(左から)MAKO、SAI、RISAKO
 

彼女たちのTwitterアカウントのトップには、こんな言葉が掲げられている。〈Ms.Machineは東京の新しいfemale punk bandです〉。そんな大胆不敵な宣言に面食らう者もいれば、〈いったいどんなバンドなんだろう?〉と興味をそそられる者もいるだろう。

Ms.Machineは、SAI(ヴォーカル)、MAKO(ギター)、RISAKO(ベース)、YUSUKE(ドラムス、4月21日のライヴをもって脱退予定)からなる4人組で、2017年には〈FELINE〉というDIYイヴェントを二回主催している。その佇まいからは透徹した美意識が強く感じられるが、それは同時に、どこか近づきがたい雰囲気があるということでもある。ライヴでは、ハードコア・パンクとポスト・パンクとブラック・メタルが渾然一体となったようなショート・チューンを怒涛の勢いで観客に叩きつけ、ヴォーカルのSAIは大半の曲でたった一行の歌詞を繰り返し歌うだけ。短いセットを終えると、MCをするでもなく去っていく……。その刹那的なパフォーマンスは、観る者に強烈な印象を残す。

そんなMs.Machineが、尾角典子によるゴシックなアートワークも印象的なEP、『S.L.D.R』をリリースした。実質的なデビュー作を完成させ、4月21日(土)の〈Mikiki Pit〉への出演も控える彼女たちの実像は、しかし、いまだ謎に包まれたままだ。Ms.Machineとはいったいどんなバンドなのか? その疑問に答えを出すべく、深夜1時過ぎの渋谷で待ち合わせた私たちは、騒々しい居酒屋の小上がりで膝を突き合わせ、始発電車が走り始めるまで語り明かした。楽曲について、バンドのアティテュードについて、パーソナルな思いについて……。2018年のライオット・ガール、Ms.Machineが新しいシスターフッドをパンク・サウンドで定義する――SAI、MAKO、RISAKOの3人に行った以下のインタヴューは、そんな大仰なことを言ってみたくなるほどの希望や興奮に満ちている。

 

Ms.Machineは東京の新しいフィメール・パンク・バンドです

――まず、Ms.Machineが結成された経緯をお訊きしたいです。

SAI「2015年の……」

MAKO「7月です。武蔵美(武蔵野美術大学)のファッション・ショーにSAIがモデルで呼ばれてて、自分は手伝いで行ってたんです。SAIとは面識があったので、〈ひさしぶり〉みたいな感じで。SAIは当時、別のバンドでベースを弾いてたんですけど、〈ライヴが全然できないから、バンド組まない?〉って打ち上げのときに誘われたんです。私はギターをやってたことはあったけど、バンドはやったことがなくて、〈それでもいいなら〉って。そのときのドラマーも武蔵美の友だちでした。ほぼ勢いで組んだ感じですね」

――SAIさんはどうしてバンドをやりたかったんですか?

SAI「高校のときはガールズ・バンドをやってたんですけど、私以外仲が良くて、私だけ浮いてて。で、バンドで揉めたことがあって。ドラムの子が〈私だって目立ちたいのに、ヴォーカルの子ばっかり目立って何よ!〉って言い出して(笑)。渋谷のマックでみんな大号泣しながら(笑)」

一同「(笑)」

SAI「それで、〈ガールズ・バンド、めんどくせー! もう絶対やりたくない!!〉って思って(笑)。でも、やっぱりバンドをやりたいって思って、大学3年のときに早稲田のMMT(Modern Music Troop)に入ったんですけど、パンクをやりたい人がいなくて。

その頃、東高円寺のU.F.O. CLUBが、通ってた女子美(女子美術大学)に近かったので、よく行ってたんです。そこで、いまTAWINGSをやってるメンバーと知り合って、バンドを組んだんです。だけど、パンクっぽくないし、〈曲を作り込んでからライヴをやりたい〉って感じが合わなくて、辞めちゃいました」

2017年7月21日に開催された〈FELINE〉でのライヴ映像
 

――それがTAWINGSの前身バンドだったんですね。SAIさんはどうしてパンクをやりたかったんですか?

SAI「……好きだから、かなあ。私は学校で友だちがいなくて、バイト先でも仕事ができなくて、とにかく自分のことが肯定できなかったんですよ。それで、音楽もネガティヴなほうが共感できるんです。

普段の自分は本音が言えないんですよ。〈それはおかしいでしょ〉って言わなきゃいけない場面なのに、〈そうなんですか〉って飲み込んじゃう自分がいて。そういう日常レヴェルのフラストレーションが溜まりやすいんです。だから、パンク・バンドをやりたかったのは、本音をちゃんと言いたかったからかな」

――Ms.Machineはすごくコンセプチュアルなバンドに映るのですが、バンド名の由来はなんですか?

SAI「私の父親は単身赴任をしていて、ほぼ一緒に暮らしていなくて、母親が働きながら私のことを育ててくれたんですよね。私はADHDだし……タトゥーは入れるわ、ヌード・モデルはするわ、坊主にはなるわで、普通の子より大変だと思うんですが(笑)。だからずっと〈働く母親はすごい〉〈男の人に頼らない女の人はカッコいい〉という価値観で。女子美を進学先に選んだのも、女の人が作るアートが好きだからっていう理由でした。

あと、小説家の嶽本野ばらの作品とか、女の子が主人公のものが好きだったんですよ。彼の小説で『ミシン』っていうのがあって、ロック・バンドのヴォーカルの女の子の話なんですけど。〈Ms.Machine〉って略すと〈ミシン〉じゃないですか。それに、私の本名が〈彩衣〉っていうのもあって、服と関係したものにしたくて」

――なるほど。Twitterの〈Ms.Machineは東京の新しいfemale punk bandです〉という説明がわかりやすくていいなと思うのですが、ロール・モデルになったバンドはいますか?

SAI「私はクリスタル・キャッスルズが好きでした」

MAKO「あと、パーフェクト・プッシーだよね」

SAI「うん。〈女の人がヴォーカルの、カッコいい日本のパンク・バンドっていなくない?〉って話したよね。いないこともないんですけど、アンダーグラウンドすぎて、あんまりおしゃれじゃなくて(笑)」

――ははは(笑)。3人の音楽の好みはどうですか?

RISAKO「私とSAIちゃんは結構似てて、ポスト・パンクとかハードコアが好きなんです」

SAI「MAKOはもっと激しいメタルやハードコアが好きで」

RISAKO「それを組み合わせて良い感じにできないかなって。その中間点がパーフェクト・プッシーだったんです」

SAI「あと、椎名林檎の〈発育ステータス〉って期間限定のバンドがあって、田渕ひさ子がギターでトリプル・ベースなんですけど、あのダウナーな感じも好きでした」

パーフェクト・プッシーの2013年作『I Have Lost All Desire For Feeling』収録曲“I”
 

――結成からいまに至るまでの3年間を振り返ると、どうでしたか?

SAI「病んだ時期があって、バンドを辞めたくなったことが何回もあるんですよ。私はフリーのモデルをしてたんですけど、求められる像がたぶん〈パンクなSAI〉だったんですよね。実際にそれが求められていたのかわからないけど、必要以上にキャラクターを自分のなかで作りすぎてた。

でも、Ms.Machineでの自分やモデルをするときの自分、つまり表現するときの自分と、家やアルバイト先での自分はかなりキャラクターが違ってて。それがすごく辛くなったりしていました。キャラクターを演じるっていうか。攻撃的な自分ももちろん、自分の一面なんですけど」

――そこで齟齬や葛藤があった?

SAI「かなりありましたね。ライヴをやれない時期もありました」

 

どこにも属したくなくて、じゃあ自分でやろうって思ったんです

――Ms.Machineの自主企画の〈FELINE〉にはまだ行ったことがないのですが、どういうことをやろうとしているイヴェントなんですか?

SAI「ライヴには誘われることが多かったんですけど、〈これじゃない感〉がすごくて。それに、どこにも属したくなくて、じゃあ自分でやろうって思ったんです。〈シーンを作る〉みたいな大きなことは考えてないんですけど」

――イヴェント名の意味はなんですか?

SAI「〈ネコ科〉って意味です」

――調べると、〈ずるい〉〈しなやか〉〈人目を盗む〉という副次的な意味もあるようです。

SAI「そうなんですか? そこまでは考えてないです(笑)」

――ははは(笑)。猫が好きだから?

MAKO「猫が好き(笑)」

SAI「MAKOとRISAKOが猫、飼ってるから(笑)」

――〈FELINE〉の打ち出し方からは美意識や緩い連帯感を感じます。〈コミュニティー〉と言うと大袈裟ですが、そういう〈場〉を作ろうとしている意図はあるのでしょうか?

MAKO「企画を始めた当時、SAIが言ってたのは、生活してて生きづらいとか、居場所のなさをすごく感じてて、そういう人は他にもいると思うってことでしたね。私もそういう部分がありましたし。〈FELINE〉がそういう人たちの〈居場所〉じゃないですけど、そんな立ち位置になれたらいいみたいな」

――自主イヴェントの企画や運営をするのは大変だと思うのですが、〈FELINE〉を二回続けられたのは、手応えを感じていたからなのでしょうか?

SAI「一回目は(出演した)TAWINGSや菊地佑樹くんの力もあって、集客は良かったんです。私は普段Ms.Machineのライヴにあまり来ないような人たちに来てほしかったんですよね、おしゃれな若者とか(笑)」

MAKO「〈おしゃれな若者〉、いっぱい来てたね(笑)」

RISAKO「でも、私は一回目で〈やっぱり違うんだな〉と思って。そういう〈おしゃれな若者〉は、例えば、学校のカーストで言ったら、私たちと違うところにいるんじゃないかなって。そういう引け目っていうか、卑屈な気持ちになってきちゃって、ライヴでめちゃくちゃ暴れたんですよ。それで、最高のライヴができて(笑)。で、〈次はちょっと考えよう〉って思って、二回目に繋げた感じですね」

SAI「二回目はKLONNSとMOONSCAPEとスリーマンでやったんです。Ms.Machineの主張はフェミニズムとかで、音も激しいし、拒否反応を起こす人は最初でもうアウトだと思うんですよ。でも、GranuleのHIKARIくんとか、KLONNSのShu Oshimaくんとか、MOONSCAPEのHATEとかと話をしてて、ちゃんと話を聞いてくれて、信頼置けるなって思ったんです」

2017年10月17日に開催された〈FELINE II〉のトレーラー
 

 

〈女=弱い〉っていうイメージを払拭したい、同じ扱いになりたいっていう思いでこのバンドをやってます

――では、EP『S.L.D.R』について伺いますが、このタイトルの意味はなんでしょう?

SAI「……秘密です」

――そうですか(笑)。収録された4曲について1曲ずつお聞きしたいのですが、まず1曲目の“Break the current system”はどんな曲ですか? 歌詞の通り、男性優位な社会への批判? 

SAI「それはありましたね。『STUDIO VOICE』とかが好きなんですけど、カルチャー誌って男性誌コーナーにあるなって思ってて」

――女性のカルチャーはどこにあるんだ?と。

SAI「そう。女性誌コーナーに溢れてるモテ系の雑誌は私には〈?〉なので(笑)。あと、女子美でフェミニズムの授業を受けてたんですよね。バイト先のライヴハウスでも、上司は男の人しかいないなって思ってて。

音楽業界ってかなり男社会だと思うんです。あるバンドの人に〈このまま売れなかったらMs.Machineは辞めるべき。それか、お金持ちの男つかまえて結婚するとか(笑)〉って嘲笑気味に言われたことがあって。それとか、バンドの相談をするために、尊敬してたバンドの人とお茶したとき、〈ホテルへ行こう〉みたいなことを遠回しに言われたり。この人たち、私のことをミュージシャンやアーティストとして見てないんだなって、すごく苛立ちを感じました」

――なるほど……。最近は〈#MeToo〉の流れもありますし、そういったSAIさん、ひいてはMs.Machineの態度や主張というのは、すごくアクチュアルですし、ライオット・ガールの伝統にも連なっていると思います。ちなみに、男性主義的な価値観に対する違和感はRISAKOさんとMAKOさんも共有しているところなんですか?

RISAKO「私は半々な感じではあるんですけど、根底にはあるかな」

MAKO「ぶっちゃけ、〈フィメール〉って言い過ぎるのも嫌なんですよ。私は〈なんで(男女を)分けるの?〉みたいな感じなんです。そもそも女も男もずっと存在しているものですよね。確かに、ハードコアのライヴに女はあまりいないんですけど、それは〈女は興味ないんだろうな〉ぐらいの感じなんです。でも、同等にはなりたいっていうのはすごくあって。

〈女=弱い〉っていうイメージはほんとに嫌ですね。それを払拭したい、同じ扱いになりたいっていう思いで私はこのバンドをやってます。その辺はSAIが感じてることと一致するところがあるので、いま一緒にやってます」

――話は変わりますが、歌詞が一行だけというスタイルはいつ生まれたんですか? 

SAI「中学のとき、THE BLUE HEARTSとかサンボマスターとかが好きだったんです。そういう歌詞を聴いて、良い言葉ってもう言われ尽くされてて、いまの時代に私ができることってなんだろう?って考えて。それで、〈いまムカついてること、なんだろう?〉っていうことに焦点を当てて、こうなったんです。

言葉を言い過ぎると、二番煎じというか、薄まっちゃう感じがあって。あと、歌詞が1から10まであったとしたら、それを全部歌わなきゃっていうプレッシャーがあるなかでやりたくないんです。あと、単純に歌詞が覚えられないので」

一同「(笑)」

SAI「ライヴをやるときってすごく精神的に気合いを入れるんですけど、生々しい話をするなら、ライヴの前とか生理が止まるんですよね。けっこう精神的にくるんです。その精神状況にプラスして、書いた歌詞を全部正確に歌わなきゃみたいなプレッシャーを感じたくないなって。

あと、自分の歌詞に殺されたくないなと。基本的に書く歌詞が怒りとかネガティヴな感情なんですけど、言葉って本当に命を持ってるし、ライヴのときはその感情を思い出して、自分で作らなきゃいけない。だから、殺されそうになるんですよね。

ライヴってオーディエンスがいて、一回しかできないし、その場で勝負というか。オーディエンスとか共演相手とかによって場の空気も全然違うし。それで、毎回歌詞に書いてあることについて叫べるかっていうと、もちろん歌詞を書いたときといまの自分は違うので、叫べないときもあって」

Ms.Machine『S.L.D.R』トレーラー
 

――では、2曲目の“Cool meat”についてはどうでしょう?

SAI「私、中国の写真家の任航(レン・ハン)のモデルをやってたことがあったんです。彼が自殺したのが29歳のときだったんですね。自殺したことによって、伝説化されちゃうんだなって思ったんです。それで、このタイトルを決めました。〈meat〉は〈肉〉です……ニュースによれば、飛び降りだったんですよ。自殺したことによってメディアが騒ぎ立てて、業界の人や若者たちがアーティストの自殺をクールだと感じる……そういったことに対する皮肉でもあります」

――SAIさんが任航を知ったきっかけは何だったんですか?

SAI「女子美の後輩がFacebookに上げてて知りました。それで、VICEのインタヴューを観て、すごく好きになったんです。人間って、そもそもセックスして生まれるじゃないですか。なのに、セックスとか性ってタブーで隠されてますよね。彼は裸とか性器をポルノではなくてモチーフとして捉えて作品にしているんですけど、〈裸は恥ずべきものなのだろうか?〉ってそのインタヴューで言ってて。

あと、自分の国ではやりたいことができない、でも自分の国で表現しなきゃ意味ないということも言ってて。そういう考えが自分と近いような気がして、そこに惹かれたんだと思います。意思や疑問を持ってて、葛藤しながらそれを作品にしていた姿勢が好きです。

少し話が逸れますけど、多くの海外メディアやファッション・ブランドが彼の作品を取り扱っていましたが、そもそもアジア人の写真家とかモデルって、コーカソイドに比べたら圧倒的に欧米では少ないと思うんですよね。Instagramで海外のファッション・ブランドのアカウントとかをフォローしているんですけど、流れてくる写真が私から見るとすごい似たり寄ったりに見えてしまって。そんななかですごく……アジア人の鮮烈な色のヌード作品って、いままでに見たことがないという意味でインパクトが大きかったのは覚えています」

VICE Japanによる任航のドキュメンタリー「The Art of Taboo: 任航(レン・ハン)- Ren Hang」(2013年)
 

 

私の価値をお前の定規では測れねーよ

――3曲目の“Your little yardstick”についてはどうですか?

SAI「モデルをやってても、SNSの数字で見られるんです。私たちってそういう世代だと思うんですよね。例えば、一万いいねが付いたとか、一万フォロワーがいるとか、それで判断されちゃう。数字があると信頼感みたいなのは確かにありますよね。大多数が良いって言うものは良いんだろうって。でも、そう判断してる人の思考って停止してる状態ですよね。しかも、いまはフォロワーなんてお金で買えますし。

以前はSNSの数も必要以上に気にしていたりしました。そういうときに、今回、インタヴューの写真を撮ってくれて、Ms.Machineのアー写も撮ってくれてる零ちゃんに〈どれだけ多くフォローされているかではなくて、重要なのはその人が誰にフォローされているかだと思うんですよね〉って言われたことがあって。その価値観ってすごいなって思ったし、その言葉にだいぶ救われました。

だから、この曲は〈それって誰の価値観なの? 誰の定規で測ってんだ? 私の価値をお前の定規では測れねーよ〉みたいな意味合いかな。歌詞では〈Do not apparise me! 私を評価するな!〉と叫んでます。〈yardstick〉って〈定規〉って意味もありますけど、〈男性器〉って意味合いでも隠喩で取れるんです」

――では、最後の“3.11”はどんな曲ですか?

SAI「“3.11”は世代的なものが大きいかもしれないです。3.11、高校の卒業式の次の日だったんですよね。例えば、原発のこととか将来のこととかを考えたときに、〈この国、大丈夫なのかな?〉みたいな思いはずっとあって。〈この国、大丈夫なのかな?〉っていうのを3.11の後、みんなうまいこと忘れつつも、ごまかして日常を生きてる感じがすごくあったんですよね。それは大きかったですね。

それと、UAの誕生日なんです。彼女は3.11のあとに沖縄北部のヤンバルに移住したみたいで。地震があった当時もお風呂でUAを聞いてたんですよね。去年、任航が亡くなったときに辛くなって、一回東京を離れて宮古島にいた時期があったんです。私、Coccoとか二階堂ふみちゃんとかも好きなんですけど、表現者で飛び抜けてるというか、あるラインを超えてる人って沖縄出身の人が多いなと。あと、映画の『リリイ・シュシュのすべて』も好きなんですけど、そこでも沖縄に行くシーンがあったり。〈沖縄〉ってすごい……自分のなかでキーワードなんですよね」

――『S.L.D.R』のアートワークをイギリス在住の尾角典子さんに頼んだのは、どういう理由があったんですか?

SAI「BEAMSのZine展で尾角さんのZineを見て、調べたら、Bo Ningenと関わりがあるって知ったんです。世界観がその当時のMs.Machineで表現したかったイメージにぴったりで、この人に頼もうって思って、メールをして。〈こういう感じがいいです〉みたいな写真を共有しました」

――その写真はどういうものだったんですか?

SAI「孤島の写真とかです。私、もともとビョークが好きで、〈エアーウェイヴス〉っていうフェスの時期にあわせて行ったアイスランドとか、音楽とか美術とかの面で多く影響を受けているイギリスも、それから日本も島国ですし。Ms.Machineはどこにも属したくないっていうのもあったので、〈島国〉というのは当時の自分のなかでキーワードでしたね」

『S.L.D.R』アートワーク
 

――ところで、EPなのに2000円という値段設定は高めですよね。

SAI「何も疑問に思わなかったよね(笑)?」

RISAKO「後からすごい言われてね。何か意味があるんじゃないかって。でも、疑問はなかったんです。尾角さんのジャケットだけでもそれだけの価値があると思ったから」

MAKO「でも、4曲で2000円は高いよね」

RISAKO「全部で8分しかないし(笑)」

SAI「確かに、数値化したら高いよね。私はあんまり高いと思わなかったし、挑戦しようとかは考えてなかったんですけど」

 

パンクのライヴって感情が大事じゃないですか

――2月18日のSound Studio DOM 高円寺でのライヴでは日本語の歌詞の曲を演奏していましたよね。それはいままでにない方向性だったのでは?と思いました。

SAI「そうですね」

――そこにはバンドの意識の変化があったのでしょうか?

SAI「去年の12月に(小岩)BUSHBASHでブチ切れてライヴをやったことがあって、日本語で好きなことを言いまくったんです。それがみんな良かったって感じて」

MAKO「日本語ってダイレクトで良いな!みたいな」

SAI「その日は日本人のオーディエンスが多くて。〈日本語で言ったほうが絶対響くじゃん〉みたいな気持ちになって。パンクのライヴって感情が大事じゃないですか。だから、日本語のほうが直で響くなって思って」

――そのライヴから意識が変わったんですか?

SAI「そうですね。そのとき、〈日本もうやだ!〉みたいな思考に陥ってて……。男女平等について調べると、やっぱり北欧のことが出て来るんです。それで、単純思考なので、スウェーデン語を勉強し始めたんですよ(笑)。で、スウェーデンのラジオを聴いてたら、韓国のイエジ(Yaeji)の曲が流れてきて、〈なんだろう、この言語?〉って思ったんです」

――〈♪クゲアニヤー〉というコーラスが印象的な“Drink I'm Sippin On”ですね。

SAI「そうそう! 知らない言語ってこんな不思議に聞こえるんだって。Bo Ningenの歌詞も日本語なんです。海外の人が日本語の歌を聴いたときに、母国語だったら自然と意味が頭に入ってくるけど、歌詞の意味がわからなかったら音の一部としてヴォーカルの声を捉えるじゃないですか。響きが面白く聴こえるのかなあと思って。なので、もし海外で活動するとしたら、歌詞を日本語にしたほうがいいんじゃないかなって。

中学のときはずっと邦楽を聞いていて、もしかしたら洋楽よりも影響されているので、新しい日本語の曲は原点回帰したのもあるかもしれないですね」

――最後に、SAIさんがADHDであることをカミングアウトしていることについてお訊きしたいです。カミングアウトすることで、同じような境遇の人たちにポジティヴな影響を与えられるかもしれないと以前言っていたことが印象的です。

SAI「そうですね。例えば、〈うまくいってるあの人もADHDなんだ〉というのだと意味もあるのかもしれないんですけど。Ms.Machineは売れてないので、〈お前がカミングアウトすんのかよ〉という思いもあるんです(笑)」

MAKO「それは関係ないんじゃない?」

SAI「でも、このインタヴューはネットで誰でも見られるから……」

――それをメディアを通して発信するという。

SAI「そうですね。発信したかったです」

――例えば、ロンドンのラッパーのロイル・カーナーはADHDとディスレクシアがあって、ADHDの子どもたち向けの料理教室をやっているんです。そういうポジティヴな活動はすごく良いなと思います。流行りの言葉で言ったら〈エンパワメント〉したいというか、そういう気持ちもあるんですよね?

SAI「ありますね。私はADHDのグレーゾーンと診断されたんです。ADHD自体もあんまり認識されていないのに、しかもグレーゾーンって他人に伝えるのが難しくて。いちばん困るのは仕事場なんですけど、いきなり上司に〈私、ADHDなんです〉とか言えないし、面接で言ったら落とされる可能性は高くなると思うんですよね。だから、このインタヴューを通してやんわり認識してもらえたらと思ってます(笑)。

私はよく〈スローだよね〉って言われるんですけど、例えるなら、パソコンでずっとポップアップが出まくってる状況なんですよね。ポップアップって注意を引くじゃないですか。日常生活で多くの……他人からすればどうでもいいことが気になったりして、自分で処理できなくてスローになっているというか。だから、こう、パソコンがフリーズしている感じなんですよね。

それとか、日常生活や学校生活で空気が読めないとか、数字が苦手とか、時間を守れないとか、目に見えないものを想像するのが苦手だとか、場の空気を読んで臨機応変に動くとか……。あと、複数の作業を同時にするのが苦手なんですよね。

そういうミスの積み重ねとかで、〈SAIちゃんって何?〉〈仕事できないよね〉みたいな感じになるんです。だから、ずっと自己否定感がすごくて。そういうことが、パンクを好きになったことに繋がったのはあったかな。THE BLUE HEARTSの“ロクデナシ”とか大好きです」

――なるほど。でも、いまのMs.Machineの言葉は否定的なものが多いですよね。

SAI「多いですね、確かに」

――それがいつか、肯定に変わるのかなと思ってるのですが。SAIさんは『S.L.D.R』の特設サイトで「決まっているライブを終えたら“光”の音楽をやりたい」と書いていましたよね。

SAI「漠然とはありますね……。ライヴをやるときはネガティヴな感情でいなければいけないんですよ。そこまで持っていかなきゃいけないのってけっこう辛いんです」

――そういうSAIさんのネガティヴな感情にMAKOさんとRISAKOさんは巻き込まれたりはしないんですか?

RISAKO「SAIちゃんの感情に飲まれちゃうってことですか? それはないですね」

SAI「でも、〈ライヴやりたくない〉〈もう辞めたい〉とかよく言うからね」

RISAKO「〈このライヴはこなそう!〉〈ここまでは頑張ろう!〉って励ましたり」

SAI「〈わかったわかった。SAIの《ダメ》はわかっとるけえ〉って慰められたり」

MAKO&RISAKO「あははは(笑)!」

 


Live Information
〈Mikiki Pit Vol. 3〉

日時/会場:2018年4月21日(土) 東京・下北沢Basement Bar ※フロア・ライヴ
出演:KONCOS/Bullsxxt/JABBA DA FOOTBALL CLUB/Ms. Machine
開場/開演:11:00/11:30(予定)
終演:14:10頃(予定)
料金:前売り1,000円  ※80名限定
>>チケットのご予約は mikiki@tower.co.jp もしくは ticket@toos.co.jp まで
※各出演者での取り置きも受付中です