という、もう笑っちゃうくらいにステレオタイプのアメリカ・プロが用意されている。いかにもタチ的というべきか。

【出演アーティスト】小曽根真featuring No Name Horses (C)武藤章
 
 

 ガーシュウィンとジャズに関しては、もうひとり、ジャズ・ファンにはすでにお馴染みのフランスの若手ピアニスト、トーマス・エンコがLFJに参加するのが大きな目玉だ。5月4日(254)が「ガーシュウィンへのオマージュ」、5月5日(344)がエンコ・トリオによるジャズ。これも小曽根同様、セットで聴くべきだろう。

【出演アーティスト】トーマス・エンコ (C)Sylvie Lacrenon
  
【出演アーティスト】ヴァネッサ・ワーグナー

 

 2008年のシューベルト特集の時にマルタンと話した際、特にこちらから話題を振ったわけでもなくミニマルの話が出てきたので、「将来この人はミニマルを取り上げるのだろうな」という予感はしていた。今回、ヴァネッサ・ワーグナーがアダムス、グラスといったミニマリストのピアノ曲に加え、ケージフェルドマンも弾くプロ(146)を見ると、「ようやくLFJでミニマルが実現したか」と深い感慨にとらわれる。というか、こういうプロが1500人規模のホールでめったに実現しない日本の状況が、相当に異常というべきだ。自己宣伝めいて恐縮だが、同公演と同じ5月3日の11時から、筆者が「アメリカとミニマル・ミュージック」と題した講演を予定(ホールD1にて。要有料公演チケット半券、整理券)。

【出演アーティスト】ヤーン=エイク・トゥルヴェ

 

【出演アーティスト】ヴォックス・クラマンティス (C)Riin Eensalu

 

 まあ、グラスとアダムスくらいの大御所ならそれほど驚くことはないかもしれないが、抜粋とはいえ、バング・オン・ア・キャンの中心人物デイヴィッド・ラングの《マッチ売りの少女の受難曲》をやることになるとは、正直予想もしていなかった。しかも組み合わせはケージ《18の春のすてきな未亡人》と《花》、それにグレゴリオ聖歌。粋だねえ。ヤーン=エイク・トゥルヴェ指揮ヴォックス・クラマンティスによるこの公演、3日間でなんと計4回(136、235、281、332)も演奏される。こんな上品なプロをイチ押しする音楽祭なんて、日本ではたぶん他に存在しないだろう。

 

★【ディスクガイド】LFJ10回目の開催を祝う10人の作曲家の推薦盤

★【インタヴュー】BORIS BEREZOVSKY 「チャイコフスキーはすばらしい」

★【コラム】気鋭の電子音楽家、MURCOFが日本初のパフォーマンス

 

ラ・フォル・ジュルネ(LFJ)2014 4都市で開催!

●東京国際フォーラム、東京・丸の内エリア 5/3(土・祝)~5(月・祝)
Jours de fetes 10回記念 祝祭の日
10人の作曲家と祝う10回記念~出会いと喜びに満ちた音楽の旅へ!~
東京国際フォーラム、よみうりホール、よみうり大手町ホール及び 大手町・丸の内・有楽町エリア lfj.jp/

○金沢 4/29(火・祝)~5/6(火・祝)「プラハ・ウィーン・ブダペスト ~三都物語~」 lfjk.jp/
○新潟 4/25(金)~27(日)「三都物語 ウィーン・プラハ・ブダペスト~ドナウとモルダウの間で~」 lfjn.jp/
○びわ湖 4/27(日)〜29(火・祝)「ウィーンとプラハ~音楽の都へ~」 lfjb.biwako-hall.or.jp/

 

【Recommended discs】

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40周年プレイリスト
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