2012年『楽園のカンヴァス』で第147回直木賞候補となり、翌年『ジヴェルニーの食卓』でも同賞の候補となった原田マハ。本作は2011年に発売された単行本の文庫化。彼女が紡ぎだすその世界は、心の奥底に置き去りにされたある種の感情や想いを静かに語りかけてくれている。主人公、梶々谷和音が多くの人々の心に届く“永遠の旋律”を、父、2人の母、そして友人達の愛情によって奏でる事ができたように、私たちも又“永遠”の意味を彼女と共に探し求める。人生は傷つきながらも未来を信じ生きていく。再生と希望の物語。和音達が愛したカザルスの《鳥の歌》がいつまでも胸の中に響き渡っている。