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まだまだ猛暑は終わらない! スヌープ関連作から西寄りモードのG皿を特選ガイド

JAY ROCK 90059 Top Dawg(2015)

ミックステープ『No Sleep Til NYC』(2007年)を受けてK・ドットより先にメジャーに見つかったブラック・ヒッピー構成員ながら、それが却って回り道になったか。キャリアを立て直してTDEから正規で出したこちらはサウンウェイヴらの支えるディープで熱い意欲作。ケンドリックSZAの駆けつけたGな“Easy Bake”が光る。

 

DJ QUIK The Midnight Life Mad Science(2014)

イージー・Eを滑らかにしたような語りとスムースな制作手腕で独自の地位を築いてきたコンプトンの25年選手。今作は本意気でガッツリ語るような構成ではないものの、ダークなラップ・チューンやフュージョン調の洗練されたインストなど、西海岸のムードを裏表から表現している。最近はゲーム“Quiks Groove”を手掛けてもいた。

 

GLASSES MALONE #GH2: Life Ain't Nuthin But... Division Music Company/Empire(2015)

ゲームとケンドリックの間を繋ぐLAのホープになるはずだった実力派。『Compton』に動機するタイミングで出たこの独立作は、メジャーに翻弄された鬱憤を晴らすようなドラマティックなG大作だ。NWAビギーボンサグなどをリサイクルしながら、ハードコア語りから泣きのメロウ系までをまろやかに聴かせる。タイガら客演も豪華。

 

DR. DRE Compton Aftermath/Interscope/ユニバーサル(2015)

自身が在籍したNWAの伝記映画「ストレイト・アウタ・コンプトン」のインスパイア盤。イージーに捧げる部分もありつつ、映画のアウトロを辿るような豪華さでスヌープやゲーム、ケンドリックを配していく劇的は流れの妙はこの男ならでは。アンダーソン・パックジャスタスといった〈未来〉に種を蒔いておくあたりも実にドレー

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CASEY VEGGIES Live & Grow Vested In Culture/Epic(2015)

ティーン時代をオッド・フューチャーで過ごしたイングルウッドのヤングガン。ミックステープ人気を受けてようやく出たこの公式アルバムは、タイラータイ・ダラー・サインYGアイアムスー!らを迎え、西海岸マナーも踏まえたフレッシュネスを響かせる。時代の空気を謳歌する粋なセンスと若さが気持ち良い名作だ。

 

VINCE STAPLES Summertime '06 Artium/Def Jam(2015)

ケンドリックは前作の音にハマった、という人にはぜひ本作を。ノーIDの導きでデフ・ジャム入りしたロングビーチ男の初フル・アルバム。クラムス・カジノらによる20曲入り2枚組という重厚さで迫るも、路上感を湛えたラップが受け手の緊張を持続させる。ジェネイ・アイコらがヴァイブ醸造に寄与したアーティウムらしい曲も印象的だ。

 

KENDRICK LAMAR To Pimp A Butterfly Top Dawg/Aftermath/Interscope/ユニバーサル(2015)

極めて〈音楽的〉な作りも手伝って絶賛され、また違うレイヤーで評されるべきカリスマの大作なのは言うまでもないが、ジャケから『All Eyez On Me』の中ジャケを思い出すような人にも親しんでほしいファンク・アルバム。ジョージ・クリントンの導入部から故人との対話に至るまで、往年の西海岸マナーに掛けたくすぐりも芳しい。

 

DOMO GENESIS Genesis Odd Future(2016)

オッド・フューチャーからまた一人がソロ・デビュー。一派に固有のユルさを広い意味でメロウな意匠と共に表現していて、シンガー勢との絡みに魅力を発揮するあたりも特筆すべき良さ。とりわけアンダーソン・パックを迎えたデクスター・ワンゼル使いのソウルフル・ディスコ“Dapper”はグルーヴィーな西の伝統をも伝えるものだ。

 

E-40 Sharp On All 4 Corners: Corner 1 Heavy On The Grind(2014)

スヌープとスクールボーイQ双方の新作に招かれているように、このベイエリアの王様の威信はキャリア30年を数えてもまるで揺らぐことはない。周りが若手だらけになった現在も客演王としての需要はとんでもないが、一時の異常な連作ラッシュが一息ついているうちに、本人の作品でも異才ぶりを堪能しておいていただきたい。

 

TY DOLLA $IGN Free TC Pushaz Ink./Atlantic(2015)

往時のネイト・ドッグから近年のアンダーソン・パックまで、シンガー/ラッパーの境界線をシームレスに泳ぐソウルフルな存在は西のサウンド・カラーを構築してきた大きな要素だろう。プロデューサー/ソングライターとしても幅広く名を売ったタイ・ダラーの振る舞いは、伝統と流行を繋ぐ声としても大きく機能している。