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初音ミク10周年

 supercellやkz、米津玄師(ハチ)をはじめ、ニコニコ動画を出自とするアーティストが第一線で活躍する現在。新たなポップソングのスタイルに影響を与えた彼らの影の功労者とも言える音声合成システム用のヴォーカル音源=ボーカロイド対応の初音ミクが生誕から8月31日で10年を迎えた。それを受けた主な動きを追ってみると……まずは誕生日の前日に2枚組の10周年記念盤が登場。書き下ろし楽曲のみの〈Disc-1〉にはwowakaやDECO*27、40mPらが登板し、歴代レジェンド楽曲が並ぶ〈Disc-2〉にはMOSAIC.WAV×鶴田加茂やlivetune、sasakure.UK、じん、黒うさPらの名がズラリ。また、八王子Pのように自身のオリジナル作でお祝いを表明したアクトや、異色のジャズ・アレンジ作となった手塚治虫×冨田勲×ミクのトリプル・アニヴァーサリー盤なども。さらには、初音ミク文化の体験イヴェント〈マジカルミライ 5th Anniversary Special Live〉の公式コンピに提供した“砂の惑星”のセルフ・カヴァーも含む米津玄師の最新作『BOOTLEG』が大ヒットを記録したりと、ミクの足跡が多彩なシーンに刻み込まれていることが、目に見える形であきらかに。 *土田真弓

 

UKロックの新人レースは大混戦

 ギャラガー兄弟やシャーランタンズほか、ブリット・ポップ時代に出世した面々を筆頭とするキャリア組の動きが目立ったからといって、〈英国キッズのロック離れ〉と決めつけるのは早計。確かに、まとめて語りやすい大きなムーヴメントがなかったため、状況を把握しづらいのも事実ですが、裏を返せば2017年の新人レースは混沌としているからこそのヤバイ興奮があった、と私は感じています。

 ということで、この1年のニューカマーを強引に系統立てて紹介すると、ウルフ・アリスの後を追うインヘヴンやアマゾンズらグランジ回帰系、〈ポスト・アークティック・モンキーズ〉争いを展開中のシャーロックスとサンダラ・カルマら王道系、スペインのハインズに真っ向勝負を仕掛けたビッグ・ムーンやヴァントら爆音ガレージ・ロック系、ラッド臭プンプンのキャベッジやラット・ボーイらハイブリッド・パンク系、そしてフォーメイションやゴールデン・ティーチャーらタテノリのダンス系など。ここからビッグ・ウェイヴが生まれるか……はさておき、いろんな勢力が乱立している様子は見ていてワクワクしましたよね! *山西絵美

インヘヴン『Inheaven』収録曲“Baby’s Alright”

 

男性ソロ・アイドルに夢中!

 ボーイズ・バンド旋風がひと段落し、イケメン好きの視線はソロ・アクトへ。なかでも、発表から10か月以上かけてUSチャート5位まで浮上した初作『Kane Brown』が話題のポップ・カントリー歌手、ケイン・ブラウンは〈男性版テイラー・スウィフト〉としてのさらなる飛躍を予感させてくれました。また、2016年作『Illuminate』で世界的スターの仲間入りを果たしたショーン・メンデスや、US本国での公式アルバムが待たれるオースティン・マホーンが、ここ日本で2017年にブレイクしたことも忘れちゃいけません。そうしたなかで、ワン・ダイレクションのメンバーが本格的に個別の活動へ踏み切ったのは正しい判断と言えましょう。先にアルバム・デビューを飾った2人——ハリーとナイルは70sの西海岸ロックっぽい音作りで新たなファン層を獲得。また、ルイとリアムはベッドルームR&B調の先行シングル群によって来るべきアルバムへの期待を煽り、4人各々がこれまでと違うアダルトな表情で私たちにトキメキを与えたのでした。 *山西絵美

ケイン・ブラウン『Kane Brown』収録曲“Thunder in the Rain”