COLUMN

トラヴィス、ベン・ワット、ジョン・グラント、ラプスリー、〈特別な日曜日〉を彩る出演4アクトの見どころを徹底ガイド

〈Hostess Club Presents Sunday Special〉特集:第1回

  • Share on Tumblr
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 2016.03.11

 

旬のアーティストを招聘して支持を集める〈Hostess Club〉シリーズの新イヴェント〈Hostess Club Presents Sunday Special〉が、4月10日(日)にTOKYO DOME CITY HALLで開催される。テーマは〈上質な音楽に浸る特別な日曜日〉。ヘッドライナーのトラヴィスに、ベン・ワットジョン・グラントラプスリーと、いずれもニュー・アルバムのリリースを控えた新旧の優れたアーティスト4組が出演する。歌と演奏をじっくり堪能できるように、スタンディング席のほかに指定席も用意されており、気軽に足を運べば(アクセスも快適!)かけがえのない休日を満喫できるはずだ。

Mikikiでは昨年11月の〈Hostess Club Weekender〉に続いて、アダルトな雰囲気も漂う〈Sunday Special〉を総力特集します! この第1回では、予習&復習編ということで出演4アクトを一挙紹介。リリース前の新作についても先行紹介しながら、それぞれのキャリア&見どころを試聴コンテンツも交えて解説していく。ちなみに、トラヴィスの来日公演は軒並みソールドアウトになるそうなので、豪華ラインナップが揃った今回のイヴェントも早めのチケット確保をお薦めしたい。 *Mikiki編集部

★公演詳細はこちら
★第2回:ジョン・グラント本邦初インタヴューはこちら
★第3回:Chocolat & Akito × Awesome City Club洋楽インディー座談会はこちら

 

【トラヴィス】 

ヘッドライナー務める叙情派UKロックの代表格、
憂いを帯びた本領発揮の新作を引っ提げて登場

今回トリを飾るトラヴィスは、スコットランドの音楽都市・グラスゴー出身の4人組。今年デビュー20周年を迎える彼らが、叙情派UKロックの代表格として一躍その名を馳せるようになったのは、初の全英1位に輝いた99年のセカンド・アルバム『The Man Who』での大ブレイクがきっかけだった。初期にはオアシス譲りの骨太ロックを鳴らしていたが、この2作目からはアコギを中心に据え、儚げで詩情豊かなサウンドと、メランコリックだが温かみのあるメロディーが特徴の美しいバラードを次々と生み出して本領を発揮する。

99年作『The Man Who』収録曲“Why Does It Always Rain On Me?”

 

さらにアコースティック色を強めつつ、細部まで凝ったアレンジによって歌心を際立たせた3作目『The Invisible Band』(2001年)でふたたび全英1位を獲得し、国民的バンドの地位を固めた。同作のタイトルに込められた〈作品はその作り手よりも重要で、曲さえ後に残ればいい〉というメッセージは、〈音楽が主役で、バンドは黒子〉という彼らの姿勢の象徴として語り継がれており、フロントマンで作詞・作曲を主に手掛けるフラン・ヒーリー(ヴォーカル/ギター)の謙虚で誠実な人柄もまた、トラヴィスの魅力のひとつとなっている。彼らが牽引した叙情派の新潮流は、コールドプレイら後進に大きな道を拓き、クリス・マーティン自身、〈トラヴィスがいなかったら自分たちが世に出ることはなかった〉と、その影響の多大さを認めているのも有名だ。

2001年作『The Invisible Band』収録曲“Flowers In The Window”

 

その後すべてが順風満帆に進んだかと言えば、ニール・プリムローズ(ドラムス)が一時ドラマー生命も危ぶまれるほどの事故に遭うなど、バンド存続の危機にも直面。その影響で作風がダークな方向に振れたりもした。5作目『The Boy With No Name』(2007年)以降は、アンディ・ダンロップ(ギター)やダギー・ペイン(ベース)の曲作りへの貢献度が徐々に増していった一方で、ロック回帰の6作目『Ode To J. Smith』(2008年)を区切りに、バンドはしばらく活動を休止。先行きについてさまざまな憶測も流れたが、2013年には約5年ぶりの7作目『Where You Stand』で堂々の復活を果たしている。

TRAVIS Everything At Once Red Telephone Box/HOSTESS(2016)

メロディー重視に立ち返って往年のファンを喜ばせつつも、ふんわり軽めでシンプルな音作りと渋めの味わいゆえに、ともすればやや地味に映る感じもあった前作から2年8か月。短めのインターヴァルで今年4月29日にリリースされる通算8枚目のニュー・アルバム『Everything At Once』は、一転して程良く洗練された、派手すぎない華やかさやダイナミズムが全体を貫いているのが嬉しい驚きだ。トラヴィス節全開の切ない憂いを帯びた先行曲“3 Miles High”あり、昂揚感いっぱいのポップな美メロ・ナンバーあり。ヘヴィーなロック・ギターを要所で唸らせたり、ストリングスで彩ったり、スパイス的に打ち込みを配したりと、繊細だが力強い希望を感じさせる叙情派ロックの真骨頂を見せつけている。

『Everything At Once』収録曲“3 Miles High”

 

『Everything At Once』収録曲“Everything At Once”

 

何より印象的なのは、全編から放たれる瑞々しいキラキラ感。甘く優しいフランの歌声の透明感も健在で、近年の外見とは裏腹に、若返っているんじゃ?と思えるほどだ。今年に入ってイギリス本国で行われたライヴは、最新作と2~3作目の人気曲を中心に、キャリア全体に渡る重要曲を散りばめた構成で、ニュー・アルバムの多彩さが、これまで彼らが歩んできた道程とナチュラルな地続きにあることを裏打ちしている。新曲の本邦初生披露への期待もさることながら、百戦錬磨のイヴェント巧者である彼らの今回のステージが、新旧ファンの楽しめる内容となることは間違いない。 *今井スミ

2013年の〈T・イン・ザ・パーク〉のパフォーマンス映像

 

【ベン・ワット feat. バーナード・バトラー】 

蒼い歌心を追求する男がバンド・セットで再来日、
新しい仲間たちと作り上げた色彩豊かな新作も

今回のイヴェント出演のために、ベン・ワットが新作『Fever Dream』を引っ提げて1年半ぶりに来日を果たす。2014年の〈サマソニ〉でバーナード・バトラー(元スウェードマッカルモント&バトラーなど)とのステージを観たという人も多いかもしれないが、今回はバンド・セットでの出演。期待が高まる。

ベン・ワットは81年にチェリー・レッドから作品を発表して活動をスタート。82年にロバート・ワイアットとのコラボEP『Summer Into Winter』を出したほか、現在までの公私に渡るパートナー、トレイシー・ソーンとのエヴリシング・バット・ザ・ガール(以下EBTG)でもデビューを飾っている。ソロでのファースト・アルバム『North Marine Drive』を発表したのは翌83年。ベンの朴訥としたヴォーカルとジャジーなアコースティック・ギターに、時折アルトサックスが絡むこの名作は、UKインディ・チャートで首位を獲得した。

83年作『North Marine Drive』収録曲“North Marine Drive”

 

その後はEBTGとしての活動に専念。当初はアコースティックなポップ・チューンが中心だったが、90年『The Language Of Life』ではAORに挑戦。また96年作『Walking Wounded』ではエレクトロ/ダンス寄りに舵を切るなど、新しいサウンドへの挑戦を続けることで新鮮さを保ち続けた。EBTGは99年作『Temperamental』を最後に活動休止。ベンはエレクトロニック・ミュージックのDJ/プロデューサー、レーベル・オーナーとしての活動に注力するようになる。

エヴリシング・バット・ザ・ガールのライヴ映像

 

その彼が31年ぶりのソロ・アルバム『Hendra』を発表したのは2014年のこと。ふたたび曲を書くきっかけは両親についての本「Romany And Tom」を上梓したことや、姉を亡くしたことなどにあったという。感傷的なメロディーとフォーキーなサウンド、哀しみと希望が入り混じった歌詞には懐かしさと新鮮さが同居。そこにブルージーな味わいを加えたのは、ベン自身〈もっとも好きなギタリスト〉と公言するバーナード・バトラーのギターだった。

2014年作『Hendra』収録曲“Hendra”のライヴ映像

 

そして、前作から2年という意外に早いスパンで完成したのが、最新作『Fever Dream』。強い絆で結ばれたバーナード、単独来日時に帯同したマーティン・ディッチャム(ドラムス)に加え、ローラ・マーリングなどと活動してきたレックス・ホラン(ベース)が参加した本作は、前作のフォーキーなタッチはそのままに、静けさと激しさがさまざまな形で表現された、色彩豊かなアルバムに仕上がった。

BEN WATT Fever Dream Unmade Road/HOSTESS(2016)

ひんやりとした感触とソウルフルで熱い部分が同居した“Gradually”や、ヒズ・ゴールデン・メッセンジャーMCテイラーが参加したフォーク度の高い“Fever Dream”など、どちらかというと苦みや諦念が漂う曲が続く前半もいいが、“Women’s Company”“Running With The Front Runners”など大人の軽やかさが楽しめる中盤の魅力もまた格別だ。ラストを飾る“New Year Of Grace”はボストンのSSW、メリッサ・ナドラーの清冽な歌声が加わることで独特の透明感が生まれた1曲。全編を通じて、信頼できる仲間と新しい音楽に取り組むベンの充実した様子が伝わってくる。

『Fever Dream』収録曲“Between Two Fires”

 

『Fever Dream』収録曲“Gradually”

 

そんなニュー・アルバムを引っ提げての今回の来日では、前出のバーナード、マーティン、レックスによるバンドでのステージが観られるのだからたまらない。ここ最近の2作の曲はもちろん、前回の来日公演に続いて“North Marine Drive”や“Some Things Don't Matter”といったソロ初作からの人気曲が披露されることを期待したい。〈上質な音楽をじっくりと堪能する1日を〉というテーマで開催される〈Sunday Special〉にまさにぴったりの、必見のステージとなりそうだ。 *山下紫陽

バーナード・バトラーと共演した、“Some Things Don't Matter”の2014年のライヴ映像

 

【ジョン・グラント】 

アーティスト/メディアに絶賛される、
実力派ポップ・マエストロが待望の初来日

「ジョン・グラントの作品は大好きだよ。もちろん彼自身のこともね。間違いなくこの時代におけるもっとも重要なアーティストの一人だと思うよ。彼には伝えたいことがたくさんあるから、人々は常に彼の音楽に耳を傾けるだろう。その伝え方がまたウィットに富んでいて最高。まるでゲイのゲイリー・ニューマンみたいなんだよ」

かのエルトン・ジョンも、このように賛辞の声を惜しまない当代随一のアメリカ人ソングライターが、〈Sunday Special〉への出演でいよいよ日本デビューを飾る。海外では主要メディアによる年間ベスト・アルバム企画の常連である、〈超〉が付くほどの実力派。さらに、英語にドイツ語、ロシア語から現在居を構えるアイスランド語まで話せるそうで、日本でも大ヒットしたアウスゲイルのファースト・アルバム『In The Silence』で英詞を手掛けるなど、隠れたキーパーソンでもある。

サーズ(The Czars)のヴォーカリストであったジョン・グラントは68年生まれ。バンド解散後のソロ活動から飛躍した遅咲きのアーティストだ。アメリカのフォーク・バンド、ミッドレイクが参加した初アルバム『Queen Of Denmark』を2010年にリリースし、評価を確立。その後はアイスランドの首都・レイキャヴィクへと渡り、エレクトロ路線に転じた2作目『Pale Green Ghosts』を2013年に発表。彼の才人ぶりをわかりやすく示した一曲が同作収録の“GMF”で、剥き出しの告白を歌いながら、穏やかな川を泳ぐように感傷が渦を巻くこの壮大なバラードは、フィーチャーしたシニード・オコナーの代表曲“Nothing Compares 2 U”(90年)にも匹敵すると思う。

2010年作『Queen Of Denmark』収録曲“Queen Of Denmark”

 

2013年作『Pale Green Ghosts』収録曲“GMF”

 

そして、本国で昨年10月にリリースされた最新作『Grey Tickles, Black Pressure』は、プロデューサーに名士ジョン・コングルトンセイント・ヴィンセントなど)を迎えてのテキサス録音。前作譲りのエレクトロニック・ポップ&バラード路線を継承しつつ、不敵に笑うジャケットが物語る通りのチャレンジングな仕上がりで、全英5位のヒットも記録している。収録曲 “Disappointing”(EBTGのトレイシー・ソーンが参加)の、半裸のナイスガイに囲まれてジョンが歌うミュージック・ビデオが昨年11月の〈HCW〉にてスクリーンで流れるやいなや、どよめきが起こったのも記憶に新しい。

JOHN GRANT Grey Tickles, Black Pressure Bella Union/HOSTESS(2015)

『Grey Tickles, Black Pressure』収録曲“Disappointing”

 

彼は自身がゲイで、HIVに感染していることを公表しており、ユーモラスなリリックにもそういった背景が赤裸々に綴られている。だからこそ、イヴェント開催直前の4月6日に〈Grey Tickles,~〉の日本盤がリリースされるのは、本人と作品を深く知るためにも嬉しい出来事だ。その一方で、濃厚なキャラクターに構えすぎず、往年のベックとも聴き違えそうな高水準のポップソングを気ままに楽しむのもアリだろう。一流のマエストロが初めて日本のステージに立つ。個人的にはそれだけで、〈Sunday Special〉に足を運ぶ動機として十分なくらいだ。ちなみに、Mikikiではジョンにインタヴュー済みで、そちらの記事も近日公開するのでお楽しみに! *小熊俊哉

英BBCの番組〈Later... With Jools Holland〉でのパフォーマンス映像

 

【ラプスリー】 

名門XLが自信を持って送り出す、
インディーR&Bを通過した〈ネクスト・アデル〉

落ち着きがあって堂々とした歌声ではあるが、そこには簡単に繕えない傷みが張り付いている。なんとも言えない憂いがあって、まだ19歳だと知ったときには少し驚いたが、思えばロードが広く知られることになったのは16歳のときだったわけだし、〈若いのにどうの〉という書き方をするのはさほど意味のあることではないのかもしれない。

ちなみにアデルは〈19歳の私〉を表現したアルバム『19』(2008年)で鮮烈なデビューを飾り、英国BBCの信頼できる投票企画〈Sound of...2008〉のトップに躍り出たことも手伝って一気に注目を集めたものだったが、UKサウスポート出身のラプスリーも2015年の〈Sound of...〉にノミネートされて早くから話題に。しかも各社争奪戦の末に契約したレーベルがアデルを成功させたXLで、19歳にデビューした。何より歌声そのもの(特に低音域)と歌唱表現の仕方が非常にアデルと近いのだ。故に〈ネクスト・アデル〉と言われたりもしているわけだが、しかしサウンドのアプローチはだいぶ異なる。アデルは生音主体のレトロ・ソウル的な行き方でデビューを飾ったものだが、XXを手掛けたロディ・マクドナルドがプロデュースを担当したラプスリーのデビュー盤『Long Way Home』はインディーR&Bに呼応したもの。エレクトロニック・サウンドを鳴らしすぎない程度に後ろに敷いて、浮遊する感覚を持たせたりしながら、それによって際立つヴォーカルは生々しくもソウルフルという、そのバランスが絶妙だ。

LAPSLEY Long Way Home XL/HOSTESS(2016)

『Long Way Home』収録曲“Hurt Me”

 

低い声に肝の据わったところが見て取れるラプスリーだが、ピアノとビートだけのシンプルなプロダクションに男性コーラスを絡めた“Falling Short”は高めの声の淡さも魅力的。“Cliff”や“Leap”のようにジェイムズ・ブレイクを想起させるエレクトロニカ的な曲もあり、そこでの彼女の歌はスピリチュアルとも言える。“Tell Me The Truth”はアルバム中もっともメロディックな曲で、エレクトロニックR&B好きへの訴求力が特に強いだろう。また、スロウな曲が大半を占めているなか、ゴスペル風に始まってハウスっぽく展開していく“Operator”に限っては昂揚感もあり、こうしたダンサブルな曲をもっと聴いてみたいとも思わせる。

『Long Way Home』収録曲“Falling Short”

 

聴くほどに味わいの出てくるこのデビュー作の楽曲群を、果たしてラプスリーはライヴでどう表現するのだろう。デビュー前の段階から〈グラストンベリー〉に出演するなどしていた彼女だが、最近の〈BBC Radio1 Live Lounge〉ではバンド編成で、自身もキーボードを弾きながら歌っていた。日本初公演もそのスタイルで行なわれるのだろうか。また、オリジナル曲のほかにウィークエンドイヤーズ&イヤーズの曲などもライヴでよく取り上げているようだが、それらも披露されるのかどうか。そして、アデルにはなくてラプスリーにあるものとは……。そのあたりに注目しつつ、日本初ライヴを楽しみたい。 *内本順一

〈BBC Radio1 Live Lounge〉での、ゼイン・マリク“Pillowtalk”のカヴァー映像

 

ウィークエンド“The Hills”のカヴァー音源

 


 

Hostess Club Presents Sunday Special
日時/会場:2016年4月10日(日) TOKYO DOME CITY HALL
開場/開演:12:00/13:00
出演:トラヴィス/ベン・ワット・バンドfeat.バーナード・バトラー/ジョン・グラント/ラプスリー
チケット(税込/1D別):スタンディング/8,500円、指定席/9,500円
★公演詳細はこちら
★第2回:ジョン・グラント本邦初インタヴューはこちら
★第3回:Chocolat & Akito × Awesome City Club洋楽インディー座談会はこちら

関連アーティスト
読者アンケート