INTERVIEW

いつも早すぎた3人組、LITTLE CREATURESの新たな挑戦(後編):『未知のアルバム』で辿り着いた2016年のロックンロール

LITTLE CREATURES 『未知のアルバム』

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  • 2016.07.21
いつも早すぎた3人組、LITTLE CREATURESの新たな挑戦(後編):『未知のアルバム』で辿り着いた2016年のロックンロール

デビュー25周年を迎えたLITTLE CREATURESのフロントマン、青柳拓次のロング・インタヴュー後編。引き続き、〈リアルタイム世代〉の西尾大作・Mikiki編集長と、〈後追い世代〉である筆者が質問を投げかけつつ、ニュー・アルバム『未知のアルバム』の制作エピソードを存分に語ってもらった。キーワードは〈米軍基地〉と〈同時代性〉。不可思議なバンド・アンサンブルが生まれた背景が、これを読めばよくわかるはずだ。

ちなみにLITTLE CREATURESは、7月22日(金)に〈フジロック〉の〈FIELD OF HEAVEN〉に出演するほか、9月22日(木)からは全国6都市を回る〈Unknown Tour 2016〉も決定している。新作の真価がライヴで発揮されるのは間違いなさそうなので、こちらにぜひ足を運んでみてほしい。

★前編はこちら
★〈Unknown Tour 2016〉詳細はこちら

LITTLE CREATURES 未知のアルバム CHORDIARY(2016)

ヴィンテージ楽器は好きだけど、やりたいのはいまの空気を持った音楽

――新作『未知のアルバム』は、いつにも増して音数が少ないですよね。資料にも〈驚異の断捨離〉とあるくらい。

青柳拓次「〈ギターをほとんど弾いてない〉って書いてあるね(笑)」

西尾大作「音の聴き触りは確かに変化しているんだけど、俺の感覚ではデビュー作から新作まで、LITTLE CREATURESのサウンドは変わっていないと思う。いろいろなルーツが入ってるんだけど、さっきも青柳くんが話していた通り、そのままアウトプットしているわけではないから、(根底にある)ニューウェイヴの上に着る衣装がどんどん変化しているような印象があるかな」

――今作を作るうえでのテーマはあったんですか。

青柳「3つの音で、ダビングはほぼなしで、日本語の歌詞を乗せること。あとは本当にシンプルに、ということですかね。〈○○っぽく〉というのは、今回はまったく考えなかったです」

――今回の作品は、初めて全編で日本語詞を用いていることもトピックですよね。なぜ日本語で歌うことにしたんですか?

青柳「先ほど言った通り(前編で言及)、これまではヴォーカルも一つの楽器として捉えていたから英語詞を選んでいたけど、自分のソロ作でアジアや日本の民謡を歌ったり、朗読会に参加することが多くなったり、日本語と長い間向き合っていたんですよ。それでふと、いまなら洋楽的な音楽に日本語を乗せられるなと、小さな閃きが急に訪れたんです(笑)。深い確信というよりは、本当にひらめきだった」

――何となくしっくりときたと。

青柳「そうですね。それに音楽的な冒険として、日本の言葉でそれができるというワクワク感もあった」

西尾「英語で歌っていた頃に比べて、メロディーやアレンジは変わった?」

青柳「今回は曲が先に出来ていて、その後に詞を書いたから、音楽的にはそんなに変わってないかもしれない。でも、今後しばらくライヴをやったりして、日本語でロックをやる感覚が身体に入ったら何かが変わるかもね」

西尾「言語が違うと発声も違ってくるよね。これまでよりも柔らかく、カジュアルに聴こえる。そういう意味ではこれは〈ヴォーカル・アルバム〉とも言えるよね」

青柳「確かに、珍しくヴォーカルを大きめにしたんだよね。なるべく一語一句すべてそのまま聴こえて、ちゃんと意味を捉えられるようにしたかったから。ロックはヴォーカルが小さいほうが良いという美学もあるけど、あえてはっきりと違いを出したかった。今回はすべて大きな声で歌える高めのキーにしていたし、〈歌うぞ〉という構えだったんだね(笑)」

――西尾さんは『未知のアルバム』を聴いてどう思いました?

西尾「LITTLE CREATURES史上、一番ふてぶてしいサウンドになっているよね。なぜ、こんなことになったのか不思議で」

青柳「自分の担当する楽器を絞り込んで、仕組みを単純にすることで、どんどん表現がエモーショナルな方向へ向かうんですよ。長嶋茂雄が、飛んできた球を無心でカキーン!と打ち返すような感じ。どこをどうやって、というのは説明がつかないような。いっぱい楽器を並べていると、段取りとか、それぞれの音色のことなどに意識が散っていくんですよね」

――楽器や音数を絞り込むことで、これまでにない集中力が生まれたと。

青柳「あと、これはアンガス・ヤングAC/DC)の教えなんですけど(笑)、シールドとアンプまでをなるべく短くすることで、ガーン!と勢いのある音が出るんですよね。それで、なるべくエフェクターを通さないようにしたり、そういった単純なことをスタジオでは徹底していた」

西尾「なるほどね。今回のギターはセミアコ?」

青柳「グレッチの60年代の古いやつと、友人に借りたフェンダーのテレキャス。2本もヴィンテージのギターなんだよね。ガーン!と胸ぐらを掴まれるような、自分でもエモーショナルな気分になりそうなものをと考えると、どうしてもヴィンテージになってしまう」

西尾(鈴木)正人くんのベースも、青柳くんのギターもそうだし、これまでになく凶暴なサウンドになっている。でもその一方で、音色に遊び心を感じたんだよね。これまでは、もう少しエレクトロニックな音遊びだったかなと」

青柳「(音を)重ねていく感じとかね」

西尾「そうそう。そこをヴィンテージ楽器で、重ねない、編集しない……と拘束するなかで、どうしたら一番楽しくできるのかを3人が考えているようなところが、今回のアルバムにおける一番の聴きどころかもしれない。ちょっとマニアックだけど(笑)。でも、楽器の制限があったことで、逆にアレンジのアイデアがどんどん広がっていったんだね」

青柳「確かに、必要に迫られたところはあるかな。あとは、古い楽器のおもしろさに惹かれていったのも大きかった。俺のグレッチも、栗原(務)に物々交換したものをもう一回借りたもので(笑)。本当に弾きにくいギターだと思うし、ボロボロで崩壊寸前なんだけど、出てくる音のおもしろさにすごく引っ張られた」

西尾「新作のこの独特なサウンドを聴いたみんなが、なかなか上手く言葉で説明できない謎の一つがそこだと思う。そういう古くてボロボロの楽器を使うからといって、アコースティック・スウィングやカントリーをやるわけではないんだもんね」

青柳「ヴィンテージ楽器の音色は好きだけど、やりたいのはいまの空気を持った音楽なんだよね」

――〈いまの空気を持った音楽〉というのは、具体的にはどういったものですか?

青柳「録音のされ方はやはり時代を映すので、音質というか音圧ですね。2016年の生演奏の感じだったらこれじゃないかな、という」

今回はロックンロール気分だけど、打ち込みの感じもある

――そういう現代性をすごく感じる一方で、今回のアルバムはこれまでの作品と違って、どんな音楽に影響を受けているのか正直わからなかったです。

青柳「(自分で)明らかにわかるのは、FMラジオの影響ですね。いま僕は沖縄の嘉手納や普天間の米軍基地のすぐ近くに住んでいて、そこでアメリカのFMが入ってくるんです。それで向こうのトップ40がひたすら流れてくるので、車でいつも聴いているんですけど、並走している米軍の人も同じチャンネルを聴いていたりするので、もう街ぐるみで同じ音楽を聴いているような状態なんですよ。そういった日々の体験は、すごく音に影響していると思います」

――これまで最先端のムーヴメントにいち早く反応してきたLITTLE CREATURESが、ここにきてメインストリームのど真ん中から影響を受けたというのは興味深い話ですね! 具体的にはどのあたりですか?

青柳「本当にチャートの上位にあるようなものですよ。ディプロスクリレックスエド・シーランM.I.A.とか。向こうは意外と凝ったものを作っているアーティストが上位に入っているから、聴いていても発見がありますよね」

ディプロとスクリレックスによるユニット、ジャックUの2015年作『Skrillex And Diplo Present Jack U』収録曲“Where Are Ü Now”
 

――最近のメインストリームは、まず音圧が全然違いますよね。ボディー・ミュージックとしても楽しめるというか。

青柳「そうそう。アデルサム・スミスのように、作りはオーソドックスだけどサウンドが強い音楽もあって、そういうのを聴いていると〈あぁ、これで世界中がワーッと熱狂するんだな〉と思いますね」

――ほかには最近どういった音楽を聴いていますか。

「YouTubeで〈Boiler Room〉に出ているDJをよく観ています。特に繰り返し観たのは、トロ・イ・モワトム・ヨークかな。あとは、オールド・スクールなヒップホップのミックステープもすごく好きで、影響を受けていますね。初期のアシッド・ハウスもそうだけど、打ち込みは緻密なものよりざっくりした感じが好きなので。ロックはもともと黒人音楽やダンス・ミュージックをどんどん採り入れて進化していった音楽だし、同じことを自分たちもやっているのかもしれない」

トロ・イ・モワの〈Boiler Room〉でのDJセット
 

――非常に納得できるからこそ、説明が難しいというか(笑)。ダブステップをバンド演奏しているように聴こえる曲もあるし、やっぱりロックンロールだなとも思いますし。

西尾「なんで、いまロックンロールな気分なの?」

青柳「よくわからないんだけどさ(笑)」

西尾「曲を書いている段階でそうだったの?」

青柳「ギターにベース、ドラムでライヴをやっている時期がしばらくあって、その感じがすごく楽しかったんだよね。フィジカルに行使していく感じがロックな気分と呼応していたというか」

2015年のライヴ映像
 

西尾「なるほど。曲の長さが全部4分になっているのは、結果的にそうなったの?」

青柳「漠然と長いアルバムはキツイなと思っていて。コンパクトに聴けるものにしたかったんだよね。ライヴになれば、いまの尺から7、8分に伸ばしたりはいくらでもできるし」

西尾「その気持ちありきで曲を作ったら、それくらいの長さになったと。以前、佐野元春さんにインタヴューした時も〈聴き手に辛抱強さがなくなってきている〉と言っていたね」

青柳「わかる。最近はiTunesとかで試聴して(曲の)前半だけ聴くようなことも多いし。それと今回はロックンロール気分だったので、ざくっと短いものが良かった」

西尾「そういう気分に合わせてなのか、アルバムの前半のほうで出てきたソウルっぽいフィーリングや、昔のリズム&ブルース的な要素、ガレージっぽいワイルドさやザラザラとしたサウンドは俺もすごく好きなんだけど、そこがバンド史上一番出ているのかなと」

青柳「それこそジミヘンとかね。ああいう感じは大好きだし、確かに古いロックの感じはすごく出ていると思う」

西尾「でもやっぱり、米軍キャンプのFMの影響というのはすごく頷けるな。(LITTLE CREATURESは)ロンドンっぽさが強い時期もあったけど、今回はちょっとサイケなところがあるでしょう」

青柳「そうだね。ざっくりしていてアメリカっぽい」

西尾「すごくラフでファンキーだし、黒いフィーリングもあって。そういったグルーヴの割合が高かったのが、すごくモダンな感じがした」

青柳「いわゆるロックといえども、8ビート的なものはすごく少ない。いわゆるブレイクビーツや打ち込みの感じに、さっき話に出たダブステップのような要素もあるし。楽器が3つしかないところで工夫も必要だったから、引き算から始めて少しずつ足していくイメージで」

西尾「そこが肝だね。3つの音がすごく工夫されている。小節ごとに見ていくと、いわゆる既存のフォーマットとは相容れないことをやっているけど、すべてが合わさるとちゃんと一つの塊になっている。そういう発想をしているバンドは、日本ではほとんどいないんじゃないかな」

――2016年にロックンロールをやるなら、ここまでやらないといけないのかとも思わされますね。やはり今回も〈早すぎる〉のかもしれない。

青柳「またダメかなぁ(笑)」

西尾「でも最近は、ペトロールズとかもそうだし、若い世代でもクリーチャーズとも同じ音楽的発想や感覚を持ったバンドが増えているから」

――若い世代が聴いても、発見の多いアルバムだと思います!

青柳「ああ、良かった(笑)」

歳の取り方としては、落ち着くよりも雑になっていくほうがいい

――ちなみに、タイトルの〈未知のアルバム〉にはどういう意図があるんですか。

青柳「コンピューターに音源ファイルを入れるときに、アルバム名を入力しないと〈UNKNOWN ALBUM〉と表示されるんです。それがなんかいい言葉だなと思って、日本語だと〈未知のアルバム〉って表記になるんですよ」

――なるほど。

青柳「身近なことから見えない世界まで、人それぞれに未知の領域ってあると思うんですよ。2曲目の“未知の世界”では米軍基地について歌っているんですけど、フェンスがあって、巨大な建物があって、その先にどんな世界が広がっているんだろう……といった未知な感じが基地にはあって。それ以外にも、これからどうなっていくのかというワクワクした未知もあるし、〈未知〉っていろいろな面のある言葉ですよね。僕らもこのアルバムが何なのかまだよくわかってないし、それをみんながどう聴いてくれるのかという未知もある」

――これまでは、そうではなかった?

青柳「もう少し確信というか、仕上がりのヴィジョンがあったかもしれないです。今回はごく短時間で曲を書いたのもあって、歌いながら〈あ、これはあのことを言っているんだ〉と後で気付くことも多かった。だからなのか、いつもは出来上がったアルバムはしばらく聴かなかったりするんですけど、今回はよく聴き返しています」

――デビューから25周年が経過した今日でも、いろいろな変化やサプライズがあるんですね。バンド内の人間関係も変わったりしました?

青柳「それが、あまり変わらないんです(笑)。音楽をやるときだけ顔を合わせるような3人ですけど、会えばくだらない話をずっとしていますね。普段つるみすぎないのがいいんだろうな」

――振り返ってみて、このタイミングでバンドが変わったと思えるようなポイントはありましたか。

青柳「音楽的には『GIANTS ARE DYING』(93年のEP)のあたりでガラッと変わったと思いますが、バンドとしては関係性というよりはスタンスとして、もっと自由になった気がします。それまではもっとバンド然としてやっていたのを、ギター、ベース、ドラムといった形式に縛られなくなったというか」

『GIANTS ARE DYING』収録曲“GIANTS ARE DYING”
 

――形式的なバンド・フォーマットに頼らず、自由なサウンドを奏でるというのは近年のトレンドでもありますが、LITTLE CREATURESはかなり早い段階でそれを実践していたような気がして。音色をカラフルにしようと思ったとき、大所帯のバンドを組むケースは多かったと思うけど、トリオでそれをやっていたバンドは少なかったと思うんですよね。

青柳「人数の少ないバンドでは、確かに珍しかったですね。もともと役割分担がすごく曖昧なバンドで、いろいろなことに挑戦してきたけど、今回はあえて元に戻すことで遊んでみたというか」

――いまは1年も経たないうちに新作を出すミュージシャンも多いなか、2000年代以降のLITTLE CREATURESは安定して約5年に1回のリリース・ペースを保っていますよね。次のアルバムが出るのはデビュー30周年のタイミングでしょうか(笑)。

青柳「あり得ますよね(笑)。でも歳の取り方としては、落ち着いていくよりも雑になっていくほうがいいなと思っているところもあって」

――洗練とは逆の方向へ?

青柳「そうです。僕らの場合は、若い頃が一番落ち着いていたくらいだし(笑)。年々ざっくりしていくのがいいなと思います」

西尾「デビューから25年が過ぎて、40歳を超えたこの歳になってニュー・アルバムを作る感覚って、どういうものなんだろう? 年齢は関係ないとはよく言うけど、実人生ではプライヴェートでも変化は常にあるわけじゃない? それはバンド活動にも絶対に影響が出てくると思うんだけど」

青柳「そうだねぇ。若作りみたいなことはなるべくしたくないかな」

西尾「出来もしないシャウトはしないと」

青柳「そう、無理はしない(笑)」

西尾「なるほどね。そういう意味でも、これは『未知のアルバム』なのかもしれない。こういったアルバムを40代のバンドが作ったというのは、日本の音楽史を振り返ってもあまりないんじゃないかな。継続的に活動しているミュージシャンもいるけど、昔と違う音を作ろうとしなければ懐メロや金太郎飴になっていくわけで」

――次は何をするんだろう、とならなくなりますよね。

青柳「まあ、最近は50~60代のDJも増えているしね。年齢は記号のようなものでもあるわけで、そのときの気分に合った音楽を作れたらいいかな」

 


FUJI ROCK FESTIVAL '16
7月22日(金)13:50~〈FIELD OF HEAVEN〉に出演!
★詳細はこちら

LITTLE CREATURES Unknown Tour 2016
9月22日(木)東京グローブ座
9月30日(金)愛知・名古屋TOKUZO
10月1日(土)京都・磔磔
10月2日(日)大阪・NOON+CAFE
★詳細はこちら

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