INTERVIEW

幸せな時も哀しい時も聴き手によりそい刺激を与える―クリエリティヴ・ロック標榜するMAHATMA、2作の新アルバムを語る

MAHATMA『WITH LOVE IN MY HEART』『Reminiscence』

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  • 2017.10.26
幸せな時も哀しい時も聴き手によりそい刺激を与える―クリエリティヴ・ロック標榜するMAHATMA、2作の新アルバムを語る

群馬発、女性ヴォーカリストNaNaを擁するトリオ・バンド、MAHATMA(マハトマ)が、11月8日(水)に過去曲をコンパイルしたベスト盤仕様の『Reminiscence』と新ミニ作『WITH LOVE IN MY HEART』を同時リリースする。

MAHATMAは、現在YAHAMAとエンドース契約を結んでいる技巧派ドラマーのHidekiを中心に、2001年に結成された。その翌年にはHidekiの実弟であり、MAHATMAの全作品でミックスも手掛けているマルチ・プレイヤーのTsubasa(ギター)が加入。その後活動休止を経て、NaNaが加わった2009年頃に現在のスタイルを確立させた。憂いがありながらも親しみやすいメロディーを軸に、ロックやポップス、メタル、アニソン、ゲーム・ミュージック、ジャズ、フュージョンなど、多様な音楽を飲み込んだ音像は、まさに彼らが標榜している〈クリエリティヴ・ロック〉=聴き手の創造力を刺激するものと言えるだろう。この度リリースされる2枚組の『Reminiscence』は、NaNaが加入した2009年以降に自主制作で発表した入手困難な音源に、〈ライヴで一度だけ披露したことがある〉というギター・インストの新曲“絆”を加え、全曲をリマスタリングしたもの。彼らの軌跡を辿ることができる一作となった。

一方、『WITH LOVE IN MY HEART』には、ラウド・ロックの成分が強い“GREATNESS”といった新曲群に加え、過去曲のリアレンジ・ヴァージョンも収録。荒々しいギターが前に押し出され、より強靭な楽曲に生まれ変わった“Departure”や、〈制作時にJAM Projectをイメージしていた〉という“生きとし生けるもの”には、Hidekiが在籍するALHAMBRAへも度々ゲスト参加をしているYasuo Sasai(GERARD、元ARK STORM)が参加。パワフルな歌声を轟かせている。

※水木一郎が〈21世紀へ古き良き“アニソン魂”を残したい〉という呼びかけ結成されたアニソン歌手グループ

そして、タイトル曲の“WITH LOVE IN MY HEART ~君と共に~”は、前作『Orchestra of the Life』(2016年)に収録されていた“Romance”の続編にあたるもの。前奏曲も含め、10分を超えるプログレ/シンフォニック・メタル路線を踏襲した同曲は、そのドラマチックさはもちろん、曲尺も前作を上回る13分強の超・超大作。ゲスト参加したISAO(BABYMETALのバックバンド・神バンドにも参加)のギターが、楽曲をさらに情感豊かなものにしている。

今回は2枚の作品を軸に、過去作に込められた思いや、普遍的な魅力を誇るMAHATMAの楽曲の秘密、そしてMAHATMAの現在のモードについて、NaNaとHidekiに話を訊いた。

 

とにかく物語の起承転結をしっかりさせたいから、全体の流れを先に決める

――まずは『Reminiscence』の話からお伺いします。バンドの軌跡をまとめたベスト盤仕様の同作を聴いた印象として、セカンド・ミニ・アルバム『Dioramatic』から、今のMAHATMAの音楽に繋がっていく雰囲気がありました。

Hideki(ドラムス)「現体制初の作品『Brave Hearts』(ファースト・ミニ・アルバム)を制作してから、自分とTsubasaでいろんな試行錯誤を重ねていくことで案がまとまっていったので、確かにそういう感覚はありますね」

NaNa(ヴォーカル)「『Brave Hearts』は、Hidekiがすべて作曲していたんですけど、『Dioramatic』からTsubasaの曲が少しずつ入るようになってきたんですよね。2人は兄弟なのもあって、根底にあるものは同じなんですけど、曲の作り方やテイストが真逆なんですよ。だから、そのぶんいろんな曲が出てくるのはいいなと思っているし、自分としてもそこについていかなきゃいけないなという思いは、それこそ『Dioramatic』から強くなりました。どんな曲でも歌えないと、MAHATMAというバンドでヴォーカルはできないなって」

MAHATMA Reminiscence Walkure(2017)

――ただ、実際に歌うとなると大変だったんじゃないですか?

NaNa「大変でしたね。今回の2枚組(『Reminiscence』)のDISC1に収録されている曲は、ほぼ泣きながらレコーディングしてました(苦笑)。求められるレヴェルになかなか辿りつけないことがすごく悔しくて」

――求められるものに加えて、NaNaさん自身の中でもこういうものにしたいという絵が見えているからこそ悔しかった?

NaNa「そうです。特にHidekiの作る曲は苦労しましたね。もちろん、そこにやり甲斐がものすごくあるんですけど、サビで高いところがずっと続くことが多いので、最初は全然声が出ていなくて。喉から血が出るぐらい歌って、声が出なくなって、ハチミツを舐めながら歌い続けてました」

Hideki「やっぱり初期の頃はまだ探り探りだったので、確かに無理をさせていたと思います(苦笑)。そこからいろいろ試行錯誤して、勉強して、でもまあ今でも苦労はさせているとは思うんですけど」

NaNa「そのおかげで成長できたと今は思っているので、そこに関して恨んだりとかは全然してないです(笑)」

――先ほど、HidekiさんとTsubasaさんは根底にあるものが同じというお話がありましたが、Hidekiさんご自身としてもその感覚はありますか?

Hideki「あります。うちの父がレコード・マニアで、クラシックとか昭和の歌謡曲のレコードが、家に山ほどあったんですよ。それをお腹にいる頃からひたすら聴かされて育って、物心がつく頃には自分でプレイヤーに置いて聴いていたみたいで(笑)。それもあって、曲を作っている時にそのあたりの共通する音楽が意識せずとも出てくるところはあって」

――実際に楽曲のメロディーは、それこそ昭和の歌謡曲的というか、親しみやすさがありますよね。その隙間や間奏で、楽器が激しく暴れまわっていて。

Hideki「演奏に関しては、確かに技巧的とかいろいろ言われるんですけど、自分はメロディーを一番大事にしているので、アレンジをするうえで、その方向性にマッチしないものには絶対にしたくないんですよ。だから、音数を無理やり増やしてやろうとか、逆にシンプルにしてやろうという気持ちはまったくなくて」

――大事ゆえに、曲はメロディーから作られたりします?

Hideki「そうですね。自分が曲を作る時は鼻歌をボイスメモに録音するんですけど、それが固まったら、ボイスメモだけで一度フル尺を作るんですよ。前奏とかも〈ダッダダン!〉みたい感じで、バンドでやっていることを想像しながら、曲の中で一番前に出てくるメロディーを全部口ずさむんです。とは言ってもその仕上がりは酷いものなので(笑)、誰にも聴かせたことはないんですけど」

NaNa「私も聴いたことないです(笑)」

Hideki「あれは絶対に聴かせられない(笑)。逆に、Tsubasaはギター視点で曲を作るので、ギター的においしいフレーズがあったり、自分が思いつかないような展開の曲を作ったりするので、そこはやっぱりすごいなと思います」

――鼻歌でフル尺というのはあまりないやり方ですね。ワンフレーズを歌って、それを膨らませていくという方法はよく聞きますけど。

Hideki「そこは、自分があまりツギハギが好きじゃないというか、むしろそういうものが苦手だからなのかもしれないです。自分は、映画やドラマみたいなストーリー性のあるものが大好きなんですよ。もちろん後から〈ここのセクションは直そう〉というのはありますけど、とにかく物語の起承転結をしっかりさせたいから、全体的な流れを先に決めてしまいたいんです」

〈飛車〉のHideki、〈角〉のTsubasa

――それもあって流れるような展開になっているんですね。そして新ミニ作『WITH LOVE IN MY HEART』ですが、タイトル曲の“WITH LOVE IN MY HEART ~君と共に~”は、前作に収録されていた“Romance”の続編にあたる楽曲になっていますが、なぜそういった楽曲を作ろうと思ったんですか?

Hideki「自分の父の話になるんですけども、僕ら兄弟は幼い頃に母が亡くなって、父が片親で育ててくれて。父からは〈自分の好きなことはやれ〉と言われていたんですが、自分もTsubasaも、あまり父の苦労を知らずにやってきたと思うんですね。それで、“Romance”を作る時にちょうど父親が退職したんですけど、自分たちも大人になって、退職を記念するわけじゃないけど親父には感謝しなきゃいけないなということで、作った曲なんです。結局、父と母がいい恋愛をしてくれて自分たちが生まれたわけだから、僕らもいい恋愛をして、次に繋げていこうという意味を込めて〈Romance〉というタイトルにしていたんですが、曲を制作している間に、父が急死してしまったんです」

――そうでしたか……。

Hideki「自分たちとしても直接父に聴かせたかったんですけど。それで“Romance”をリリースしたものの、自分の中でどうしても腑に落ちなかったんですよね。だから、こうなったらちゃんとした追悼曲を作ろうと。『WITH LOVE IN MY HEART』というタイトルも、ショパンの“別れの曲”を英語ではこう表現することを知ってつけたんです。ただ、前作を制作してから本当にずっと曲を作り続けていたので、結果1年かかってしまいましたが。悩み続けて、ひたすらボツを積み重ねていって」

2016年作『Orchestra of the Life』“Romance”
 

――どの部分で悩んだんですか?

Hideki「サビですね。そこが決まれば、物語でいうところの結末が見えてくる感じがあるんですよ。でも、そこがなかなか出てこなくて苦労しました」

――ただ、別れがテーマではありますけど、歌詞にはこの先も歩いていくことを綴られていて。

Hideki「そうですね。死んでしまって哀しいという曲を作っても、父は喜ばないと思うので。父は僕らが音楽をしていることをずっと応援し続けてくれていたので、その音楽を伝え続けていこうという気持ちを根底にして作りました」

NaNa「2人のお父様のことはよく知っていましたし、この曲は絶対に手を抜けないというか、その気持ちをしっかり歌に乗せなきゃいけないなという使命感やプレッシャーはありましたね。Hidekiのデモは毎回完成度がすごく高くて、ヴォーカルのメロディーがフルートの音色で打ち込まれているんですけど、その音色が夢に出てきて、夢の中でも練習しているぐらいの感じになるまで(笑)、どういう感情を表現してほしいのか考えながら、ひたすらデモを聴き込んでいました」

――途中には長尺のギター・ソロやドラム・ソロも組み込まれていますが、お父様への想いを曲にしたら〈自然とこの長さになってしまった〉という感じだったんでしょうか。

Hideki「確かにそうなってしまいましたね(笑)。ドラム・ソロは、自分の感情のうねりや荒ぶりを表現しているんですよ。自分が好きな〈ストーリー〉は、一本調子で幸せなものではなく、抑揚のあるものなんです。だから、あのドラムは壮絶なものがあると思うんですけど」

――もう、かなり凄まじいです。

Hideki「ハハハハ(笑)。自分としても、むき出しの感情というんですかね。自分の中から出てくる良いものも悪いものも、全部関係なしにひっちゃかめっちゃか出してしまっている感じですね」

――アルバムには、Tsubasaさんが作詞作曲をされた“GREATNESS”も収録されています。

Hideki「〈激しい曲にしたい〉ということでTsubasaがこの曲を作ってきたんですけど、彼は性格的にどちらかと言うと、ちょっと暗いんですよね。歌詞ではそんなありのままの姿を表現しているなと思ったんですが。ただ、最初にTsubasaと話をしていたものと全然違う曲になったんです(笑)。Tsubasaは機転がきくというか、自分が将棋の飛車であれば、Tsubasaは角行なんですよ。自分はこれと決めたらそれしか作れないんだけど、Tsubasaはすぐに切り替えられるというか」

NaNa「2人はレコーディングの仕方も全然違うんですよ。基本的にヴォーカルを録る時は作曲者が立ち会うんですけど、Hidekiはそれこそ直球勝負なんですよね。私もレコーディングの前にいろいろ準備して、自分の中で一本筋を通したものを作ってから行くんですけど、Tsubasaはその場その場でどんどん変わって行くので、何も考えずに行かないとダメなんです。〈バカっぽい感じで歌って〉と言われた後に、同じフレーズを〈ものすごく暗い感じで歌ってみて〉と言われることもあるので(笑)」

MAHATMA WITH LOVE IN MY HEART Walkure(2017)

――その差が作風の幅にも繋がっているんでしょうね。あと、この2枚のジャケット・デザインはNaNaさんが手掛けられているとのことで。

NaNa「両方とも原案はHidekiが考えたんですよ。アイデアマンがHidekiで、形にするのが私、みたいな」

Hideki「『Reminiscence』はベストっぽい意味合いもあるということで歴史本みたいな感じにしようと思ったのと、『WITH LOVE IN MY HEART』はこれまでNaNaちゃんをジャケにした作品はなかったので、今回は趣向を変えてそういうものにしたいなと思いました」

NaNa「でも、『WITH LOVE IN MY HEART』のジャケには秘密があって。最初にHidekiから言われたのが、〈私を表紙にしたい〉ということと、〈翼を生やして、背景は樹木にしたい〉と。なぜかというと、Hidekiって本名に〈樹〉という文字があるんですよ。それと〈翼〉というので、3人がひとつになっているものにしたいと話していて」

Hideki「あ、そうだった」

NaNa「思い出してください! それを聞いた時にすごく感動して、〈絶対にそういう形にしよう!〉ってがんばったのに(笑)」

――(笑)。今回発表された2作はバンドを語るうえで大切なものになりましたが、今後活動していくうえで、こういうバンドになりたいという目標はありますか?

Hideki「MAHATMAは暗い曲や短調の曲が多いんですけど、自分の中ではポジティヴな気持ちで曲を書くことがすごく多いんです。自分のこれまでの人生も、辛いことを乗り越えた時に達成感や満足感があったし、例えば、すごく寒いところから暖房の効いた暖かい部屋に入ると幸せを感じたりするように、そういった抑揚というか、陰と陽みたいなものはなくてはならないものだと思うんです。だから、メロディーや曲では陰の部分をすごく出すんですけど、歌詞を含めた楽曲のコンセプトとしては陽でありたいし、聴き手にポジティヴな気持ちを与えられるバンドになりたいと思っています」

NaNa「今所属しているレーベル的にはメタル寄りではありますけど、本当にいろんなパターンの楽曲があるので、ポップスが好きな方も、アニソンが好きな方も、ジャズも、クラシックも、どんな音楽を好きな方が聴いても、一曲ぐらい何か刺さるものがあるんじゃないかなと思うんですよね。あと、Hidekiが話していた〈幸せ〉というところでもあるんですが、MAHATMAの曲の幅広さは、その時の気分や状況にあわせて、その人の人生というか、生活に寄り添える音楽だとも思っていて。明るく楽しい時もあれば、暗くて哀しい時もありますけど、その時々で感情に寄り添えるような音楽をこれからも作っていけたらいいなと思っています」

 


Live Information

2017年11月18日(土)大阪・西心斎橋 Bigtwin Diner SHOVEL
2017年11月19日(日)名古屋・栄RAD
2017年12月9日(土)宮城・仙台FLYING SON
2017年12月16日(土)群馬・LIVEHOUSE EMOTION
2018年1月20日(土)東京・渋谷RUIDO K2

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