INTERVIEW

【ヤセイの同業ハンティング】Vol.2 ドラマーは意外に孤独!? Yasei Collective松下マサナオ×クラムボン伊藤大助のドラム対談

(左から)Yasei Collective・松下マサナオ、クラムボン・伊藤大助

 

Mikikiブログ〈ヤセイの洋楽ハンティング〉でお馴染みのYasei Collectiveが、自身のレーベル=Thursday Clubからの初作品となるニュー・シングル“radiotooth”を11月25日にリリース! Mikikiではこれを記念し、ヤセイブログのスピンオフ企画として各メンバーをフィーチャーした短期集中対談連載〈ヤセイの同業ハンティング〉をスタートしました。メンバーそれぞれがいまバンドマンとして&同じ楽器を演奏するミュージシャン(同業者)として尊敬する人たちを招き、あんなことやこんなことをディープに掘り下げていく全4回!

その第2弾は、Yasei Collectiveのリーダー・松下マサナオが、今年結成20周年を迎えたクラムボン伊藤大助を迎えたドラマー対談です。クラムボンは、松下氏がドラマーを志す前から聴いていた思い出深いバンドなのだそうで、それが約15年の時を経て〈同業者〉として伊藤氏と出会い、以降親交を深めているとのこと。前回の鍵盤奏者対談と同様に、ドラマーとしてのキャリアだけでなく、パーソナリティーもまったく異なる両者ということで、お互いに良い刺激を与え合っていることが窺える対談になっていますよ!

★〈ヤセイの同業ハンティング〉
Vol.1 別所和洋(Yasei Collecitive)×芹澤優真(SPECIAL OTHERS)はこちら

Yasei Collective radiotooth Thursday Club(2015)

 

尊敬しているからこそ同じことはしない

――まず、松下さんは今回なぜ伊藤さんを対談相手に……?

松下マサナオ(Yasei Collective)「クラムボンは僕が高校生の頃、バンドを始めたての頃に聴いていた音楽のなかでもすごく特別な存在で。その頃の僕から見ても、あれは上手い人じゃないとできないやつだ、という括りだったんです。技術的にも、ロックだけじゃなくていろいろ聴いている人たちならではの音楽なんだろうなと。当時の僕みたいに音楽のことを何も知らない人にそう思わせるバンドってすごいじゃないですか。そのうえそれを20年も続けているというのはすごいことですよ。そういう方と、たった5年しかやっていないのに偉そうなことを言っている僕らYasei Collectiveの実力を含めたすべての〈差〉みたいなものをちゃんと伺っておかないとと思いまして(笑)」

――15年の差を。

松下「すごくデカイと思います。僕らはたった5年の間に何度もメンバー間でいろんなことがあって、バンドを辞めようと思ったこともあるし、これからどうしたら……みたいなストラグルもたくさんあったなかでやっと5年が経ったわけですけど、20年って……」

伊藤大助(クラムボン)「そう言っていただけて嬉しいし、長くやってるといいことあるなと思います。自分としては目の前のことひとつひとつに取り組んでいたら20年、という感じですけど。時代が変わってきているなかで、マサナオくんをはじめとした若いミュージシャンたちは、昔のミュージシャンが10年20年かかっていたことを、2年3年でやっているかのように見える、すごい人たちがいるなーと思っていたので、ちょっと怖いけど早く友達になりたいと密かに思っていたんですよ(笑)」

一同「ハハハハ(笑)」

伊藤「これからの時代をリードする人たちの姿はこういう形をしてるんだ、と思って。いま僕は学生にドラムを教えているんですけど、彼らに〈どんなドラマーが好き?〉と訊くと〈松下マサナオさん〉は必ず名前が挙がるんです。僕なんて〈まだ先生はバンドやってるの?〉とか〈なんてバンド?〉って感じですよ(笑)」

※尚美ミュージックカレッジ専門学校のプロミュージシャン学科で講師を務めている

――いやいやいや……。

松下「なわけない(笑)」

伊藤「いや、本当にそういうこと言われる(笑)。でも彼らはね、生まれつきYouTubeがあって、好きなものを好きなだけ観られる世代だけあって、そういうのを活かせている学生はとにかく楽器が上手です。羨ましい」

松下「昔、リットーミュージックとかから出ていた教則ビデオを買って、観すぎて画面がザーッてなるくらい必死になってコピーしたんですが、いまじゃそのビデオがDVDになって、それがまた全部YouTubeにアップロードされたり、さらにYouTuberみたいな人もいて、超有名なドラマーでも自室で録ったレッスン動画をフリーで公開していたりとか、そういった環境の差はすごくデカイんですよね。楽器が上手くなってあたりまえというか」

伊藤「そういう世代の人たちが、どういうミュージシャンをお手本にしているかはかなり興味があります。彼らがどんなものに惹かれるのか、普段どんな音楽聴いてるか、といったことを知る必要があると思っています。もうすでに、先人が時間をかけて得た技術やアイデアをいとも簡単に料理するすごいミュージシャンがたくさん出てきてると感じていますけどね。そんな意味でも、ヤセイはtoeを初めて聴いた時のような衝撃度がありました。こんな音楽があるんだ、という。変拍子だったり何分の何拍子なのかとはは関係なく、聴き手として素直に彼らが作る流れに付いて行きたくなってしまうような、持っていかれる感じ。そのなかにアイデアが散りばめられていて、細部までカッコイイ、という印象を持ちましたね」

松下「すごい嬉しいっす! 若手がのし上がっていくうえで、toeは絶対的な影響力があるバンドの代表だし、そういうバンドを比較対象として挙げてもらえるというのは。柏倉(隆史、toe)さんもすごく好きな先輩ドラマーですし」

toeの2015年作『HEAR YOU』収録曲“Song Silly”

 

伊藤「衝撃度、という意味合いでね。単純にいちリスナーとしての第一印象として、です。ヤセイはヤセイだし。彼らの作る〈流れ〉に第一に魅力を感じますね。圧倒されます。真面目で筋が通っているけど、お茶目なところも感じるというか……いろいろな気分にさせてもらえますね」

――実際にお2人の交流が始まったのはいつ頃からなんですか?

松下「今年っすよね」

伊藤「ほんとつい最近」

松下「共通の知り合いはたくさんいたんですけど、最初はdownyのドラムの秋山(タカヒコ)さんによる呑み会(秋山会)で伊藤さんを紹介してもらって。ここ半年の間に秋山さんを介して伊藤さんや柏倉さんや岩城(智和LOSTAGE)さんを立て続けに紹介してもらっているんです」

伊藤「秋山さんのことは以前から知っていますけど、最近は特に、若くて良いドラマーをチェックしていたりとか、ドラマー界隈を盛り上げたいといつもおっしゃっていて。ドラマーがもっとおもしろがられる環境があってもいいんじゃないか、といったことを考えてらっしゃる方ですね」

松下「すごいアンテナ張ってますよね。downyの他にもfresh!THE MORTALに参加していたり、それ以外にも幅広くいろんなレコーディングをやっているし。初期のポンタ(村上“ポンタ”秀一)さんがやっていたような、ミュージシャンの地位を上げていくという活動をいままた改めてやっている感じでしょうね」

THE MORTALの2015年作『I AM MORTAL』収録曲“PAIN DROP”

 

――いまジャズ界隈が盛り上がっているなか、ドラマーにいま一度光が当たりはじめている時期かなと思うのですが。

松下「ジャズ界が盛り上がっているかどうかは僕にはわかりませんが、そうですね、確かに今年はすごく感じますね」

伊藤「イメージは良くなってきていると思いますけど、そのドラマーたちがみんなドラムだけで生活できるようになっているかというと、その状況はあまり変わってないと思う。ただ単純にギャラ単価とかの問題ではなく、ドラマー自体がどうしないといけないのかというのは姿勢が問われるなと」

松下「バチ振ってるだけで食える時代はもう終わってるんですよ、どんなに上手かろうが。だからセルフ・マネージメントというのは絶対にしていかなきゃいけないし、ブランディングもすごく大事だと思っています。いつの時代でも同じですが、〈あいつのドラムってこんな感じだよね〉というのがまずあって、それを欲しがっているところで演奏すべきだと思うんですよ。日本だと山木(秀夫)さんやポンタさん、カースケ(河村“カースケ”智康)さんとか素晴らしいドラマーがいっぱいいて、彼らを見てスタジオ・ワークだけをめざしちゃう人がたくさんいるけど、何でも叩けてどこにでも呼ばれたい、スタジオ・プレイヤーになりたいなんて奴は留学してた頃のアメリカにはほとんどいなかったですから。スティーヴ・ガッドピーター・アースキンのようないまスタジオ・ワークの大御所と言われる人たちはもともとバンドをやっていて、そこでの仕事が認められてオファーが来ているわけじゃないですか。それを履き違えちゃいけない。僕がポンタさんをなぜ尊敬しているかというと、PONTA BOXという自分のスタイルでワガママできる場所であるバンドをメンバーは変われど、ずーっとやっている。だからこそあのスタイルがあって、あの音が求められていろんなレコーディングに呼ばれてきたんだと思うんです。僕が〈若い子〉と言うのはアレですけど(笑)、10代のプレイヤーが出てきているなかで、そういう人たちがドラマーを簡単に〈仕事〉と考えることの怖さはありますね」

NEW PONTA BOX×Yasei Collectiveの2015年のセッション映像

 

伊藤「現在のスタジオ・ワークで求められるものはとんでもないレヴェルのことだと思うので、簡単に考えちゃいけないですよ」

松下「〈職人〉の意味がいまと昔で全然違うので、かつては〈味がある〉〈例えば60、70年代風〉とか、その人にしかできないテイストやグルーヴが出せる人が職人だったんですけど、いまはピタッとグリッドに合わせて叩ける人が職人。時と場合によるけどそれだったら打ち込めばいいじゃん、という感じですよ。よく〈アオジュン(青山純)さんや山木さんは○○BPMでずっと確実に叩けるからすごいんだよ〉みたいに言う人がいますけど、実際はそこだけが彼らのすごいところではないじゃないですか。でもそれがウェブ上などで出回ると、みんな〈そーなんだー〉ってそれを信じちゃうのが見てると怖いなと思いますね。スタジオ・ワークって何なんだろうというところで」

――情報のリテラシーが身に付く前だから鵜呑みにしてしまうというのはありますよね。おっしゃった通り、情報がそれだけ多いからスキルの上達は早いかもしれないけど、何か大事なものが抜けちゃってる危険性もあると。

松下「そうですね」

――では、お2人のそもそものルーツというか、自身のプレイ・スタイルの指針になったものをうかがいたいのですが。

伊藤「僕は何かを聴いてドラムを始めたのではなく、楽器を始めるところからスタートしました。吹奏楽のパーカッションを始めて、ドラムはその後でした。とりあえずドラムが叩けるからという理由で、吹奏楽部で活動する傍ら、同級生や先輩に誘われて学園祭でロックやパンクを一緒に演奏したりすることで(音楽を)知っていったんです。なので指針のようなものはなく、〈楽器ができると声をかけてくれる人がいる。楽しいからやろう〉という感じでやっていたんですよね」

――誰かドラマーに憧れて、みたいな感じではなかったんですね。

伊藤「それがなかったことが、良かったんだろうか……と思っています。もう遅いですけど」

――それが自分らしさを手に入れることに繋がっているとか?

伊藤「〈こうありたい〉〈こうしよう〉はあるけど、僕がどうやって僕たり得ているのかはわかりません。でも例えば、ドラマーとして好きな人がたくさんいるなかにマサナオくんも入っているんですが、僕は絶対にマサナオくんみたいにはできないというのを知っているし、尊敬しているからこそ同じことはしないぞ、と考えたりしますね」

松下「それはみんなそうですよね。この人すげー好きなんだよな、という人ほど自分とは全然スタイルが違って……というか悲しいことにそもそも僕と似たスタイルの人は日本にはあまりいないですが、若い世代では石若駿横山和明といったMikikiで対談した奴らからもすごく影響を受けるし、こいつらスゲェなと思うけど、そうなりたいとは思わない。〈これどうやってやるの?〉とかいろいろ教えてもらってるし、そのテクニックを自分のプレイに採り入れようと思ったりはするけど、だからといってあれをそのままやろうとは思わないし、同じ楽器を使おうとは思わない。それは伊藤さんにも感じていて。めちゃくちゃ尊敬していて好きなドラマーだからこそ、もし仮に自分が伊藤さんの現場で叩かなくちゃいけなくなったらどういうことができるかなというのを必ず考えるようにしています」

石若駿を擁する石井彰トリオの2015年のライヴ映像

 

伊藤「そういう想像力はとても大事ですよ」

松下「例えば、超尊敬する海外のドラマーが来日した時に、その人が事故か何かに遭って替わりのプレイヤーを探しているとする。ジャズだとすぐにそのポジションをカヴァーできる奴を探すじゃないですか。もしそういう時に僕が呼ばれた場合、自分に替わりが務まるのか、何をしようかって考えたら、それで眠れなくなっちゃうんです。でもそういう想像が翌日のリハや練習へのモチヴェーションに変わるんですよ。練習ができない時でも、そういうことを考えるだけでインテンスな自分を保てるんですよね」

――なるほど。

松下「最近はそういうことは減ってきているんですが、この間クラムボンの武道館公演を観た時に、バンドを20年間続けてきてのこの公演、自分たちだったらどういうふうにできるだろうと考えたんです。でも全然想像つかなかったですからね。想像つかないということは絶対にできない、いまの自分たちでは全然足りないということは間違いない。単純にライヴを観て感動しちゃうというのは、ドラム云々、音楽云々のみで観てないじゃないですか。自分のキャリアと照らし合わせてみたりとかいろいろ感じるところがあって、僕含めて一緒に行ったメンバーみんなが感動しちゃったんです。ウワーッて気持ちになった。最終的にはそういうライヴができるようにならなきゃいけないんですけど、それを僕らの音楽性でできるかというのは物凄く難しいところで。〈よくそんな音楽ずっと続けてたね〉という意味で感動させられるかもしれないけど(笑)」

※去る11月6日、クラムボンの結成20周年記念ツアー〈tour trilogy〉の最終公演が東京・日本武道館で行われた

クラムボンの2015年のツアー〈tour trilogy〉、ファイナルとなった日本武道館公演のトレイラー映像

 

伊藤「やっぱりこうやってね、自分だったらこうしようと想像力を働かせられる人は、そりゃいい仕事しますよ(笑)。そんな人の想像を超えたことができたのなら、嬉しいですね」

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ポール・マッカートニー