INTERVIEW

J・ラモッタ・すずめとは何者か? J・ディラを愛する美しきシンガー/ビートメイカーに迫る

J・ラモッタ・すずめとは何者か? J・ディラを愛する美しきシンガー/ビートメイカーに迫る

ベルリンのジャカルタ・レコーズから昨年秋にデビュー・アルバム『Conscious Tree』をリリースしたJ・ラモッタ・すずめ。その謎めいた名前がまず気になってしまうが、フォトジェニックで垢抜けたヴィジュアルはファッション・アイコンとしても人気を得そうだし、PVで映し出されるナチュラルな姿もとても魅力的だ。

「〈ビートは誰が作ってるの?〉〈誰がプロデュースしてるの? 〉ってよく尋ねられるけど、答えは〈私自身〉よ」。エリカ・バドゥやジル・スコットも引き合いに出される歌声だけでなく、ビートメイクや楽器の演奏でも才覚を発揮するクリエイティヴで独立したシンガーは、そう無邪気に屈託なく話す。

今年2月に『Conscious Tree』の日本盤をリリースし、ここ日本でもジワジワと注目を集めるJ・ラモッタ。ここでは、来る8月31日(金)に開催される初の来日公演を前に行なったメール・インタヴューを元に、彼女が一体どんな人物なのか迫った。

★来日公演の詳細は記事末尾へ!

 

音楽的なルーツ

J・ラモッタ・すずめは、イスラエルのテルアビブでモロッコ出身の両親の元、伝統的なアラビア音楽が流れる家庭に育った。いつしかレゲエに出会い、ブルースを歌いはじめ、ティーンエイジャーのころにはジャズにのめり込む。

「私の最初の音楽体験はボブ・マーリーで、英語も彼の曲を翻訳することで学んだの。今でも彼の音楽を聴くとワクワクするわ! 音楽には周りの人たちを通じて出会うことがほとんどで、ジョン・コルトレーンやライトニン・ホプキンス、R・L・バーンサイドなどは、テルアビブの親しい2人の友人から教えてもらった。

テルアビブでジャズの学校に通っていたとき、〈歌ならまずはビリー・ホリデーを聴きなさい〉と先生に言われたんだけど、その頃はサラ・ヴォーンがいちばん好きだったから、初めはピンとこなくて。でも、次第にビリーをメインに聴くようなったの。だから、歌に関してはビリーにすごくインスパイアされているわね。学校で習う音楽は50年代までのジャズばかりだったので、あるときマル・ウォルドロンやサン・ラの音楽に出会ったときの感動といったら……。この音楽を知らずに一体今までどうして生きてこられたんだ、と自問したくらいよ。それはJ・ディラについても同じね」

彼女は熱狂的なJ・ディラのフリークで、彼のビートを引用した作品や、『About Love』というタイトルで毎年命日の付近で発表されているトリビュート作品を通じて、レーベルメイトでもあるJ・ディラの実弟イラ・Jとの交流も生まれているようだ。

『About Love』を手にしているイラ・Jとのツーショット

 

移住先・ベルリンの音楽シーン

ジャズ・スクールで奨学金を得た彼女はNYで学位を取得する道もあったが、渡った先はベルリン。2014年から現在まで拠点としているベルリンは、彼女の才能を開花させた場所だ。

「ベルリンのソウル、ヒップホップ、ビート・シーンは本当に素晴らしいわ! 世界中からクリエイティヴなアーティストがたくさん集まっていて、いろいろな国の人々とコラボするのに最高な場所なの」

ベルリンには多国籍のアーティストを受け入れる土壌がしっかりと根付いていて、そういったジェンダーレスな音楽シーンも彼女の制作活動を後押しした。ノイケルン地区にあるカフェ/イヴェント・スペース、Prachtwerk(プラハトヴェルク)で行われている〈Poetry Meets Soul〉というイヴェントでは、ヒップホップやソウル、ジャズの音楽を通じて、ヴィジュアル・アート、映画、詩、スポークンワーズを行うアーティストや、DJ、ミュージシャンたちが集い、国際的な多言語コミュニティーとしても機能している。そこでは、さまざまなバックグラウンドを持つアーティストたちが自国の言葉や音楽を使い、観客を巻き込んだパフォーマンスを行うなど、クリエイティヴな循環が生まれている。また、クロイツベルクのCafe Wendel で行われている〈Sample Science〉も、ビートメイカーや音作りに携わるプロデューサーのための重要なプラットホームとなっている。

そんな肥沃なベルリンの土壌で、彼女は2015年からセルフメイクの作品を精力的に発表し、2016年9月からは7ピース・バンド、J・ラモッタ・すずめ&ザ・ディジー・スパロウの活動をスタート。メンバーにはイタリア、デンマーク、アメリカ、イスラエルなどさまざまな国のミュージシャンを抜擢し、2017年には『State Of Being』というEPも発表している。彼女はメイン・ヴォーカルとラップだけでなく、ギターやポケット・トランペットなども手にしながら、自作のビートでバンドをリード。そこにスパイスの効いたジャジーなキーボード、ヒップホップ・スタイルのドラム、ファンキーなベース、ソウルフルな女性のバックコーラスなどを配置し、彼女の世界観を演出している。

J・ラモッタ・すずめ&ザ・ディジー・スパロウ『State Of Being』

 

フェイヴァリットな音楽

「ビル・ウィザースの『Still Bill』のレコード、特に(収録曲の)“Kissing My love”は私にとって特別。ビルの音楽を聴くと泣きたくなるくらいよ。ジェームス・ガドソンのドラムも最高。彼は間違いなく私のフェイヴァリット・ドラマーの一人ね」

『Still Bill』のレコードを掲げてキスをする姿から(下掲の動画を参照)、音楽へのひたむきな愛が伝わってくる彼女。以前はレコードに多くの投資をしていたというが、最近はバンドでのスタジオ録音などの活動も多くなったため、レコード収集に割く時間とのバランスを取っているとのことで……。

「今はスピリチュアル・ジャズのレコードを探していて、今日も後でレコード・ショップに行く予定よ。最近レコード・プレーヤーでループしているのは、ドロシー・アシュビー『The Rubaiyat Of Dorothy Ashby』(70年)やムラトゥ・アスタトゥケ『Mulatu Of Ethiopia』(72年)ね」と、嬉しそうに答えてくれた。


『Conscious Tree』についてのインタヴュー動画。00:45~『Still Bill』のレコードにキスするシーンが
 

他に今注目しているアーティストを訊くと、「ジョージア・アン・マルドロウ、エリカ・バドゥ、ネイ・パーム、DJハリソン、MNDSGN、ノレッジ、アンダーソン・パーク、フライング・ロータス、キーファー、ジ・インターネット……たくさんあるわ!」と、彼女の音楽性とも共振するであろう同時代のソウルやビート・ミュージック・シーンを支えるアーティストを多く挙げてくれた。

また、日本のビート・シーンにも関心があり、「Jazzy Sportやそのあたりのローファイなビートメイクのムーヴメントにもすごく興味がある。Budamunkは大好きで、彼と、あとDJ Mitsu the beatsはよく聴いているわ」とのこと。

 

最新作『Conscious Tree』と近年の活動

『Conscious Tree』はどのように作られたのだろう?

「ベルリンの自宅のベッドルームで、ごく短い時間で次々に書いていったの。いつもは曲を書くのに時間がかかるんだけど、このときは自分の気持ちを話すような感じで作っていったわ。すべての曲はそれぞれ物語を持っているのよ。

曲を作るとき大事にしているのは、まず第一にハーモニーね。それからドラムも自分が気持ちよく感じられるビートにする必要がある。ドラムから作りはじめて、その後コードを付けていくような作り方をしたりも時々するんだけど、この2つは私の曲作りでは基本的なソース。メロディーは大体いつも最後に出来るわ。アルバム制作に使用した機材はAbleton、レコード・プレーヤーとレコード、パーカッション、エレクトリックとアコースティックのギター、シンセ、ポケット・トランペット、そしてRoland SP-404 SX(サンプラー)ね」

『Conscious Tree』収録曲“Deal With That”
 

最近の彼女はシンガーとしての活動も盛んで、さまざまな国のミュージシャンとのプロジェクトに大忙しだ。

「ブラジル人のソングライター、ルイーザ・サレス(Luiza Sales)が、女性アーティストをフィーチャーする〈Meninas Do Brasil〉というプロジェクトをやっているんだけど、わたしもそれに参加したの。彼女のオリジナル曲をポルトガル語で歌ったのも、すごく楽しかったわ」

〈Meninas Do Brasil〉でルイーザ・サレスとのコラボした"Cedo"
 

また、日本人アーティストとの繋がりも多く、作曲家でギタリストの山口彰久が今年4月にリリースした『Here I Am』ではメイン・シンガーとして抜擢され、PVへの出演もしている

「彼とはベルリンで共演していたドラマー・Masaya Hijikataを通して知り合ったの。Akihisa(山口)はとてもプロフェッショナルな人で、彼との制作はとてもやりやすかった。ベルリン~日本間でやり取りしながらデモを録音した後、ベルリンまで私のヴォーカルを録音しにきてくれたのよ。普段は自作曲を歌う事がほとんどだけど、今回とても素晴らしい内容になったと思う」

 

〈すずめ〉の由来

そして、誰もが気になる彼女の名前〈すずめ〉の由来についても。〈すずめ〉は、ベルリンに在住していた日本人のグラフィック・デザイナー、Yoshitaka Kawaidaから教わった言葉なのだそうだ。

TAMTAMの最新アルバム『Modernluv』のアートワークや、R+R=NOW人物相関図のデザインなども担当している

「〈すずめ〉という名前をつけたのは、私が体験した2つのエピソードが関係しているんだけど、実は、今それについての短編小説を書いていて。いつか日本語にも翻訳したいと思っているので、あまり詳しくは話せないんだけど……。

1つは2014年の冬、ベルリンの地下鉄で知らない人に助けを求められたことがあって、周りの誰もが手を差しのべようとしないなか、私は彼のために最善を尽くした……というエピソード。そして、もう1つはテルアビブで起こったエピソードで、死にそうな雀を救ったためにトラブルに巻き込まれたんだけど、それは困難の渦の中で自分自身に出会うような美しい体験だった。救った雀を放つことで、自分自身を解き放つことができたというか。ヘブライ語で雀を意味する〈Dror〉には鳥の〈雀〉と〈自由〉の2つの意味があるんだけど、この2つのエピソードは私の中では繋がっている、重要なものなの。これらの一連の話をYoshiに話したとき、彼は私に〈すずめ〉という言葉を教えてくれたのよ」

 

来日公演への展望

最後に、「今回の日本でのショウは私にとってすごく意味のあるものになりそう。だからこそ、あまり期待しすぎないでいたいわ」と、来日への想いを語ってくれたJ・ラモッタ・すずめ。

今回の来日公演は計4人のバンドセットで登場する。デイジー・スパロウの一員として彼女を支えるデンマーク出身のベーシスト、マーチン・ブウル・スタウンストラップ。同胞イスラエルのキーボーディスト、ドロン・シーガル。そして、ラファット・ムハマドは、ベルリンの多国籍イヴェント〈world music jam session〉で出会ったエジプトのドラマーという、彼女ならではのコネクションを活かしたワールドワイドな面々だ。

「文化的なギャップはあたりまえ。でも今は心がひとつだし、彼ら(メンバー)は親しい友達でもある。私に大きなインスピレーションを与えてくれるの」

国境を越えてボーダレスにコネクトし、幅広い音楽性を自由に融合していく若き才能をぜひ目の前で体験したい。

ベルリンでのライヴ映像。来日メンバーのドロン・シーガル(キーボード)とマーチン・ブウル・スタウンストラップ(ベース)が参加

 


Live Information

The EXP Series #23 J・ラモッタ・すずめ
日時/会場:8月31日(金)ブルーノート東京
開場/開演:
・1stショウ:17:30/18:30
・2ndショウ:20:20/21:00
料金:自由席/6,500円
>>>チケットのご予約はこちらから!
参加メンバー:
J・ラモッタ・すずめ(ヴォーカル)
ドロン・シーガル(キーボード)
マーチン・ブウル・スタウンストラップ(ベース)
ラファット・ムハマド(ドラムス)
DJ:原雅明
★公演の詳細はこちら

ブルーノート公演に先駆けた来日記念イヴェントも開催決定!
※いずれの回もドロン・シーガル(キーボード)とのデュオでの出演となります

8月28日(火)東京・新宿 Brooklyn Parlor SHINJUKU
DJ:大塚広子
★詳細はこちら

8月29日(水)福岡・博多 Brooklyn Parlor HAKATA
DJ:NOMATA
★詳細はこちら

関連アーティスト