OPUS OF THE YEAR 2017
[特集]2017年の100枚+
ゆく年くる年。ゆく音くる音。ゆきゆきて音楽――2017年もいい作品は山ほどあった!という感慨を抱きしめながら、晴れやかに翼を広げて、新しい年へ飛び立つ準備はもうできていますか? 最高だった作品の数々をここで改めて振り返っておきましょう!

★bounce編集部の選ぶ2017年の100枚・前編
★bounce編集部の選ぶ2017年の100枚・後編
★100枚では語り尽くせない2017年の音楽トピック
★サントラやリイシューなどをまとめてチェック
★bounce編集部スタッフの選ぶ2017年の〈+10枚〉

 


ONE HUNDRED PLUS ONE
ライター陣の選ぶ2017年の〈+1枚〉

­◆青木正之

JOAO DONATO,DONATINHO Sintetizamor Deck(2017)

2017年はディスコやブギーも落ち着くのかと思ったら、タキシードの『Tuxedo II』に続き、ジャミロクワイやカルヴィン・ハリスも70~80年代のDNAを受け継いだファンキーな作品を発表して大賑わいでしたが、その流れの中で息子ドナチーニョとのコラボで気を吐いたのがブラジル音楽界の大物、ジョアン・ドナート。シンセをブリブリと鳴らしたブギーやブリージンなファンクがひときわ輝いていて、ゴキゲンなジャケと共に印象的でした。

 

◆荒金良介

CODE ORANGE Forever Roadrunner(2017)

2017年1月にリリースされたこのアルバムのインパクトがいまだに絶大。ピッツバーグ発の4人組による3作目で、プロデューサーにはコンヴァージのカート・バルーも名を連ねている。ハードコアが基底にあるものの、ヘヴィーネスとカオティックな衝動が渦巻く、不協和音混じりの禍々しい極悪グルーヴは強烈無比。システム・オブ・ア・ダウンのサポート・アクトを務めたり、グラミー賞にノミネートされるなど、快進撃はまだまだ続く!

 

◆池田謙司

LARAAJI Bring On The Sun + Sun Gong All Saints(2017)

2017年もさまざまなトリップ・ミュージックにまみれてきましたが、この巨匠の最新作には震えました。弦楽器チターの美しい調べに深遠なドローン、ミニマルなパーカッション……と意識が飛ばされる要素たっぷりで、ミックスで参加したカルロス・ニーニョの存在も大きい。アンビエントの真骨頂と言えるようなサウンドに夜な夜なお世話になりました。2018年はいろんな方面からのサイケ志向が高まっていく予感がして楽しみでもあります。

 

◆池谷瑛子

WATER SEED We Are Stars Water Seed(2017)

金が足りなくてもいろいろ聴けちゃうおかげで時間が足りなくなり、誰かが騒いでるアレやコレも無視できずに妙な義務感で消化していく――そんな貧乏性なリスナー生活を辞めたいと思っていた頃に出会ったニューオーリンズの5人組。土臭くて猥雑でちょいヘタウマなブラス・ファンクを心から楽しんで演奏し、どマイナーだけど自信満々な様子になぜか勇気をもらい、多少トレンドに追いつけなくても好きなものから丁寧に聴いていこう、と思ったのでした。

 

◆一ノ木裕之

HANS ZIMMER Dunkirk Wartertower(2017)

落語以外は心ならずもライヴからすっかり遠ざかっちゃったこの1年にあって、それに代わるせめてもの音楽体験と言えばこれだったかな~と。同じく劇場で観た映画では「メッセージ」のスコアにもゾクゾクした。〈Great 78 Project〉のような開かれたデジタル・アーカイヴひとつを見ても、音楽や文化を巡る日本での在り方との違いには落胆しかないけど、そんな時こそCD業界に期待、と毎度のことながら最後まで無責任に投げっぱなし。

 

◆稲村智行

NICHOLAS BRITELL Moonlight Invada/ランブリン(2017)

第89回アカデミー賞で作品賞を含む3部門に輝いた映画のサントラ。ボリス・ガーディナーのメロウ・ソウル曲をはじめ、劇中の音楽があの映像美、そして繊細なストーリーと見事に寄り添い、マイアミのフッド感を映し出すことに成功。映画にとって音楽がいかに重要かを再確認させられた。2パックの出世作品「ジュース」が25年ぶりに映画館へ帰ってくるという話題が駆け巡るなか、もっと日本でもブラック・ムーヴィーの再評価が進むことを期待したい。

 

◆内本順一

Glider Dark II Rhythm けや木(2018)

彼らの地元である埼玉県本庄市の老舗スタジオ、Studio Digで1年近くかけて制作されたサード・アルバム。もはやバンドという形態にすらこだわらず、楽曲至上主義でやりたいようにやった結果、栗田兄弟の創造性が大爆発。ユウスケとマサハルの歌声の個性の違いもより際立ち、シティー・ポップもファンクもフィリー・ソウルも呑み込んだサウンドの懐の深さとイカレた歌詞のバランスが絶妙だった。100回聴いても飽きないポップ・ロックの金字塔。

 

◆金子厚武

B'z DINOSAUR VERMILLION(2017)

日本における安室奈美恵の引退発表。海外におけるクリス・コーネルやチェスター・ベニントン、そしてマルコム・ヤングの相次ぐ訃報――そんな2017年の終わりに届けられた、30年選手による通算20枚目のアルバム。〈DINOSAURと呼ばれようともStill Aliveし続ける〉宣言のカッコ良さときたら。初出演した〈ROCK IN JAPAN〉フェスで若いオーディエンスを圧倒する2人の姿は、まだまだ枯れてはいなかった。

 

◆北爪啓之

Angel'In Heavy Syrup Underground Flowers: The Best Of Angel'In Heavy Syrup 1991-1999 テイチク(2017)

いまだにその名を耳にするだけで妖しい動悸を覚える、90年代を閃光のように駆け抜けた大阪発の4人組ガールズ・バンド。アルケミーからの全作品が長らく廃盤だったので、このベスト盤には感無量だった。サイケやプログレとして語られがちだが、儚いウィスパー・ヴォイスやノイジーなギターが織り成すコズミックで構築度の高いサウンドは、2017年のいま聴くと同時代のシューゲイザーやポスト・ロックとの親和性も窺えて興味深い。

 

◆北野 創

井上ほの花 ファースト・フライト Clinck(2017)

相変わらずアニメ/声優ソングばかり追っていた1年でしたが、なかでも鮮烈だったのが井上喜久子の愛娘によるデビュー・ミニ・アルバム。80sテクノ~アイドル・ポップの旨味だけを掬ったような楽曲群はニッチな層を狙いすぎの節もありますが、元blue marbleのメンバーによる無果汁団の全面プロデュースと聞いて思わず納得。あとキャラソンではチト&ユーリ“More One Night”が神でした。2018年は上田麗奈の初シングル、そして中島愛の復帰後初アルバムに超期待!