INTERVIEW

HARVEY MASON 『Chameleon』

超名盤『ヘッド・ハンターズ』の大ヒット曲《カメレオン》を大胆にリメイク! 40年ぶりの大復活!!

HARVEY MASON 『Chameleon』

 何の情報も無く「ハーヴィー・メイソン」「カメレオン」というタイトルを目にしただけでピンと来たジャズファンも多いのではないだろうか?

 いち早く電化楽器を手にしたピアニストにして、モダンジャズ期からファンクフュージョン期に渡り第一線で活躍、83年に発表した『フューチャー・ショック』に収録された《ロックイット》ではダンスフロアにも接近した。記憶に新しいところでは2010年に発表したイマジン・プロジェクト等々常に音楽界に話題を提供し続けるジャズ・ジャイアント、ハービー・ハンコックエレクトリック・ジャズ期を代表する作品が『ヘッド・ハンターズ』である。そのアルバムに収録され大ヒットした曲が件の《カメレオン》であり、それはドラマーであるハーヴィー・メイソンとの共作であるというキーワードが繫がる。「ピン」と来た方の思考を紐解けば、つまりそういうことなのでしょう。

【参考音源】ハービー・ハンコックの73年作『Head Hunters』収録曲 “Chameleon”

 

 『ヘッド・ハンターズ』について情報の補足を少々。73年にリリースされたそのアルバムはビルボードのジャズ・チャートでNo.1を獲得し商業的に大成功を収めたアルバムなのは言わずもがな、以降ディスコ時代を含めクラブミュージックの文脈にも繫がるダンス・ミュージックの基底とも伝えられている。またレア・グルーヴという定義がなされた80年代後半にいち早く再評価されたアルバムでもあり、私達DJにとっても金字塔的作品の一枚でもある。共作者のハーヴィー・メイソンがその《カメレオン》を40年振りにリメイクしたというのだ。

HARVEY MASON Chameleon Columbia(2014)

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 結論から言ってしまうと身も蓋もないが、格好良いのである。ジャズのイディオムには「格好良い」という表現は相応しくないことを踏まえても「格好良い」としか言い様がないのです。おそらくその「格好良さ」の得体の知れなさは、マクロ的に見ると新世代のジャズミュージシャンによる新世紀のジャズの創造に繫がっているんじゃないかなとも思う。ロイ・ハーグローブロバート・グラスパーなどに代表されるアメリカの若き旗手が次々と革新的な作品を発表する中、この『カメレオン』のようなリメイクプロジェクトも昨今盛り上がっている。

 このプロジェクトのリーダーにしてイニシチアヴを握るのは勿論ハーヴィー・メイソンには間違いないが、そのメンバーに抜擢されたマーク・ド・クライヴ-ロウ(key)がその不思議なイディオムの基底を担っているのだということは想像に難くない。マークはピアニストではあるがDJのジャイルス・ピーターソンや日本のジャズDJ達とも(マークは日本人の母親とニュージーランドの父親を持つ)古くから交流を持ち、DJとして、キーボーディストやプロデューサーとしてロンドンを拠点に優れたダンスミュージック作品を世に送り出してきた。『カメレオン』から感じる格好良さは正にダンスミュージックの匂いがするそれであり、そのセンスをハーヴィーが尊重し、凄腕のミュージシャンがバックを支えるといった構図が見えてくる。アイディア、センスだけではジャズをクリエイトすることはできないが、そこを確かなキャリアと演奏力の高さが支えることによって、今回のようなリメイクが俄然光を放ち、新鮮なものとして響いてくるのだ。リメイクではあるが、ここには単なる焼き直しではなく、コンセプトとして「リロード」という概念も発生している。そこを新世代の旗手の一人でもあるマークが担っているように思うのだ。

 アルバムの選曲もクラブミュージックを通過した耳で聴ける魅力に溢れている。唯一収録されたヴォーカル曲《If I Ever Loose This Heaven》はレオン・ウェアによる名曲のカヴァーであるが、そのオリジナルはクインシー・ジョーンズのアルバムにひっそりと収録されていた。レオン・ウェアと共に歌唱に参加しているのは当時はまだ無名のミニー・リパートン。そういった経由もあり、ロンドンや日本のジャズDJの間ではエヴァーグリーンな名曲として認識されているし、アメリカではブート盤で12インチシングルも出回ったほどだ。またドナルド・バードジャズ・ファンク期を代表するアルバム『プレイセズ・アンド・スペーセズ』に収録されたそのタイトル曲もカヴァーしている。こちらもレアグルーヴ期に再評価され浮上、様々なラッパーやトラックメーカーによってサンプリングされたジャズ・ファンクの聖典。しかも、オリジナル曲でドラムを担当していたのはハーヴィー・メイソンであるという驚きもあり、収録するに至ってのバックグラウンドや整合性に、思わずニヤリとしてしまうのだ。

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