INTERVIEW

カマシ・ワシントン『Heaven And Earth』 ジャズの可能性を更新し続ける新世代ジャズの象徴

Photo by Durimel

ウエストコースト・ゲット・ダウンの面々に加え、ゲストだけで50人!? ジャズの可能性を更新し続ける新世代ジャズの象徴

 60~70年代のスピリチュアル・ジャズを現代風にアップデートした『ジ・エピック』で話題を集めたLAのサックス奏者、カマシ・ワシントン。待望のセカンド・アルバム『ヘヴン・アンド・アース』は2時間半にも及ぶ大作。映画『ドラゴン 怒りの鉄拳』のテーマ《フィスト・オブ・フューリー》やフレディ・ハバードの《ハブトーンズ》などを収録している。 “ヘヴン盤”と“アース盤”、それぞれのタイトルがコンセプトを象徴しているとカマシは言う。

KAMASI WASHINGTON Heaven And Earth Young Turks/BEAT(2018)

 「〈ヘヴン〉〈アース〉というタイトルが出てきたのは作業の半ば頃。今回のアルバムのコンセプトはツアー先でバンドの連中といつも話しているような内容だったんだ。違う世界を求めたいと信じれば本当に世の中が変わっていくんじゃないかとか、そんなことをみんなで話し合っていた。〈ヘヴン〉〈アース〉は自分の経験を踏まえた現実と、イマジネーションの世界という、人間の二面性を表している。苦しみなくして夢は叶わないし、現実と夢の両方が必要なんだよなっていうことをこのアルバムで表現したいと思ったんだ」

 大人数によるアンサンブルは分厚く、コーラス隊とストリングスが気宇壮大な音世界を構築している。関わった人数は総勢70名にも及ぶという。ソロ作をリリースしてもいるロナルド・ブルーナー・ジュニア、ライアン・ポーター、マイルス・モズレー、ブランドン・コールマンの他、サンダーキャット、テラス・マーティンも参加したオールスター編成だ。

 「曲を作りながらオーケストラ感があるなと思ったんだよね。ゲストだけで50人くらいいるよ。『ジ・エピック』はストリングスだけだったけど、今回は木管も金管もクワイアも入っているし、パーカッションも増やした。《ウィー・アー・ザ・ワールド》が録音されたLAのスタジオでレコーディングをやったんだけど、すごい音響がよくてやりやすかったよ」

 アンサンブルを重視するカマシのスタンスは、かつてビッグ・バンドに在籍していたことも関係しているのだろうか?

 「アンサンブルの楽しさみたいなものを教えてくれたのはビッグ・バンドだったね。ジェラルド・ウィルソンが僕のいちばんの先生で、コンポーザーとして音楽を主役にしなきゃいけないよって言われた。やっぱり、まず音楽ありきっていうのが大事で、自分はあくまでもその音楽の一部なんだ。音楽を道具にして自分を持ち上げるのは好きじゃない。その音楽がなるべき姿に持って行ってあげるのが自分の役割なんだ。いろんなバンドを経験してきたから、その場その場で必要に応じて自分がやるべきことをやるっていうことには慣れているよ」

 ところで、LAのミュージシャンはNYなどに較べて、CMや映画の音楽など様々な仕事をフレキシブルにこなさないとやっていけない、と聞いたことがある。それに対するカマシの見解はこうだ。

 「LAは、ミュージシャンがジャンルを問わず一緒に活動することも多いし、自分の専門分野の外で仕事をしなきゃいけないこともよくある。なんでもできる人を尊敬する傾向があるよね。例えばLAのジャズ・クラブに行くと演奏しているのがジャズじゃなくてゴスペル系の人ばっかりだったりする。あと、スヌープ・ドッグと一緒に演奏したことがあるんだけど、ヒップホップの仕事なのにみんなジャズ・ミュージシャンばかりだったりする。ジャンルを超えて仲間同士がリスペクトし合っているというのは言えるね。こっちがやりたいことを押し付けるんじゃなくて、求められることにどう応えられるかが問われると思う。そういう意味ではスキルがあっても、それをあえて使わないっていう美学がある。 どれだけ速く弾けるかとか、どれだけ難しいフレーズを叩けるかよりも、音楽に対する理解があって、音楽をあるべき姿にプレイできる人がいちばん尊敬されるところがあるんだ。俺もそういう土壌の上で育ったし、新作にもそういうスタンスは反映されていると思うよ」

 


Kamasi Washington (カマシ・ワシントン)
1981年2月18日生まれ、米・ロサンゼルス出身のジャズ・サックス奏者。テナーサックス奏者のリッキー・ワシントン、フルート奏者の母という音楽一家で育つ。13歳からサックスを始め、マルチスクール・ジャズバンドやヤング・ジャズ・ジャイアンツなどのバンドに参加。ウェイン・ショーター、ハービー・ハンコック、ジェラルド・ウィルソン、ローリン・ヒル、ケンドリック・ラマーなどジャンルを越えて様々なアーティストと共演。新世代ジャズ・シーンを牽引するリーダー的存在。

 


LIVE INFORMATION

SUMMER SONIC 2018
○8 /18  ( 土) BEACH STAGE
www.summersonic.com/2018/

単独公演
○8 /19(日)16:30開演/19:30開演  ビルボード・ライブ東京
○8 /20(月)19:00開演/21:30開演 ビルボード・ライブ東京
www.billboard-live.com/
○8 /21(火)18:30 開場/19:30 開演   大阪・BIGCAT
www.creativeman.co.jp/