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◆久保田泰平

TWICE Twicetagram: 1st Album JYP(2017)

近所で小学生の男の子たちがおもしろがって“TT”を歌って踊っているのを目撃し、思っていた以上の波及力を実感。楽しくって可愛くってカッコ良くって適度にセクシーな歌とダンスは、ダルビッシュ有のスライダー並みにえげつないチャーミングさ。なかでも秋の活動曲“Likey”にはドゥグンドゥグン❤させられっぱなしでしたヨン。2017年のK-Pop、いや、世界中のアイドルひっくるめて彼女たちにチャンピオン・リングを贈りたいです。

 

◆桑原シロー

JILLETTE JOHNSON All I Ever See In You Is Me Rounder(2017)

この1年も魅力的な女性シンガー・ソングライター作品との出会いがたくさんあったが、もっとも美しい思い出を残してくれたのがナッシュヴィルを拠点に活動するジレット・ジョンソンの2作目だ。デイヴ・コブが制作したこのアルバム、古めかしいメロトロンの響きなどを交えつつ、シンプルなアンサンブルでもってアンニュイな歌声を眩く引き立てている。ベストの1曲はフリートウッド・マックのヒットを連想させる“Love Is Blind”。2017年に甦った麗しのベラドンナ。

 

◆澤田大輔

大谷和夫 美味しんぼ: アンティパスト バップ(2017)

言わずと知れたグルマン・アニメのサントラが、オリジナル盤に未収録のオープニング曲とエンディング曲を追加したパーフェクトな形で再登場。 中村由真が歌う“Dang Dang気になる”と“LINE”(どちらも作曲を林哲司が、編曲を船山基紀が担当!)は煌びやかなシンセに包まれたアーバン歌謡の金字塔としてシティー派の若者にも響くだろうし、ヴェイパーウェイヴ以降の感覚にも訴える小粋なインスト群も含めて、2017年にジャストなリイシューだったのでは。

 

◆柴田かずえ

NAI PALM Needle Paw Masterworks/ソニー(2017)

ハイエイタス・カイヨーテが大好きで、ロバート・グラスパーも含むそのあたりの流れを汲んだWONKみたいなバンドが、ここ日本でも大きく話題になってウキウキした2017年。で、ハイエイタスのネイ・パーム嬢による初のソロ作も安心のハイクォリティー。ロック耳で聴いてもデヴィッド・ボウイやレディオヘッドのカヴァーにはうっとりさせられたし、もう単純に、トレンド云々とかじゃなくて彼女の声が素晴らしい! ということで、私的〈+1〉に決定。

 

◆ダイサク・ジョビン

NEIL YOUNG Peace Trail Reprise/ワーナー(2016)

比較的よく聴いていたのは日本のインディー・シーンで新たなポップをクリエイトする若手たちだけど、昔からそのワン&オンリーな声もギターもメロディーも歌詞も大好きなニール・ヤングの、パッと聴きシンプルながら奇妙な謎の感情を引き起こす本作が、結局のところ一番耳と心に深く残っている。音自体はもちろん、情景/心理描写に優れた短編作家のように、市民の日常生活での心の機微や小さな疑問、嘆きなどをサッと見事に描き出す歌詞に心を強く揺り動かされた。

 

◆田山雄士

a crowd of rebellion Gingerol ワーナー(2017)

新元号の話も出てきて時代の潮目感が凄い。そんな激動下で生きていると、個性が強く、パワーに満ちた音楽を聴きたくなっちゃうものです。2017年はベック、ビョーク、小沢健二、エレファントカシマシなどヴェテラン勢の活躍が印象的。中堅~若手はおしゃれにまとまりがちだった気がするので、CHAIみたいにもっとはみ出してほしい。その点、a crowd of rebellionは攻めまくりで最高でした。スクリーモやメタルコアを聴かない人でも無性に惹かれる狂喜のアレンジ、爆発力にやられてください!

 

◆長澤香奈

WANNA ONE 1x1=1 (To Be One): 1st Mini Album CJ E&M(2017)

韓国のオーディション番組〈プロデュース101〉で選ばれ、2018年末までの期間限定で活動する11人組の男性グループ。番組テーマソング“Pick Me”を東方神起やSHINeeへの楽曲提供で知られるライアン・ジョンが手掛けたり、PENTAGONのメンバー作の曲があったりと、ここ10年ぐらいのK-Popシーンを支えてきた作曲家陣が参加する豪華なラインナップに唸らされた。現在のトレンドを押さえつつ、懐かしさも感じさせるのはそのためかも。

 

◆野村アリマサ

T-GROOVE Move Your Body Diggy Down(2017)

青森で育まれ、フランスのレーベル経由で逆輸入的に届いた新人プロデューサーのファースト・アルバム。ディスコ/モダン・ブギー隆盛というトレンドの後押しはあったものの、そうした好機を呼び込むのも実力のうち。良質な音楽を作り続けてさえいれば、世界中のどこかで誰かが聴いてくれているという、いかにも現代的なブレイクの仕方も痛快で、日本からいち早く反応したのがG.RINAというのもできすぎだった。未来のスーパー・プロデューサーの誕生に拍手。

 

◆林 剛

VARIOUS ARTISTS Detroit Motown(2017)

2018年1月に日本公開となる映画の本編は、67年のデトロイト暴動直後に起きた凄惨な事件を描いたもの。同時にラリー・リードが在籍した初期ドラマティックスの秘話という側面もあり、当時の彼らのシングルやモータウン名曲など、劇中使用の旧音源を中心としたサントラがもたらす緊張と弛緩に現行音楽と同等のエッジを感じた。ラリー・リードを演じたアルジー・スミスやルーツ&ビラルによる時空超えの新曲に、半世紀経ったいまの音楽の成熟も実感。