INTERVIEW

カニサレス『洞窟の神話』 機は熟した! 新しいフラメンコを探求し続けるカニサレス、9月には日本ツアーも

カニサレス『洞窟の神話』 機は熟した! 新しいフラメンコを探求し続けるカニサレス、9月には日本ツアーも

機は熟した! 新しいフラメンコを探求し続けるカニサレス

 アルベニス、グラナドス、ファリャなどなど、ここ数年はクラシック系作曲家たちの作品を録音してきた人気フラメンコ・ギタリストのカニサレスだが、ニュー・アルバム『洞窟の神話』は久しぶりに正面きってのフラメンコ作品(2010年の『Cuerdas Del Alma 魂のストリング』以来か)となった。〈機は熟した〉、の観あり。

JUAN MANUEL CANIZARES 洞窟の神話 PLANKTON(2018)

 「まさにそれ。機が熟し、新しいカニサレスというものを自分で構築しなくてはならないという使命感に駆られた、そんな感じだ。たとえば、私が最初のソロ・アルバム『イマンとルナの夜(Noches de Iman y Luna)』を出したのは97年、32才の時だった。そこでは、私がフラメンコ・ギターを始めた時からそれまでに吸収した全てを放出した。コンセプトがどうこうというよりも、持っているもの全てを吐き出した感じの作品だ。そして『魂のストリング』では、いろんな人に受け入れてもらうための音楽を目指したと言っていい。それはそれで、一つの成功を収めたと自分では思っている。でも、50才と年齢的にも成熟し、多くの人たちに気に入ってもらえるような作品にしなくてもいいんだなと思えるようになった。誰にも気に入ってもらえなかったとしても、それはそれでいい、自分が納得いくものを作れれば満足だ、と。今作では、様々な不安が全て消えて、自分のやりたいことを完全にやれる環境になれたことが一番大きかったと思う」

 やりたいようにやった……それはつまり、ここ数年のクラシック音楽研究に基づく自分独自のフラメンコを作った、ということだろう。

 「フラメンコというのは、比較的若い音楽だ。今の形のようなフラメンコが認識されるようになって200年ぐらいだ。だからこそ、まだ多くの可能性を秘めているわけだけど、クラシック音楽とは違い、口承伝統文化だったので、その範囲の中での小さな成長はあっても、外部のセオリーなどを取り込んだ成長はほとんどなかった。そこに私は大きな可能性を見出しているんだ。たとえば、クラシック音楽との比較で見ると、フラメンコには転調がないけど、私はこの新作の自作曲では転調をたくさん用いた。フラメンコの伝統を損なわないようにしつつ新しい要素を取り込んでゆくことが自分の役割なんじゃないかと思っているんだ」

 個人的には、音色やハーモニーがこれまでのフラメンコ作品と決定的に違うと感じ、そこが本作の最も重要なポイントだとも感じた。

 「自分が目指していたものをそのまま受け取ってもらえたことは、作り手としてはすごくうれしい。ハーモニーに関してはすごくこだわりがあり、もっと手を加えてゆきたいと思ってきたし、実際これはそこに全精力を注ぎこんだ作品でもあるんだ」

 ところでカニサレスは昨年、アラゴン地方の伝統舞踊/音楽ホタとフラメンコの関係を検証したカルロス・サウラ監督の音楽ドキュメンタリー「J:ビヨンド・フラメンコ」に出演した。フラメンコには、ホタだけでなくスペイン各地の様々な伝統音楽、民俗舞踊の要素が流れ込んでいるわけだが、フラメンコをずっと探求してきたカニサレスとしては、クラシックの次は民俗音楽についても本格的に研究すべきなのでは?

 「おっしゃるとおり。スペインの民俗音楽については非常に興味がある。フェリペ・ペドレル・サバテー(1841-1922)という音楽学者がスペイン全土を回って民俗音楽を調査、採集し、4冊の本にまとめた。実は今、その本で懸命に勉強しているところなんだ。それがスペインのあらゆる音楽の原動力になっていると思うから」

 9月には日本ツアーがおこなわれるが、それ以外の当面の活動予定は?

 「まず、来年はホアキン・ロドリーゴの没後20周年なので、今、それに向けてロドリーゴの3部作の制作に取り組んでいるところだ。あと、《ギターとオーケストラのための協奏曲》も作曲中だ。これは、バルセロナ交響楽団から委嘱されたもので、タイトルは《地中海協奏曲》になると思う。今年中に完成させ、来年は大野和士さん指揮のバルセロナ交響楽団と一緒に世界ツアーをする計画がある。もちろん、日本での公演も予定に入っているよ」

 


LIVE INFORMATION

スペイン日本外交関係樹立150周年
カニサレス・フラメンコ・クインテット 来日公演2018

○9/16(日)16:00開演
会場:福島 いわき芸術文化交流館アリオス 中劇場
○9/17(月・祝)14:00開演
会場:山形 テルサ
○9/20(木)19:00開演
会場:兵庫 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
○9/22(土)15:00開演
会場:静岡音楽館 AOI
○9/23(日・祝)16:00開演
会場:神奈川 よこすか芸術劇場
○9/24(月・休)15:00開演
会場:東京 三鷹市公会堂 光のホール
○9/26(水)19:00開演
会場:宮城 えずこホール
○9/28(金)19:00開演
会場:千葉 船橋市民文化ホール
○9/29(土)16:00開演
会場:東京 めぐろパーシモンホール 大ホール
○9/30(日)15:00開演
会場:所沢市民文化センターミューズ マーキーホール

http://plankton.co.jp/canizares/

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