COLUMN

ホルガー・シューカイ『シネマ』 /デヴィッド・シルヴィアン、ホルガー・シューカイ『プライト&プリモニション+フラクス&ミュータビリティ』

R.I.P. RADIO WAVE SURFER

HOLGER CZUKAY Cinema P-VINE(2018)

DAVID SYLVIAN,HOLGER CZUKAY Plight & Premonition Flux & Mutability P-VINE(2018)

 スネークマンショーの2枚目のアルバムA面の最後に収録された、ホルガー・シューカイの《ペルシアン・ラブ》は、それまでの時間を帳消しにするくらい、いま聴いていたものがなんだったのかと呆然とさせられるくらいに衝撃的なものだった。サンプリング以前の時代、短波ラジオで受信した各種民族音楽とイランの女性ヴォーカルが、演奏と絶妙なバランスでコラージュされたテープ音楽。すでにビートルズは聴いていた、というよりはビートルズのサイケ時代、テープの逆回転やコラージュという手法を知ってからまだ間もない頃だった。だからこそ、現在的なその手法のあざやかさに、それこそ音楽の魔法を感じた至福の時間だったと言ってよい。以来、ホルガー・シューカイは私の非常に気になるアーティストになったのだった。追ってメンバーだったカンのアルバムも日本盤がリリースされ、ホルガーのアルバムや彼をリスペクトするミュージシャンとの共演盤なども次々とリリースされた。80年代の後半だった。

 それから、サンプリング、ハウス、テクノ、エレクトロニカ、クラブ・ミュージックの時代にもホルガーはそうした手法の先駆者としてリスペクトされ、自身も同時代の音楽シーンに介入していく。つねにアクチュアルな、時代とともに自身をアップデートすることのできる稀有な音楽家だった。ホルガーは、まさに電波に乗って、音をすくい上げる、そして、それが編集されているということがわからないようにエディットすることが重要なのだと言っていた。それはいつもマジカルな瞬間を感じさせてくれるのだった。その後いろいろなアーティストに会うことができたけれど、結局、手紙とe-mailのやりとりをしたくらいでホルガーには直接会うことはできなかった。

 ホルガーが残した魔法が5枚のCDと1枚のDVDからなるBOXセットには、そのエッセンスがたっぷりと収められている。また、デヴィッド・シルヴィアンとのアルバム2枚も新たにセットになって再発される。ソロになってからホルガーとの関係を深めたシルヴィアンとシューカイの即興演奏とその編集作業によって制作されたマジカルな時間の流れがLP各面一曲ずつ収められた、こちらも素晴らしい作品である。

関連アーティスト