三線の柔らかくカラッとした音色が鳴るや否や、時間の流れが途端に緩やかになっていく。芸道60年、80歳を迎える沖縄民謡の偉大なる唄い手、大城美佐子の記念すべき新作の登場である。特別な吸引力を備えた情感のある奥深い唄声はやはり絶品。さらに今回傘寿を祝うべく集った錚々たる面々、知名定男やネーネーズ、そして久々の録音となる宮沢和史等との掛け合いも楽しめる贅沢な内容となっている。真っ直ぐな男女の想いと人間くさいやりとりの中にユーモアもある《裏座小》はじめどの曲も素敵だ。1962年のソロ・デビュー作《片思い》のオリジナルで幕を閉めるのもなんだか感慨深いものがある。