Peach sugar snowがどうなるのか気になる
――そんな人がアイドル専門レーベルをやることになったきっかけは、新潟での酒の席での話だったわけですよね。嶺脇社長とナカG先生と……。
「あとRYUTistの安部(博明)さんと。RYUTistも思ってるところがあったみたいですね。わっかー(大石若奈)が辞めるってなったときに、やっぱりずっと現状維持していても、意外と女の子たちはモチヴェーション下がっちゃうかなっていうのは思ったみたいですね」
――地元を拠点にいい音楽を作って、ある程度の人が地元に観に来て、たまに東京に来る状態を保っていても。
「そうそう、だから進路が来たときに迷っちゃうというか、これ続けてていいのかな、みたいになっちゃうというか」
――Negiccoみたいにわかりやすく階段を上がっていってる実感が得られないと、たぶんどこかで限界が来る。
「そういうことなんでしょうね。RYUTistですらそうなんだと思って」
――小中学生ぐらいだったら楽しいだけでやり続けられるだろうけど、高校3年生ぐら いになると現実が目の前に来ちゃうわけですよね。
「大学進学もあるしっていうところで。だから、もうちょっと右肩上がりなやり方じゃないといけないのかなっていうのは思いましたね。僕も思ったし、安部さんとかRYUTist側も思ったと思うんですよ。経済的にはそこで成立してるけど、CDの利益をタワーレコード側とシェアすることになっても、ちょっと世界を広げたかったっていうのがあったんだと思います」
――ぶっちゃけ、レーベルに入ることで金銭的なメリットはあまりないわけじゃないですか。収入自体はおそらく減っちゃうわけで。
「そうなんですよ」
――だから、それ以上のメリットを見せてあげなきゃいけない。
「そこですよね。ハコイリ♡ムスメとかもそうですけど、現時点で全然成り立ってるんですよ。なんですけど、やっぱりずっとそれでやってても、メディアに出る機会とか、より大きな会場でやっていく展開にはなかなかなっていかないから、知ってもらう人を増やさないとっていうところで決断してくれたと思うんですよ。みんなそうだと思うんですよね。いろんなところから声がかかっても、メジャー行っても良さそうだなって人が行かないのってそこじゃないですか。そこでより広く知ってもらうことを選ぶか、小さい人数で利益をちゃんと出すことを選ぶか。それについては結構話しました。だから、それもプレッシャーになっちゃって(笑)」
――外から見てても相当大変だろうなと思いますよ。
「いまは〈実際、どう広げられますか?〉みたいな状態なんで」
――それは運営もファンもみんなそうだと思います。
「だからがんばらないとなって。単純にラジオでかけるとかだけじゃなく」
――ものすごい覚悟を求められている。
「そうなんですよ。俺だけじゃなくてタワーレコードのスタッフさんもプレッシャーはあると思います。スタッフさんの数が増えてるわけじゃないから、大変そうだなって」
――南波さんの飄々としたスタイルのままじゃやっていけない感じになるんですね。
「ね、どうしようとは思ってますけど。でも、わかんないですね、まずは出してみないと。ただ、こないだ新潟でツーマンやったんですけど、普通に感動しちゃって」
――RYUTistとハコムスとで。
「全然交流がなかったグループだから。もちろん単純に自分の好きな組み合わせなんですけど、コラボとかが想像以上に良くて。すごくポジティヴな気持ちになれたんですよね。例えば、永井ルイさんがハコムスの曲を書くのもあり得るなと思って。それはすごい合うはずだから。そのへんはめちゃめちゃ希望を見い出したというか。意外とわかんねえなと思ってたけど、実際目の当たりにしてみたらすごい良かったから、いまはすごいモチヴェーションが高い感じではあります」
――その2組を観た翌日は小林清美さんとトークショウをするっていう、かなりPENGUIN DISCな流れになってきてるんですね。
「Peach sugar snowはどうなるのか気になりますけどね」
――ちょっと不穏な空気が流れはじめているから。
「不穏ですよ、ホント。愛菜ちゃん心配ですけど……」
――こういうことも、なかなか書きにくくなるわけですよね。
「そうそうそう」
――前から小林清美先生に関しては、大阪で南波さんとボクが司会で、旧Peach~というか旧メンバーの桃香ちゃんとかとイヴェントをやってたときもなんとなく感じたことじゃないですか。最高におもしろいし可愛らしい人ではあるんですけど、だからこそ小林清美先生が一緒にトーク・コーナーとかに出るとアイドルの良さを消しちゃうというか……。
「そうなんですよね。曲だけ聴いてるとわかんないですけど、実際に接してみると小林さんのアイドル性が高すぎて。その問題がちょっと」
――運営も一緒に上がって話してもらうと完全に光を消されるし、じゃあメンバーだけでってなるとあまり喋れないし。
「そうなんですよね。だからその2組とPeach~はちょっと別ですね。経緯も別ですし」
――それこそPeach~に関しては、売れるきっかけというか世間に届くきっかけを作ったというか、音楽性が変わるきっかけを作ったという意味で、相当関わりが深いわけですからね。
「そうなんですよね。だからそこは責任持たないといけないなっていうのもあり」
――最初のCD-Rを聴いて、〈声ちっちゃ!〉って言ったところから始まってるっていう。
「〈声ちっちゃ!〉って言ったらね……」
――〈もはやウィスパーですよこれ〉みたいなイジりも入って。
「で、〈ウィスパー・ヴォイス? はて?〉みたいな感じでこの路線をやりはじめちゃった。そこの責任はあるから。だから、なんとかしないとって気持ちはありますよね……どうしたらいいんですかね」
――難しいですよね。ボクらは小林清美先生側をおもしろがりすぎてるんですよ。
「そうそう(笑)。でも、ホントにおもしろいじゃないですか。3人組だったらまた違ったかもしれないんですけどね。まあ、だから小林先生もまた2人組にしたんだとは思うんですけど、2人になったらそれはそれで危うい感じになっちゃって」
――音楽的にもおもしろいし、当然推せるグループではあるんですけど。
「そうなんですよ。本人たちがどれだけライヴをやりたいのかもちょっとわかんないから、個人的にはレコーディング・アーティストみたいな感じでもいいかなとは思うんですけどね。そんなに表には出てこない、みたいな。それでビジネス的に成り立つかは知らないですけど、作品は毎回ホントにすごいのは間違いないんで」
――ライヴはK&Mミュージック新宿店でしかやらないぐらいの。
「そうそうそう、それでもいいのかなとか思ったりするんですけどね。でも、何か必要ですよね。テコ入れじゃないけど。何を考えてるのかを訊きたいなって思いますけど、先生とメンバーに」
――聞き出しすぎて載せられなくなる可能性もありますけどね(笑)。
「最終的には小林先生とアーティスト契約するしかないっていう気はしてますけど(笑)。ファンの人も、もはや小林先生に付いて行きますみたいな感じじゃないですか」
――小林先生のダメな部分もみんな理解したうえで応援してる感じというか。
「だから、ぶどうねこが好きでとかそういうことではなくて、小林先生がやることが……」
――どうにも気になるという。子ども好きが集まってる現場ではないですよね。
「だと思うんですよね。3人時代のPeach~は違ったのかもしれないですけど。これに関してはなんて言えばいいのかわかんないです。好きだしどうにかしたいっていう気持ちもすごい強いんですけど、そもそもどうしたいかってあんまりわかってないところもあるんで」
――小林清美先生のあの感じだと、どうしたって反抗期の子たちとはぶつかるだろうし。
「その矛盾がね」
――だからといって小林先生が変わっちゃうと小林先生の魅力がなくなるし。
「そうなんですよ。作品がいいのは間違いないし、広めたいと思ってるのは変わらないんですけどね」