INTERVIEW

なかの綾『ダブルゲーム』 盛り場のジャズ歌謡とファンキーなリズム&ブルース路線、A/B面で表現した2つの顔を語る!

なかの綾『ダブルゲーム』 盛り場のジャズ歌謡とファンキーなリズム&ブルース路線、A/B面で表現した2つの顔を語る!

昭和歌謡の〈艶めき〉を現代ポップスのなかに還元してきた彼女の新作は、ルーツを深めつつ新たな境地へ——2つの顔があったって、いいでしょ?

 なかの綾のニュー・アルバム、題名は『Double Game』。その心は〈女は二度生まれる〉ってことか。女は男をたのしませ、男は女を作りかえる……なんて呟きつつ確認すると、アルバムは前半と後半で色合いが異なる構成が取られていることがわかった。アナログ盤のようにA/B面という設定を用意し、なかの綾の二面性を浮かび上がらせるというコンセプトは、企画監修を務めた渡辺祐が立てたようだ。A面にあたる前半〈Butterfly Side〉は、従来路線のジャズ歌謡大会。女性ばかりのビッグバンド、たをやめオルケスタの豪奢な演奏をバックに、華麗なるグランドキャバレーの如き世界が展開する。一方、B面〈Glamour Side〉は、シングル“ギリギリの関係”で示された新機軸のリズム&ブルース歌謡スタイルを提示。こちらのファンキー路線を仕切るのは、ジャパニーズ・ソウル界屈指のプロデューサー、SWING-Oだ。

なかの綾 Double Game HIGH CONTRAST/ヴィヴィド(2018)

 「満を持してって感じはありますね。映画『ブルース・ブラザーズ』に衝撃を受け、アレサ・フランクリンみたいになりたい!って言っていた子ども時代。よくわからないけどアメリカの音楽ってカッコいい!って昔からずっと思っていた。だから和田アキ子さんや朱里エイコさんにすごく共感するところがあったんです」。

 前作『エメラルド・イン・パラダイス』の“エピソード1”に続く杉真理&田口俊コンビ書き下ろしの“スナック鯉~エピソード2”、武藤昭平が提供した先行シングル“アサミのブルース”などが並ぶA面。場末の酒場に棲息していそうな薄幸キャラは今回もバッチリ板についている。片やB面のキャラ設定は、夜遊び大好きそうな肉食系。ガツガツしまくりだ。

 「歌入れで苦労したのは気持ちが入りすぎないようにすること。少し自制しながら歌うのがこれまで私の売りだったと思うんですが、急にパカッと開いちゃったら、暑苦しい!ってなるかもしれないし、B面は歌い上げすぎないギリギリでとどめるように心がけました。逆にA面においてはタガを外してみることを意識しました。例えば面影ラッキーホールのaCKyさんのヒドイ歌詞が最高な“あたしはあんたのクスリじゃない”。彼から直接歌唱指導を受けたんですが、口角に泡を溜めながら歌いました。ブースであんなに暴れたのは初めてかも」。

 自分自身をさらに開陳しつつ、演技のうえでより高度なものを試す作業。両面をすり合わせた結果、以前よりも女としての強さが際立って見えるのだから何と言うべきか。さて、作家、演奏陣を含めてゲストが多彩なのが本作の特徴だが、なかでもアイク&ティナ・ターナー版を下敷きにした“Proud Mary”における佐藤善雄(ラッツ&スター)の歌が最高。バリー・ホワイトばりのバリトン・ヴォイスで場の空気を一変させている。

 「佐藤善雄さんじゃなきゃイヤです!ってゴネました(笑)。この曲を……ってお願いしたら、〈これ、30年前にマーチンのお姉ちゃん(鈴木聖美)と歌ったんだよな〉って言われ、エ~ッ恐れ多い!って(笑)。佐藤さんがいらっしゃるだけで空気がパリッとするんです。大御所感がすごいですよね」。

 でも、今作で彼女が纏うオーラも相当なものだ。以前に少し見られた背伸びしている様子は一切なく、角が取れていい具合に丸みを帯びてきた歌声に触れられ、とにかく大作を聴いたという満腹感が味わえる『Double Game』。ただしそれは胃もたれするような濃厚さではない。滑らかで耳当たりの良さを誇る楽曲が揃っているので、グイグイと何杯もいけてしまうのだ。

 「昔よく先輩から、そんなに欲張らないでひとつに専念しなさい、でないと器用貧乏になるぞ、って注意されたんですけど、貧乏はいやだけど、器用になりたい!って思っていた(笑)。今回は、あれもこれも好き!って私の性格がうまく反映された作品になったのかも。いろんな冒険をしているので、賛否両論があって然るべき。なので、ご意見お待ちしてます!」。

なかの綾の作品。

 

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