遊び心が満載の、〈電気そのものの音がする〉テクノ・ポップ

 TVアニメ「ウィッチクラフトワークス」にてKMM団が歌ったエンディング・テーマ“ウィッチ☆アクティビティ”を担当したことでその名が広く知れ渡ったテクノ・ユニット、TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND(以下、テクノボーイズ)。結成は94年で、これまでに発表したオリジナル・アルバムは2枚という超寡作なグループだ。しかし、過去には12拍で進行するミスティックなトラック“LOST”がクロード・ヤングにリミックスされ、“LOST”を発展させた“LOST SECOND”は細野晴臣監修の『EX MACHINA ORIGINAL SOUNDTRACK』(2007年)に収録されたというエピソードからも一筋縄ではいかない才気を窺い知ることができる(ちなみにリリースされたばかりの2作目『good night citizen』では“LOST THIRD”が聴ける)。そんな彼らが手掛けた「ウィッチクラフトワークス」の2枚組サウンドトラックは、クラフトワークの『Autobahn』を愉快にパロったジャケ(帯も!)からしてただならぬ雰囲気を感じさせるものだ。

 「前フリまったくなしで〈テクノボーイズ、劇伴決定〉っていうメールが来たんです」(松井洋平、プログラミング/エフェクティヴ・サンプル/エレクトリック・ヴォーカル)。

 「こちらは承諾も何もしていない状態で、もう〈決定〉と(笑)」(石川智久、シンセサイザー/ピアノ/プログラミング/エレクトリック・ヴォーカル)。

 「どんな作品なのかと思ってタイトルを見たら、『ウィッチクラフトワークス』ということで。(〈クラフトワーク〉が含まれているから)なんとなく馴染みがあるな、なるほどなと(笑)」(松井)。

TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND 『ウィッチクラフトワークス オリジナルサウンドトラック』 ランティス(2014)

 という経緯で突如始まったという劇伴制作。「打ち合わせで監督からメニューをいただいて、そのオーダーに沿って進めていきました。とはいえ、かなり自由にやらせてもらいました」(フジムラトヲル、エレクトリック・ベース/プログラミング/エレクトリック・ヴォーカル)とのこと。テクノボーイズはメンバー3人がそれぞれ作曲するスタイルで、劇伴制作の経験者である石川がそれぞれの適性を考え、オーダーに合った担当を振り分けていった。石川いわく、松井は「ポピュラリティーという意味ではなくポップでヘンな曲を作るのが得意」、フジムラは「どちらかというとエスノとかエレクトロニカ担当」。そして石川自身はクラシックを通過したアンサンブルを取り込むことに長けている。その3人が生み出した楽曲は、“ウィッチ☆アクティビティ”の背景にある80sテクノ・ポップはもちろん、エレクトロニカ、アンビエント、現代音楽などにオリエンタルなフレイヴァーがブレンドされた、聴き応えのある仕上がりになっている。

 その肝となるのはハード・シンセ。「やっぱりタイトルでしょうね。〈クラフトワーク〉だから」(石川)というシンプルな理由からヴィンテージもののシンセを多用したが、やはり音の存在感が違うという。

 「音色をシミュレートしたソフト・シンセと違って電気そのものの音がするんですよ」(石川)。

 「でもノスタルジックな気持ちで機材を使ったという感じでもなく、その機材の音色が本当に必要だったんですね。まあ、だんだん〈これイイじゃん、イイじゃん〉って興が乗っていったんですけど(笑)」(フジムラ)。

 そうして出来ていった音楽を一層輝かせるため、ミックスには飯尾芳史と寺田康彦、マスタリングには小池光夫といった具合に、在りし日のYMO及びアルファ・レコードを支えた人脈を迎えるという凝りようも凄まじい。メンバーも賢人たちの手捌きに感銘を受けたという。

 また、松岡英明や牛尾憲輔(agraph)の名もクレジットされるDisc-2には、アニメ本編で使われていたものを再構築してフル尺にしたナンバーやリミックス・ヴァージョンも収録されており、「実質テクノボーイズのサード・アルバム」(松井)という内容。単なるサントラに留まらないスペシャルな作品になっているので、このフレッシュなヴェテラン集団の骨太で奥行きのあるサウンドを存分に体験してみてほしい。

 

▼関連作品

左から、TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDのニュー・アルバム『good night citizen』(IRVING)、KMM団の2014年のシングル“ウィッチ☆アクティビティ”(ランティス)、細野晴臣が監修した2007年のサントラ『EX MACHINA』(commmons)、松岡英明のベスト盤『ゴールデン☆ベスト 松岡英明~シングルズ 1986-1994~』(ソニー)、agraphの2010年作『equal』(キューン)

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