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シーア 『Everyday Is Christmas』 移籍第1弾は人気ソングライターとしての意地が垣間見える全曲オリジナルのクリスマス盤!

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  • 2017.12.15
シーア 『Everyday Is Christmas』 移籍第1弾は人気ソングライターとしての意地が垣間見える全曲オリジナルのクリスマス盤!

シーアからメリー・クリスマス! プレゼントを開けた瞬間、街中のイルミネーションよりも眩しいメロディーが溢れ出したよ! えっ、しかもすべてオリジナルなの? これが現代を代表するソングライターの底力!

スタンダードじゃ気が済まない!

 何はともあれ、まずジャケットのインパクトが凄い。真夏にクリスマスを迎える南半球の人は感覚がちょっと違うのか、定番のグリーンとレッドを基調にしているものの、他のクリスマス・アルバムと比べたら見た目からして異彩を放つ。ちなみに、ここに写っている女性は言うまでもなくシーア自身ではなく、ファンにはお馴染みのマディ・ジーグラー。数々のMV、あるいはライヴ・パフォーマンスで顔を出さないシーアの分身を演じてきた、15歳のダンサー兼女優である。

SIA Everyday Is Christmas Monkey Puzzle/Atlantic/ワーナー(2017)

 アトランティックへの移籍作となるこのニュー・アルバム『Everyday Is Christmas』は、シーアにとってキャリア初のクリスマス盤だ。そもそもシーアは類い稀な才能を持つヴォーカリストなのだが、同時に超売れっ子のソングライターであることは承知の通り。自身が歌った“Chandelier”や“Elastic Heart”、リアーナ“Diamonds”、ビヨンセ“Pretty Hurts”……と無数の名曲を生み、今年もゼイン“Dusk Till Dawn”、元フィフス・ハーモニーのカミラ・カベロ“Crying In The Club”といったヒット・ソングを綴って、ケイティ・ペリーからブロンディにまで至る多彩なアーティストの作品にクレジットされていた。ゆえに、クリスマス・ソングのスタンダードを歌うだけで済むわけがないのである。結果、収録曲はすべて書き下ろし。なおかつ、全編をひとりのコラボレーターと膝を突き合わせて作るという、イマドキのメインストリーム・ポップには珍しいスタイルで完成させた。全曲を共作/プロデュースし、さらにホーン類を除くすべての楽器(ギター、ベース、キーボード、ドラムス他)をプレイしたそのコラボレーターとは、彼女が全幅の信頼を寄せるグレッグ・カースティンだ。

 まだオーストラリアの国外ではそれほどシーアの名前が知られていなかった頃、2008年の4作目『Some People Have Real Problems』で“Death By Chocolate”を共作したことをきっかけに彼女と親交を深めて、次の『We Are Born』(2010年)で全面的にタッグを組み、続く『1000 Forms Of Fear』(2014年)では大半の曲を手掛け、前作『This Is Acting』(2016年)でもシングル曲“Cheap Thrills”などに関わっていたグレッグ。今年はフー・ファイターズ『Concrete And Gold』やベック『Colors』のプロデュースでも脚光を浴びた説明無用のヒットメイカーだが、彼女とは気心の知れた仲だけに、何と2週間で今作を仕上げたというから驚きだ。

 

一癖あるクリスマス・ストーリー

 じゃあ今回はどんなアプローチを選んだのか? ここ数年のアンビエント的なサウンド傾向から一転、終盤にはシーアの本領発揮とも言えるドラマティックなバラードが控えているけど、2人はもっぱらオールドファッションなサウンドからインスピレーションを得て、オープニングを飾る“Santa's Coming For Us”でのスウィング・ジャズ、“Snowman”でのドゥワップや“Sunshine”でのモータウン調まで、温もり溢れる生楽器の音色を用いて一曲一曲を丁寧にアレンジ。ホーンやヴィブラフォンやチェレスタの、いかにもフェスティヴでシャイニーな響きが盛り込まれ、リリックもクリスマス仕様のヴォキャブラリーを満載している――サンタクロースやクリスマス・ツリー、天使にトナカイのルドルフ、エルフ、雪だるま、やどりぎ、白夜……といった具合に。それでいて本作でシーアが歌い聴かせるのは〈ハッピー〉とか〈厳か〉とか〈スピリチュアル〉といったありきたりな言葉では総括できない、一癖あるホリデイ・シーズンのストーリーばかりなのである。

 例えば、クリスマス当日に向けての気分をアゲる“Santa's Coming For Us”は、サンタクロースに手紙を書いてプレゼントをねだる一見イノセントな曲なのに、〈あなたの密かな望みを手紙ですべて打ち明けるのよ〉と促すくだりでドキリとさせられるし、“Snowman”はケイト・ブッシュの“Misty”にも重なる、雪だるまを擬人化した異色のラヴソング。〈太陽から隠れて、死ぬまで一緒に凍えていたい〉という穏やかならない願望に、胸がざわついてしまう。かと思えば、“Ho Ho Ho”は世のはみ出し者たちに〈ベロンベロンに酔っ払おう!〉と呼びかける、豪快でユーモラスなドリンキング・ソングだったりするのだ。

 またその一方で、社会的なメッセージが潜んでいるナンバーも少なくない。“Candy Cane Lane”は、タイトルに掲げている杖の形のキャンディーをモチーフにした一曲なのだが、シーアのキャンディーはよくある赤と白のストライプじゃなくてレインボー・カラー。 七色で塗られた、〈不可能なことなんか何もない場所〉を彼女は描く。バイセクシュアルであることを公言してきた人であり、地元オーストラリアで同性婚にまつわる議論がいままさに熱を帯びていることを踏まえると、性的マイノリティーの権利を主張する曲と解釈してもいいんじゃないだろうか? はたまた“Puppies Are Forever”にはシーアが普段から熱心に訴えている動物愛護のメッセージが込められていて、“Sunshine”は〈クリスマスにはモノじゃなくて思いやりや愛を分かち合うべきだ〉と諭しているかのようにも捉えることができる。甘いだけ、浮かれているだけじゃなく、ピリッと辛味を効かせてウィットを忍ばせ、リスナーを考えさせたりもする本作は、まさしく複雑なこの時代にフィットしたクリスマス・アルバム。〈毎日がクリスマス〉という表題こそ屈託のないものけど、決して侮ってはならないのだ。

 

シーアのアルバムを紹介。

 

シーアが参加した2017年リリースの作品。

 

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