Photo by Brigitte LaCombe

映画界の奇才ギレルモ・デル・トロ監督の話題作
「シェイプ・オブ・ウォーター」~音楽のテーマは愛の表現

 「シェイプ・オブ・ウォーター」にて、第90回アカデミー作曲賞を受賞したアレクサンドル・デスプラ。同賞には既に6回ノミネートされ、「グランド・ブダペスト・ホテル」に続き2度目の受賞となった彼に、この作品の音楽について伺った。

――映画界の鬼才と名高いギレルモ・デル・トロ監督ですが、第一印象はどう感じましたか?

「暖かく、寛大で情熱的な所もあれば、知的で、物知りな所もある。何よりとても楽しい人ですね」

――「シェイプ・オブ・ウォーター」を見た最初の印象について教えてください。

 「完璧なカメラの動き、プロダクションと映像の美しさ、シャープな編集、そして何よりも素晴らしい演技、全てがぴったりと調和していて、映画として稀なまでの完成度だと感じ、非常に感銘を受けました」

――スコアを作るにあたり、デル・トロ監督とはどのような作業工程で進行させていきましたか?

 「私一人で取り組むこともありましたが、時折監督がスタジオに現れては、共に試行錯誤し、調整していきました。音楽的意見の相違は全くなく、スムーズに進行しました」

――水中で始まる、オープニング・テーマはどのようなアイデアで作ったのでしょうか。

 「観客に向けて映画の扉を開くシーンなので、他の曲よりも気を使いましたね。また、スコア全体の核となるものにしました。暖かい水の中にいる感覚、そして叶わぬ恋に身を焦がす情熱を同時に表現したのです。音階やアルペジオが何度も上下することで波形を描き、愛する人に想いが届かない苦しみを音に込めました」

――テーマで聞こえる口笛の意図について教えてください。

 「バス停でイライザが口笛を吹くシーンから着想を得て、監督と私は音楽に組み込むことにしました。そして結局私が口笛を吹くことになりました」

――アコーディオンの使い方もテーマに独特の彩りを加えますね。

 「監督からは、何か楽器でフランス風のものを使えないかと頼まれました。〈不思議な生き物〉は南米出身という設定なので、南米由来のタンゴで使用されるバンドネオンの音色を入れようと思っていました。最終的に、フランスのアコーディオニスト(偉大なプレイヤー、ミレアム・ラファルグ Myriam Lafargue)を起用しつつ、タンゴのバンドネオンの音色とフレージングで演奏することを依頼しました」

――今作品において重要な要素、コンセプトはありますか。

 「愛を表現すること、それに尽きます。そこには官能的な情熱があり、同時に二人によって知性が共有されていることも示さねばならない。深い喜びとメランコリーを織り交ぜた感情を示そうと思いました」

――スコアを作曲していく上で、心がけたことはなんでしょう?

 「画面に出てこないものを、どうやって音楽で表現するか、映画の最も深いところにある魂を探っていくことです」

――影響を受けた音楽、尊敬する作曲家などについて教えてください。

 「ラヴェル、ドビュッシー、そして武満徹、ジェリー・ゴールドスミス、ジョン・ウィリアムズ、フランツ・ワックスマン、マノス・ハジダキス、アレックス・ノース、ジョルジュ・ドロリュー、ニーノ・ロタ、マイルス・デイヴィス、チャールズ・ミンガス、ケニー・バレル、キャノンボール・アダレイ、クインシー・ジョーンズなどです」

――今日好きな作曲家はいますか?

 「坂本龍一には大きな影響を受けました。彼は独特のエレガンス、洗練、そして叙情性を持っていますね。日本出身の久石譲も大好きです」

――ご自身の中で、国際的なキャリアを築くきっかけとなった作品はどれでしょう?

 「ジャック・オーディアールの『リード・マイ・リップス』(2001年)とピーター・ウェーバーの『真珠の耳飾りの少女』(2003年)が大きいですね。ただ、決して満足することはなく、次のステップに進んでいくつもりです」

 


アレクサンドル・デスプラ(Alexandre Desplat)
61年8月23日生まれ、映画音楽作曲家。パリ出身。2005年に「真夜中のピアニスト」でベルリン国際映画祭銀熊賞&セザール賞を受賞。翌年の「クィーン」以降、「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」「英国王のスピーチ」などでアカデミーにノミネートされ、2014年の「グランド・ブダペスト・ホテル」でアカデミー初受賞。同年の「GODZILLA ゴジラ」の音楽にも携わっている。

 


CINEMA INFORMATION

映画「シェイプ・オブ・ウォーター」
監督・脚本・製作・原案:ギレルモ・デル・トロ
音楽:アレクサンドル・デスプラ
出演:サリー・ホーキンス/マイケル・シャノン/リチャード・ジェンキンス/ダグ・ジョーンズ/マイケル・スタールバーグほか
配給:20世紀フォックス(2017年 アメリカ 124分)
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