INTERVIEW

Ms.Machineインタヴュー―2018年のライオット・ガール

〈女=弱い〉っていうイメージを払拭したい、同じ扱いになりたいっていう思いでこのバンドをやってます

――では、EP『S.L.D.R』について伺いますが、このタイトルの意味はなんでしょう?

SAI「……秘密です」

――そうですか(笑)。収録された4曲について1曲ずつお聞きしたいのですが、まず1曲目の“Break the current system”はどんな曲ですか? 歌詞の通り、男性優位な社会への批判? 

SAI「それはありましたね。『STUDIO VOICE』とかが好きなんですけど、カルチャー誌って男性誌コーナーにあるなって思ってて」

――女性のカルチャーはどこにあるんだ?と。

SAI「そう。女性誌コーナーに溢れてるモテ系の雑誌は私には〈?〉なので(笑)。あと、女子美でフェミニズムの授業を受けてたんですよね。バイト先のライヴハウスでも、上司は男の人しかいないなって思ってて。

音楽業界ってかなり男社会だと思うんです。あるバンドの人に〈このまま売れなかったらMs.Machineは辞めるべき。それか、お金持ちの男つかまえて結婚するとか(笑)〉って嘲笑気味に言われたことがあって。それとか、バンドの相談をするために、尊敬してたバンドの人とお茶したとき、〈ホテルへ行こう〉みたいなことを遠回しに言われたり。この人たち、私のことをミュージシャンやアーティストとして見てないんだなって、すごく苛立ちを感じました」

――なるほど……。最近は〈#MeToo〉の流れもありますし、そういったSAIさん、ひいてはMs.Machineの態度や主張というのは、すごくアクチュアルですし、ライオット・ガールの伝統にも連なっていると思います。ちなみに、男性主義的な価値観に対する違和感はRISAKOさんとMAKOさんも共有しているところなんですか?

RISAKO「私は半々な感じではあるんですけど、根底にはあるかな」

MAKO「ぶっちゃけ、〈フィメール〉って言い過ぎるのも嫌なんですよ。私は〈なんで(男女を)分けるの?〉みたいな感じなんです。そもそも女も男もずっと存在しているものですよね。確かに、ハードコアのライヴに女はあまりいないんですけど、それは〈女は興味ないんだろうな〉ぐらいの感じなんです。でも、同等にはなりたいっていうのはすごくあって。

〈女=弱い〉っていうイメージはほんとに嫌ですね。それを払拭したい、同じ扱いになりたいっていう思いで私はこのバンドをやってます。その辺はSAIが感じてることと一致するところがあるので、いま一緒にやってます」

――話は変わりますが、歌詞が一行だけというスタイルはいつ生まれたんですか? 

SAI「中学のとき、THE BLUE HEARTSとかサンボマスターとかが好きだったんです。そういう歌詞を聴いて、良い言葉ってもう言われ尽くされてて、いまの時代に私ができることってなんだろう?って考えて。それで、〈いまムカついてること、なんだろう?〉っていうことに焦点を当てて、こうなったんです。

言葉を言い過ぎると、二番煎じというか、薄まっちゃう感じがあって。あと、歌詞が1から10まであったとしたら、それを全部歌わなきゃっていうプレッシャーがあるなかでやりたくないんです。あと、単純に歌詞が覚えられないので」

一同「(笑)」

SAI「ライヴをやるときってすごく精神的に気合いを入れるんですけど、生々しい話をするなら、ライヴの前とか生理が止まるんですよね。けっこう精神的にくるんです。その精神状況にプラスして、書いた歌詞を全部正確に歌わなきゃみたいなプレッシャーを感じたくないなって。

あと、自分の歌詞に殺されたくないなと。基本的に書く歌詞が怒りとかネガティヴな感情なんですけど、言葉って本当に命を持ってるし、ライヴのときはその感情を思い出して、自分で作らなきゃいけない。だから、殺されそうになるんですよね。

ライヴってオーディエンスがいて、一回しかできないし、その場で勝負というか。オーディエンスとか共演相手とかによって場の空気も全然違うし。それで、毎回歌詞に書いてあることについて叫べるかっていうと、もちろん歌詞を書いたときといまの自分は違うので、叫べないときもあって」

Ms.Machine『S.L.D.R』トレーラー
 

――では、2曲目の“Cool meat”についてはどうでしょう?

SAI「私、中国の写真家の任航(レン・ハン)のモデルをやってたことがあったんです。彼が自殺したのが29歳のときだったんですね。自殺したことによって、伝説化されちゃうんだなって思ったんです。それで、このタイトルを決めました。〈meat〉は〈肉〉です……ニュースによれば、飛び降りだったんですよ。自殺したことによってメディアが騒ぎ立てて、業界の人や若者たちがアーティストの自殺をクールだと感じる……そういったことに対する皮肉でもあります」

――SAIさんが任航を知ったきっかけは何だったんですか?

SAI「女子美の後輩がFacebookに上げてて知りました。それで、VICEのインタヴューを観て、すごく好きになったんです。人間って、そもそもセックスして生まれるじゃないですか。なのに、セックスとか性ってタブーで隠されてますよね。彼は裸とか性器をポルノではなくてモチーフとして捉えて作品にしているんですけど、〈裸は恥ずべきものなのだろうか?〉ってそのインタヴューで言ってて。

あと、自分の国ではやりたいことができない、でも自分の国で表現しなきゃ意味ないということも言ってて。そういう考えが自分と近いような気がして、そこに惹かれたんだと思います。意思や疑問を持ってて、葛藤しながらそれを作品にしていた姿勢が好きです。

少し話が逸れますけど、多くの海外メディアやファッション・ブランドが彼の作品を取り扱っていましたが、そもそもアジア人の写真家とかモデルって、コーカソイドに比べたら圧倒的に欧米では少ないと思うんですよね。Instagramで海外のファッション・ブランドのアカウントとかをフォローしているんですけど、流れてくる写真が私から見るとすごい似たり寄ったりに見えてしまって。そんななかですごく……アジア人の鮮烈な色のヌード作品って、いままでに見たことがないという意味でインパクトが大きかったのは覚えています」

VICE Japanによる任航のドキュメンタリー「The Art of Taboo: 任航(レン・ハン)- Ren Hang」(2013年)
 

 

私の価値をお前の定規では測れねーよ

――3曲目の“Your little yardstick”についてはどうですか?

SAI「モデルをやってても、SNSの数字で見られるんです。私たちってそういう世代だと思うんですよね。例えば、一万いいねが付いたとか、一万フォロワーがいるとか、それで判断されちゃう。数字があると信頼感みたいなのは確かにありますよね。大多数が良いって言うものは良いんだろうって。でも、そう判断してる人の思考って停止してる状態ですよね。しかも、いまはフォロワーなんてお金で買えますし。

以前はSNSの数も必要以上に気にしていたりしました。そういうときに、今回、インタヴューの写真を撮ってくれて、Ms.Machineのアー写も撮ってくれてる零ちゃんに〈どれだけ多くフォローされているかではなくて、重要なのはその人が誰にフォローされているかだと思うんですよね〉って言われたことがあって。その価値観ってすごいなって思ったし、その言葉にだいぶ救われました。

だから、この曲は〈それって誰の価値観なの? 誰の定規で測ってんだ? 私の価値をお前の定規では測れねーよ〉みたいな意味合いかな。歌詞では〈Do not apparise me! 私を評価するな!〉と叫んでます。〈yardstick〉って〈定規〉って意味もありますけど、〈男性器〉って意味合いでも隠喩で取れるんです」

――では、最後の“3.11”はどんな曲ですか?

SAI「“3.11”は世代的なものが大きいかもしれないです。3.11、高校の卒業式の次の日だったんですよね。例えば、原発のこととか将来のこととかを考えたときに、〈この国、大丈夫なのかな?〉みたいな思いはずっとあって。〈この国、大丈夫なのかな?〉っていうのを3.11の後、みんなうまいこと忘れつつも、ごまかして日常を生きてる感じがすごくあったんですよね。それは大きかったですね。

それと、UAの誕生日なんです。彼女は3.11のあとに沖縄北部のヤンバルに移住したみたいで。地震があった当時もお風呂でUAを聞いてたんですよね。去年、任航が亡くなったときに辛くなって、一回東京を離れて宮古島にいた時期があったんです。私、Coccoとか二階堂ふみちゃんとかも好きなんですけど、表現者で飛び抜けてるというか、あるラインを超えてる人って沖縄出身の人が多いなと。あと、映画の『リリイ・シュシュのすべて』も好きなんですけど、そこでも沖縄に行くシーンがあったり。〈沖縄〉ってすごい……自分のなかでキーワードなんですよね」

――『S.L.D.R』のアートワークをイギリス在住の尾角典子さんに頼んだのは、どういう理由があったんですか?

SAI「BEAMSのZine展で尾角さんのZineを見て、調べたら、Bo Ningenと関わりがあるって知ったんです。世界観がその当時のMs.Machineで表現したかったイメージにぴったりで、この人に頼もうって思って、メールをして。〈こういう感じがいいです〉みたいな写真を共有しました」

――その写真はどういうものだったんですか?

SAI「孤島の写真とかです。私、もともとビョークが好きで、〈エアーウェイヴス〉っていうフェスの時期にあわせて行ったアイスランドとか、音楽とか美術とかの面で多く影響を受けているイギリスも、それから日本も島国ですし。Ms.Machineはどこにも属したくないっていうのもあったので、〈島国〉というのは当時の自分のなかでキーワードでしたね」

『S.L.D.R』アートワーク
 

――ところで、EPなのに2000円という値段設定は高めですよね。

SAI「何も疑問に思わなかったよね(笑)?」

RISAKO「後からすごい言われてね。何か意味があるんじゃないかって。でも、疑問はなかったんです。尾角さんのジャケットだけでもそれだけの価値があると思ったから」

MAKO「でも、4曲で2000円は高いよね」

RISAKO「全部で8分しかないし(笑)」

SAI「確かに、数値化したら高いよね。私はあんまり高いと思わなかったし、挑戦しようとかは考えてなかったんですけど」

 

パンクのライヴって感情が大事じゃないですか

――2月18日のSound Studio DOM 高円寺でのライヴでは日本語の歌詞の曲を演奏していましたよね。それはいままでにない方向性だったのでは?と思いました。

SAI「そうですね」

――そこにはバンドの意識の変化があったのでしょうか?

SAI「去年の12月に(小岩)BUSHBASHでブチ切れてライヴをやったことがあって、日本語で好きなことを言いまくったんです。それがみんな良かったって感じて」

MAKO「日本語ってダイレクトで良いな!みたいな」

SAI「その日は日本人のオーディエンスが多くて。〈日本語で言ったほうが絶対響くじゃん〉みたいな気持ちになって。パンクのライヴって感情が大事じゃないですか。だから、日本語のほうが直で響くなって思って」

――そのライヴから意識が変わったんですか?

SAI「そうですね。そのとき、〈日本もうやだ!〉みたいな思考に陥ってて……。男女平等について調べると、やっぱり北欧のことが出て来るんです。それで、単純思考なので、スウェーデン語を勉強し始めたんですよ(笑)。で、スウェーデンのラジオを聴いてたら、韓国のイエジ(Yaeji)の曲が流れてきて、〈なんだろう、この言語?〉って思ったんです」

――〈♪クゲアニヤー〉というコーラスが印象的な“Drink I'm Sippin On”ですね。

SAI「そうそう! 知らない言語ってこんな不思議に聞こえるんだって。Bo Ningenの歌詞も日本語なんです。海外の人が日本語の歌を聴いたときに、母国語だったら自然と意味が頭に入ってくるけど、歌詞の意味がわからなかったら音の一部としてヴォーカルの声を捉えるじゃないですか。響きが面白く聴こえるのかなあと思って。なので、もし海外で活動するとしたら、歌詞を日本語にしたほうがいいんじゃないかなって。

中学のときはずっと邦楽を聞いていて、もしかしたら洋楽よりも影響されているので、新しい日本語の曲は原点回帰したのもあるかもしれないですね」

――最後に、SAIさんがADHDであることをカミングアウトしていることについてお訊きしたいです。カミングアウトすることで、同じような境遇の人たちにポジティヴな影響を与えられるかもしれないと以前言っていたことが印象的です。

SAI「そうですね。例えば、〈うまくいってるあの人もADHDなんだ〉というのだと意味もあるのかもしれないんですけど。Ms.Machineは売れてないので、〈お前がカミングアウトすんのかよ〉という思いもあるんです(笑)」

MAKO「それは関係ないんじゃない?」

SAI「でも、このインタヴューはネットで誰でも見られるから……」

――それをメディアを通して発信するという。

SAI「そうですね。発信したかったです」

――例えば、ロンドンのラッパーのロイル・カーナーはADHDとディスレクシアがあって、ADHDの子どもたち向けの料理教室をやっているんです。そういうポジティヴな活動はすごく良いなと思います。流行りの言葉で言ったら〈エンパワメント〉したいというか、そういう気持ちもあるんですよね?

SAI「ありますね。私はADHDのグレーゾーンと診断されたんです。ADHD自体もあんまり認識されていないのに、しかもグレーゾーンって他人に伝えるのが難しくて。いちばん困るのは仕事場なんですけど、いきなり上司に〈私、ADHDなんです〉とか言えないし、面接で言ったら落とされる可能性は高くなると思うんですよね。だから、このインタヴューを通してやんわり認識してもらえたらと思ってます(笑)。

私はよく〈スローだよね〉って言われるんですけど、例えるなら、パソコンでずっとポップアップが出まくってる状況なんですよね。ポップアップって注意を引くじゃないですか。日常生活で多くの……他人からすればどうでもいいことが気になったりして、自分で処理できなくてスローになっているというか。だから、こう、パソコンがフリーズしている感じなんですよね。

それとか、日常生活や学校生活で空気が読めないとか、数字が苦手とか、時間を守れないとか、目に見えないものを想像するのが苦手だとか、場の空気を読んで臨機応変に動くとか……。あと、複数の作業を同時にするのが苦手なんですよね。

そういうミスの積み重ねとかで、〈SAIちゃんって何?〉〈仕事できないよね〉みたいな感じになるんです。だから、ずっと自己否定感がすごくて。そういうことが、パンクを好きになったことに繋がったのはあったかな。THE BLUE HEARTSの“ロクデナシ”とか大好きです」

――なるほど。でも、いまのMs.Machineの言葉は否定的なものが多いですよね。

SAI「多いですね、確かに」

――それがいつか、肯定に変わるのかなと思ってるのですが。SAIさんは『S.L.D.R』の特設サイトで「決まっているライブを終えたら“光”の音楽をやりたい」と書いていましたよね。

SAI「漠然とはありますね……。ライヴをやるときはネガティヴな感情でいなければいけないんですよ。そこまで持っていかなきゃいけないのってけっこう辛いんです」

――そういうSAIさんのネガティヴな感情にMAKOさんとRISAKOさんは巻き込まれたりはしないんですか?

RISAKO「SAIちゃんの感情に飲まれちゃうってことですか? それはないですね」

SAI「でも、〈ライヴやりたくない〉〈もう辞めたい〉とかよく言うからね」

RISAKO「〈このライヴはこなそう!〉〈ここまでは頑張ろう!〉って励ましたり」

SAI「〈わかったわかった。SAIの《ダメ》はわかっとるけえ〉って慰められたり」

MAKO&RISAKO「あははは(笑)!」

 


Live Information
〈Mikiki Pit Vol. 3〉

日時/会場:2018年4月21日(土) 東京・下北沢Basement Bar ※フロア・ライヴ
出演:KONCOS/Bullsxxt/JABBA DA FOOTBALL CLUB/Ms. Machine
開場/開演:11:00/11:30(予定)
終演:14:10頃(予定)
料金:前売り1,000円  ※80名限定
>>チケットのご予約は mikiki@tower.co.jp もしくは ticket@toos.co.jp まで
※各出演者での取り置きも受付中です

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