ROTH BART BARONの〈ロット熊戦記〉

成長し続けるシカゴのスーパースター・バンド、ウィルコ(Wilco)

ロットバルトバロン三船雅也がお届けする世界音楽〈熊〉紀行:第四話

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  • 2016.09.21

長い夏休みも終わり、すっかり涼しくなりましたね、バンドはアジア・ツアーを終え無事に帰ってきました。

皆さんはどんな夏を過ごしたのでしょう?

 

 僕たちは、THE NOVEMBERSの11周年イヴェントでMONOとスリーマンをしたり。

 

chikyunokikiと北海道スプリット・ツアー(連載4回目にして初の熊)。

 

アジア・ツアー。中国はエネルギーに溢れていました。

 

夢のモンゴルに降り立つ。

 

 

台湾ではスウェーデンのレディオ・デプト(The Radio Dept.)と楽しい日々を過ごしました。

 

〈フジロック〉は音響機材のトラブル続きでしたが、そのぶん機械に頼らないパフォーマンスができたと思います。深夜の演奏になりましたが、最後まで残ってくれた皆さん、本当にありがとう。

 

今回は、そんなフジでの演奏も記憶に新しいウィルコ(Wilco)について。僕の音楽観を大きく変えたバンドです。

アメリカはイリノイ州のシカゴで、94年にオルタナ・カントリー・バンドのアンクル・テュペロ(Uncle Tupelo)からヴォーカルの ジェイ・ファラー(Jay Farrar)が脱退。ジェフ・トゥイーディー(Jeff tweedy)を中心とした、残ったメンバーによってウィルコは結成されました。

アンクル・テュペロの93年作『Anodyne』収録曲“New Madrid”
若かりし頃のアンクル・テュペロ
 

どういうわけか、この1994年前後はオルタナ・カントリーなバンドがたくさん出てきます。何故なんでしょう?(90年代に詳しい奇特な若者よ、詳細求む)。

ブルー・マウンテン(Blue Mountain)や

ブルー・マウンテンの97年作『Home Grown』収録曲“Myrna Lee”
 

ボトル・ロケッツ(The Bottle Rockets)とか

ボトル・ロケッツの94年作『The Brooklyn Side』収録曲"Welfare Music"
 

ライアン・アダムス(Ryan Adams)が在籍していたウィスキータウン(Whiskeytown)もその1つ。

ウィスキータウンの97年作『Strangers Almanac』収録曲“Excuse Me While I Break My Own Heart Tonight”
 

ちなみに、ジェフと袂を分かったジェイ・ファラーは後にサン・ヴォルト(Son Volt)を結成します。特に↓の曲あたりには、 90年代から出てくるカントリーを経由したアメリカの王道歌物ロックのフィールがある。オルタナ・カントリーというよりカントリー・ロック。

サン・ヴォルトの95年作『Trace』収録曲“Route”のライヴ映像。ジェイ・ファラーの声はとても良い
 

筆者がウィルコに触れたのは、『Yankee Hotel Foxtrot』という2001年にリリースされたアルバムでした。ノイズにまみれ、実験的で、ダークで、それでいてフォーク・ミュージック。当時フォークトロニカとかそういう言葉や音楽には全然ピンときていなかった筆者にとって、音への探究心の塊のようなこのアルバムは、とても心に響いたのでした。ジェフ・トゥイーディーのおもしろいところは、音楽がどんなに実験的でも歌心を忘れない、メロディックなフォーク・ソングが核にあるところです。パンクや70~80年代のハード・ロックといった要素もあるのですが、やはり〈ソング〉です。ここの芯がないプロダクションだけの音楽は、ホトリと寿命の短い線香花火のようで、すぐに興味をなくしてしまします。

ウィルコの2001年作『Yankee Hotel Foxtrot』収録曲“Kamera”
 

ドキュメンタリー「I Am Trying To Break Your Heart」には、当時のアルバム制作の様子が収められています。

この映画はとてもくせ者で、バンドをめざす若者に夢と希望をくれるドキュメンタリーではありません。当時のメンバーであるジャイ・ベネット(Jay Bennet)との確執もあり、ジェフは薬を飲んでトイレで吐いていたり(でも音楽制作のときはとても楽しそうにしている)、アルバム完成間近に、あまりに内容が実験的だという理由で、それまで在籍していたリプライズ(Reprise)から解雇通告を受けたり。リリースのすべもなく自分たちでネット上に公開したところ瞬く間に高評価が集まり(信じられないけどこの時代はiPod全盛期で、コピーコントロールCDとかいうわけのわからないアイデアが散乱していました)、レーベルのノンサッチ(Nonesuch)からフィジカル・リリースされることになりました。結果リプライズの目論見は外れ、『Yankee Hotel Foxtrot』はバンド史上最大のヒット作に。メディアからも大絶賛を受け、ウィルコは知名度を一気に引き上げました。なお、このドキュメンタリーの見所は、家族でファーストフード店に行ったときに、奥さんが〈いま手持ちないわよ〉と言うシーン。バンドの境遇とあいまってなんとも言えない哀愁を漂わせていて、その頃バンド少年だった僕に暗い影を植え付けました。

再出発したウィルコは2005年にリリースしたアルバム『A Ghost Is Born』でグラミー2部門を受賞。幾つかのメンバーチェンジを繰り返しながら、グレン・コッチェGlenn Kotche)、ミカエル・ヨルゲンセンMikael Jorgensen)、パット・サンソンPat Sansone )、ネルス・クラインNels Cline)を迎え、成長を遂げます。特にドラマーのグレン・コッチェと、ジャズや即興で有名なギタリストのネルス・クラインは、どちらもちょっと変わったミュージシャンで、ロック・バンドに加入と聞いて〈?〉を浮かべた人も少なくなかったでしょう。↓の2つの動画を軽く観てもらうと、彼らがどれだけ変わっているのかが少しわかると思います。

ネルス・クラインのサーストン・ムーアとの即興演奏
 

この編成になってからのウィルコは、本国アメリカでは2、3時間を越えるライヴをするようになり、いままで出した楽曲もアレンジが変わり、かつてないライヴ・バンドへと変貌します。このメンバーでのライヴ・アルバム『Kicking Television - Live In Chicago』(2005年)やツアー・ドキュメンタリー「Ashes Of American Flags」(2009年)をリリースしたのは、彼らのライヴへの自信の表れかもしれません。

「Ashes Of American Flags」から“Ashes Of American Flags”のパフォーマンス映像
「Ashes Of American Flags」から“Handshake Drug”のライヴ映像
 

現在の日本では、こうしたフォーク・ミュージックやカントリーの匂いがするバンドには、なかなかお目にかかれないんですが、僕らの周りにもウィルコを尊敬するミュージシャンが多くいます。〈musician’s musician〉というやつなのでしょうか。2010年の来日からたくさん観てきましたが、この間の〈フジロック〉のステージを観て感じたのは、フィジカルで鳴らす音楽の力強さと説得力でした。

また、ジェフはステイプル・シンガーズ(The Staple Singers)のメイヴィス・ステイプルズ(Mavis Staples)の2010年のアルバム『You Are Not Alone』をプロデュースしたり。

息子のスペンサーとバンド、トゥイーディー(Tweedy)を組んだり。

トゥイーディーの2014年作『Sukierae』収録曲“Low Key”
 

最近では、ウィルコ主催の音楽/アート・フェスティヴァル〈SOLID SOUND FESTIVAL〉が毎年6月にマサチューセッツで開催されています(これも筆者が行ってみたい、出てみたいフェスの1つです)。

9月9日には『Star Wars』以来、約1年ぶりのアルバム『Schmilco』をリリース! アートワークも最高。

ウィルコの2016年作『Schmilco』収録曲“If I Ever Was A Child”
 

いわゆる音楽のメジャー・フィールドで活躍しているのですが、彼らはインディー・バンドの扱いをよく受けています。それは彼らの自立したインディペンデントな姿勢がそうさせるのかもしれません。年を重ねれば重ねるほど活躍できるということを見せてくれる彼らに、海の向こうから勇気をもらっています。なぜかいつも目を離させてくれないのです。

さて、そんなウィルコを尊敬してやまない僕らと、対談するほどウィルコが好きな京都のTurntable Filmsで、ツーマン・イヴェントが開催されました。会場は大阪・梅田SHANGRI-LA、スペシャル・ゲストはCLUB SNOOZER。昼の3時からの、ちょっとしたオルタナ・カントリー・フェスティヴァルでした。中盤はTurntable Filmsとウィルコの楽曲をセッションするバンドを結成して、いろいろな曲を演奏しました、お互いに愛が強すぎて、セットリストを決めるのが本当に大変だった……。

自分じゃない人の曲を演奏するのは、作った人の哲学が垣間見えてとても良い経験になりますね。Turntable Filmsのみんな、CLUB SNOOZER、そして遊びに来てくれた皆さんどうもありがとうございました。

そして12月、バンドは恵比寿LIQUIDROOMにてワンマン・フェスティヴァル〈BEAR NIGHT〉を開催します。〈SOLID SOUND FESTIVAL〉に少しでも追いつけるよう絶賛準備中です! こちらもお見逃しなく。

2016. 12. 20 tue / Tokyo , JP
〈BEAR NIGHT〉@東京・恵比寿LIQUIDROOM
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★詳細はこちら

 

 ROTH BART BARON TOUR

2016. 10. 1 sat / Miyagi , JP
MEGA★ROCKS 2016
2016. 10. 15 sat / Hokkaido , JP
No Maps -Where U Heading-』 @札幌Sound Lab molebr
2016. 10. 16 sun / Hokkaido , JP
Live at Curtain Call』@札幌Curtain Call
2016. 10. 22 sat / Ibaraki , JP
LOSTAGE presents 『生活 2016』〉@茨城スペースU古河
2016. 10. 29 sat / Tokushima , JP
MOROHA III RELEASE TOUR〉@徳島club GRINDHOUSE
2016. 11. 19  sat  / Osaka , JP
〈Broadcast Satellites vol.1〉@大阪・福島Pine Brooklyn
2016. 12. 10 sat / Miyagi , JP
Hello Indie 2016
2016. 12. 17 sat / Matsumoto , JP
Hello Indie 2016
2016. 12. 23 fri / Ishikawa , JP
〈Magical Colors Night〉@石川・金沢市民芸術村アート工房
2016. 12. 24  sat  / Hiroshima , JP
Hello Indie 2016

【プロフィール】
三船 雅也

三船 雅也 (みふねまさや)

日本、東京出身。フォーク・ロック・バンド、ROTH BART BARON(ロットバルトバロン)のヴォーカル、作詞作曲、演奏、録音、プロデュース。2014年、アメリカのフィラデルフィアで大寒波に襲われながら制作したファースト・アルバム『ロットバルトバロンの氷河期』はその年のベスト・ディスクに数多く選ばれ、注目を集める。日本、アメリカを回る〈氷河期ツアー〉を行う。2015年、レコーディングのためカナダ・モントリオールへ。同年にSFをテーマにした1年半ぶりのセカンド・アルバム『ATOM』をリリース。音楽とヒグマをこよなく愛す。

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