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Photo by Hiroki Nishioka
 

スーパーヒーローは変なものが好き

――アルバムの話にまた戻りたいんですけど、“Flying Future”はけっこう変わった曲で、今までにあまりなかったようなタイプの曲だと感じましたが。

M「去年の配信リリースで出していた曲と違う傾向の曲もやりたいなと思いまして、〈5連符と3連符と16分音符を一緒にやる〉みたいなのをやりたいなと思っていたので、やっちゃいましたね(笑)」

K「こういう感じが好きなんで、楽しかったですよ」

M「KOUさんは絶対に悩まないんですよ(笑)」

K「一音一音、生ものですからね」

M「でも、面白いなって思えるものが好きで、普段聴くのも面白いものばかりで、そうするとこういう曲が出てくるんですよね」

――最近聴いてたものってどういう音楽ですか?

K「アンダーソン・パークとか聴いてましたよね」

M「そういうのは大好きですね。あ、“Flying Future”を作ったときはN.E.R.D.の新作を聴いてたかもしれないです。N.E.R.D.がバンドで来た際のライヴを観たことがあるんですけど、すごいかっこよくて、そのイメージがあって。ファレル(・ウイリアムス)のソロの“Happy”とかとは違うマニアックなリズムだったんですよね、そのイメージがありましたね」

N.E.R.Dの2017年作『No_One Ever Really Dies 』収録曲“Lemon”
 

――変わったことやってる曲って他にありますか?

N「変なソロみたいのはありますね。1曲目(“Mysterious Superheroes”)のソロはわざと変な、音程がはっきりしない効果音みたいなものを弾いてます。リハの時に“MESHI - episode2 –”を弾いていて、この曲って〈飯は有限である~〉って喋る箇所があるんですけど、そこで変なベースを弾いたら〈何それ、すげー面白いじゃん〉って言われて、それからソロで変なことをやるようになったんです。今回も“SEVEN”とかでちょいちょい出てきますね。あとは、ヴィブラートを最初はきれいにかけてたんですけど、だんだん過剰になってきたり、途中から演歌のこぶしみたいになってきたり。ミクスチャー・ロックのギターソロみたいなのを真似して、ぶわーっと2オクターブくらい上げたり」

M「それをノーエフェクターでやるんですよね」

N「そういうのをウッドベースで再現するっていう。ウッドベースはフレットがないので、音程の段階がなく連続的に変わるのが良い部分だと思っているんですよ。ギタリストがワーミーでやっているようなことを、エフェクターを使わずにウッドベースでやってみようと思ってやったりしてますね」

ベース・ソロは2:40あたりから。
 
 

K「ドラムには木の実みたいなバシャバシャいうやつ(※南米の打楽器、チャフチャス。上記動画でも使用)が吊るされているんですけど、“What’s Next”の後半、ピアノだけになるところでちょっとだけいじっているのが微かに聴こえます」

M「あと、1曲目の“Mysterious Superheroes”は変な曲で、〈これ、収録されるのかな〉って思ってましたけど収録されちゃいましたね(笑)。プレイ的にも変なことをしてます。最初に変な音が入ってますけど、スタジオにシンセが置いてあって鳴らしてみたら変な音が鳴ったんで、〈この音を入れてみよう〉って冒頭に入れたんですけど、その時はタイトルも決まってなくて〈ミステリアス〉なイメージとかはまだ考えてないのにポワーンって音を出してて、楽しかったですね」

 

スーパーヒーローはキャッチーさを忘れない

――〈EXCITING FLIGHT盤〉のボーナストラックには“Playin’ Swingin’!!! H ZETTRIO!!!”が収録されていて、〈PS4® Lineup Music Video〉の動画にはラップが入ったバージョンも用意されていますよね。これはどういう風に作った曲なんですか?

M「PlayStation®4の新しいゲームを紹介する動画用の音楽で、ゲームの映像が数秒ずつ繋いであって、それに合わせて作ったものです」

――映像に合わせて曲を作り、後からラップを載せたと。

M「そうです。短い曲が連続していて、もうメドレーみたいな感じですね。(EXCITING FLIGHT盤に)収録されたバージョンは、そこからラップを抜いたものです」

――ライヴでやったらウケそうですよね。

N「もうすでに何回かやっていて」

K「いい感じですよ」

――あれをライヴで演奏するのって大変じゃないですか?

N「ガクッとテンポが落ちたりするところなんかは難しかったですね。でも僕ら、だんだん早くなる曲とかだんだん遅くなる曲とかライヴでよくやっているので(笑)」

――それから最近では、でんぱ組inc.の新曲(“おやすみポラリスさよならパラレルワールド”)の作編曲をH ZETT Mさんがされていて、演奏はH ZETTRIOで。

M「それもすごいことになってますね。でんぱ組inc.の後ろに我々3人ですからね。かなり面白いことになっています」

――もともと、でんぱ組inc.って変わった曲が多いですよね。

M「一曲の情報量がすごい多いんですよ。本当に“Playin’ Swingin’!!! H ZETTRIO!!!”くらいの感じで、次々と展開していって」

――作曲はどんな感じで?

M「でんぱ組inc.を一通り聴きまして、〈なるほど、情報量を多くしてほしいんだな〉ということがわかったので、あとはスピード感だったり、ちょっと複雑さだったり、変わったところだったりも入れたいなと思いまして。普通は8小節のところを6小節で終わっちゃうとか、いろんな仕掛けを入れました」

――3人の演奏で情報量を増やすのはどうやってやるんですか?

M「でも歌を入れていて思ったんですけど、でんぱ組inc.はメンバーが7人いるので、どんどん歌う人が変わるだけで情報量がすごいんですよ」

――なるほど。アイドルに曲を書く経験は初めてですか?

M「あまりやってないんですけど、実はガッキー(新垣結衣)に曲を書いたことがありまして、それくらいですかね(笑)。ファースト・アルバム(『そら』)の一番最後の“そら”っていう曲で、ミュージックビデオもあります。編曲はお任せしたので、サウンド的にはそんなに自分っぽくないですけど」

――H ZETT Mさんの曲は、H ZETTRIOでは覚えやすいしキャッチーだけど、歌うのに簡単な曲ってわけではないですよね。でも、アイドルの子たちって歌唱力が高いとは限らない。ってことは、その声域に合わせて曲を書くってことですよね。

M「合わせますね。ガッキーの時はどのくらいだかわからなかったので、とりあえず〈アイドルって疲れるだろうな〉って思って、あまり高くならないように、幅を持たせずに低い音域で狭く作りましたね」

――疲れるだろうからって(笑)

M「楽に歌ってほしいなって(笑)」

――でんぱ組inc.は逆じゃないですか? あまり楽をしないタイプですよね。

M「そうですね。デモを作って行ったらディレクターの方に〈3音くらい上げてくれ〉みたいに言われて。その後も〈もう2音上げます〉みたいになって、どんどんどんどんキーが上がりましたね。〈これ歌えんのかな!?〉みたいな(笑)」

――でんぱ組inc.側からハードルを……。

M「どんどん要求されましたね」

――演奏はどんな感じですか?

K「情報量を考えて、結構ハードにやりましたね。展開もたくさんあるし」

N「テンポはすごい早かったし、ほんとに歌えるのかって思いましたね(笑)」

――どのくらい速いんですか?

N「3人でやる速い曲はいっぱいあるんですけど、それらと比べても早いよね」

M「早いよ、BPM200くらいかな」

N「我々が普段やっている曲でも早いって思われるんですよ、それなのに」

――H ZETTRIOが早いって感じるって相当ですね。しかし、H ZETTRIOって変わったことを求められることが多そうですよね。

M「そうですね。でも、同時にストレートさも求められているような気がしますね。でんぱ組inc.を3人で演奏したのも、変わってはいますけど、ストレートさも感じます」

K「メロディーとかね」

M「ストレートさっていうより、わかりやすさですかね。そういうのも入れてますね」

――Mさんが書く曲って、キャッチーさが必ずあって。

M「そうですね。キャッチーさを入れちゃいたいときはよくありますね」

――最近はmajikoへの楽曲提供や、新しい学校のリーダーズのプロデュース、CM音楽とかもやられてるじゃないですか。〈オーダーに合わせて作ってください〉みたいな作曲仕事ってお好きなんですか?

M「好きですね。映像に曲を合わせるのはすごく楽しいですし、全くオーダーがなくて、ただ黙々と曲を書くっていうのも好きですよ」

――以前、ピアニストよりは作曲家っていう意識が強いっておっしゃっていたじゃないですか。そういう職業作曲家っぽいオファーが来て、それに答えていくのは好きなんですね。

M「そうですね。でも、最近はピアニストとして演奏の意識も上がってきてます。どんどん演奏も楽しくなってきているところだし、もっともっと演奏への意識も上げていきたいですね」


Live Information
〈Mysterious Superheroes Tour 2018~濃縮還元遊戯舞台~〉
6月2日(土) 群馬 伊勢崎市境総合文化センター
6月3日(日) 神奈川 クリフサイド
6月6日(水) 新潟 GOLDEN PIGS RED STAGE
6月8日(金) 長野 NAGANO CLUB JUNK BOX
6月9日(土) 静岡 浜松窓枠
6月10日(日) 石川 kanazawa AZ
6月12日(火) 京都 KYOTO MUSE
6月13日(水) 香川 高松DIME
6月15日(金) 愛媛 松山サロンキティ
6月16日(土) 山口 Jazz Club BILLIE
6月17日(日) 大分 音楽館
6月19日(火) 熊本 B.9
6月20日(水) 福岡 DRUM LOGOS
6月22日(金) 大阪 BIG CAT
6月23日(土) 広島 BLUELIVE HIROSHIMA
6月24日(日) 岡山 YEBISU YA PRO
6月26日(火) 愛知 NAGOYA CLUB QUATTRO
6月29日(金) 宮城 仙台darwin
6月30日(土) 北海道 札幌PENNY LANE 24
8月18日(土) 東京 日比谷野外大音楽堂

開場/開演(土・日):16:00/17:00
開場/開演(平日):18:00/19:00
※6月2日(土)群馬 開場/開演:17:30/18:30
※6月16日(土)山口 開場/開演:17:30/19:00
※6月23日(土)広島 開場/開演:17:00/18:00

料金:前売り5,000円(税込、オールスタンディング、整理番号付、ドリンク代別)
※6月2日(土)群馬 一般5,000円(税込、全席指定)
※6月16日(土)山口 LIVEのみ5,500円/LIVE+DINNER7,500円(税込、全席指定、ドリンク代別)
※6月23日(土)広島 前売り5,000円(税込、全席自由、座席が無くなり次第立見、整理番号付、ドリンク代別)

チケット発売日:4月14日(土)
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