INTERVIEW

ユップ・ベヴィン『Prehension』 ジェントル・ジャイアントの作り出すモノクロームの音楽世界

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  • 2017.09.25
ユップ・ベヴィン『Prehension』 ジェントル・ジャイアントの作り出すモノクロームの音楽世界

ジェントル・ジャイアントの作り出すモノクロームの音楽世界

 本当は言わない方が面白いのかもしれない、と思うことがたまにあるのだが、最近もその一例に出会った。身長2メートルを超す長身のコンポーザー・ピアニスト、オランダ出身のユップ・ベヴィンのアルバム『プリヘンション』についてである。面白いこと、とはユップの身長が高い(本当に大きい!)ことではなく、このアルバムで演奏されているのがアップライトピアノだということ。まず録音を聴いて、その音に耳を澄ませて頂きたいのだ。この音色の複雑味、そしてノイズ。どうやって演奏しているのだろう、確かにピアノらしいが、と思って初来日の彼のコンヴェンションに出かけると、そこには一台のアップライトピアノがあった。おもむろにそれに向かって座り、演奏をするユップ。この意外性は、ちょっとした驚きだった。「録音に使ったのはお祖母さんが使っていたアップライトピアノで、実は僕がそれを選んだんだ。お祖母さんが亡くなってからは、僕がそれを使っている。そして、そのアップライトピアノと対話するなかで、このアルバムの音楽が生まれて来た」とユップ。広告マンとしての一面も持つ彼は、早朝と深夜に、日課のようにそのアップライトピアノに向かい、作曲をしたのだという。

JOEP BEVING Prehension ユニバーサル(2017)

 「作曲をするというより、音楽が勝手に頭の中で鳴り出すという感じに近い。それを何回も繰り返しているうちに、ひとつの形になって来る。それが僕の作曲法と言えるだろう」

 大柄な身体、顔中を覆う髭。実際、見た目は怖そうなのだが、その語り口、そして人柄は本当に優しそうである。「ジェントル・ジャイアント」というあだ名がついているらしい。

 あえて、アップライトピアノの盖を外し、マイクを近づけて、ピアノのノイズも入れ込みながら、音楽を奏でて行く彼のスタイルは、ありそうで無かったものだ。そして、その音楽はあくまでも透明だ。「日本の人には僕の音楽がわかってもらえる、そんな気がしていた。どこか日本の静謐な世界と通い合うものがあると思うんだけど、どうだろう?」

 確かに、ユップの音楽の中には、一種の沈黙のようなものが感じられ、それが私たちを癒す。彼の国オランダでも、クラシックのアルバムチャートの1位を獲得し、個別の楽曲のすべてがチャートの上位を独占するという話題作『プリヘンション』。アップライトピアノも捨てたものではない。それを改めてユップの作品が教えてくれたのである。(ちなみに2曲目のKawakaariは《川明かり》という日本語のタイトルを間違って入力してしまったものをそのまま使っているのだそうだ。)

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