INTERVIEW

フローリアン・ノアック『ある旅人のアルバム』 知られざる作品の編曲を通し、ピアノ音楽のレパートリーの空白地帯を埋めていきたい。

©Danilo Floreani

知られざる作品の編曲を通し、ピアノ音楽のレパートリーの空白地帯を埋めていきたい。

 ブリュッセル生まれのフローリアン・ノアックはとても個性的なピアニストである。12歳からエリーザベト王妃音楽大学の天才児養成コースで学び、当時から知られざる作品に興味を抱いてきた。やがて国際コンクールに参加するようになり、20のコンクールで入賞を重ねる。『ある旅人のアルバム』はノアックの特質である超絶技巧をものともしない演奏、編曲家としての顔などが凝縮、世界初録音の作品も含まれている。

FLORIAN NOACK ある旅人のアルバム La Dolce Volta (2018)

 「録音に際し、自分がいまできることは何か、いかにしたら自己表現できるかと考え、作曲家が民俗音楽から霊感を得た作品に絞りました。長年あらゆるリサーチを行い、埋もれた作品を見出し、オーケストラのスコアを研究し、編曲を加えてピアノで表現することが可能な選曲をしました。聴き手が音の旅を体験できるよう、各地の舞曲の特徴を生かしたつもりです」

 ノアックのピアノはいずれの作品もその奥に静寂が潜み、音と音の間が特有で、弱音が心に染みる。

 「アルメニア出身のピアニストである私の妻を通して、コミタスの音楽を知りました。彼の作品は古典的、伝統的な楽器や奏法を重視し、非常にシンプル。舞曲をそのままピアノに置き換えた感じです。こうした世に知られていない作品で、弾きたいものは山ほどあります。いずれは日本を含むアジアの舞曲も研究したい。私は幼いころから編曲に興味を抱き、いまではその方面で少しは名が知られるようになりました」

 少しどころかベレゾフスキー、カツァリス、バシキーロフら多くのピアニストから編曲依頼が舞い込む。

 「編曲は長い時間と忍耐を要します。原曲のよさを生かし、舞曲やオーケストラ作品をピアノに置き換え、さらにいい作品にしなければなりません。でも、その過程はとても楽しい。ただし、ブラームスの交響曲はピアノ作品に編曲するのは難しいのです。その見極めが必要ですね。リストもすばらしい編曲を数多く残していますが、それらはピアノで表現することにより華麗さと表現力が増しています。私はあるべきところにあるべき音がある、というのがモットーで、ピアノの機能を存分に生かす編曲を行います。音楽自体に語らせたいんです。この精神は、私が幼いころからさまざまな先生に師事し、あらゆることを学んだことが影響しています。私はピアノ音楽のレパートリーの空白地帯を埋めていきたい。みんなが演奏する曲ではなく、えっ、こんな曲があるのか、これは新たな発見だと思ってもらえるような音楽を世に送り出したいのです」

 各地の資料室を巡って埋もれた作品の楽譜を探し、演奏旅行にも膨大な楽譜を抱えていく。その探求心と情熱が新譜で炸裂、ピアノファンの耳を惹きつける。

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