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CRCK/LCKSは特別なバンドであり続ける―中村佳穂も登場した新EP『Double Rift』リリパをレポート

(左から)井上銘(ギター)、越智俊介(ベース)、石若駿(ドラムス)、小田朋美(ヴォーカル/キーボード)、小西遼(サックスなど)
 

CRCK/LCKSのことが好きな理由はいくらでも挙げられるが、一番はとにかく弾けているところ。メンバー5人がステージに立つと、いつも無邪気で楽しそうなオーラが漂っている。結成から3年が経過した今もなお、初期衝動のミラクルが加速し続けているのは、バンドの在り方として理想的すぎるというものだ。

アーバンで洋楽っぽい音作りが飽和状態になっているなか、CRCK/LCKSのハイブリッドな日本語ポップスは、いわば独自性の塊。誰もが認める爆発力と、もっと語られるべきロマンティシズムでもって、彼らはシーンにおける台風の目となっていく。ただ今思えば、Mikikiの最新インタヴューで小田朋美が〈アングラっぽさ〉に言及しているように、初期のサウンドは色々とトゥーマッチだった面も否めないだろう。

しかし、先ごろ発表された新作『Double Rift』では、持ち前のスキルと底なしのテンションはそのままに、ある種の〈重さ〉から解き放たれ、歌とメロディーの魅力がグッと伝わりやすくなった。アクロバティックな演奏で圧倒してきた彼女たちが、ここではシンプルな言葉を印象深く響かせ、アンサンブルの表情を豊かに描き分けている。軽快に畳み掛ける前半、ディープで情感豊かな後半というトラックリストの構成も秀逸だし、どの曲もキャッチーで癖になるのは、ポップスとしてよく出来ている証拠。通算3枚目のEPにして、文句なしの快作に仕上がっている。

もともと一回きりの企画物としてスタートしたCRCK/LCKSは、バンド活動を無我夢中で楽しむうちに、特別な居場所へと変化していった。小田、小西遼、石若駿、井上銘、越智俊介の5人は、昨年のインタヴューでCRCK/LCKSを〈遅れてきた青春〉と形容している。そこから1年が経過した今、『Double Rift』で完全に一皮剥けた彼女たちは、どこへ向かおうとしているのだろう。そんなふうに思いを馳せながら、さる7月15日に開催された『Double Rift』リリース・ライヴへと足を運んだ。

〈CRCK/LCKS 3rdEP『Double Rift』 Release Party〉ダイジェスト映像

 

当日の会場は、CRCK/LCKSが何度も出演してきた東京・新宿MARS。キャパ300名の空間は今の彼女たちには手狭だったはずで、実際にチケットも早々にソールド・アウト。しかも、フロアの熱気と人口密度にエアコンが耐えきれず、空調がストップしてしまう。転換BGMで流れていたジェイミー・アイザックのひんやりしたサウンドとは対照的に、熱中症を覚悟するほどの暑さとなったが、そんなハプニングも笑い飛ばせるほど最高の一夜となった。

主役の前に登場したのは、京都が生んだシンガー・ソングライターの中村佳穂。出だしから得意の即興パフォーマンスで、CRCK/LCKSとの出会いや思い入れなどを歌に仕立てていく。本当の天才というのは、彼女のような人を指すのだろう。気づけば1時間近くライヴしていたが、ソウルフルな歌唱にダンサブルなグルーヴ、お茶目なMCやバンド・メンバーとの掛け合いなど、変幻自在で人懐っこいステージングはまったく飽きさせない。終盤には小西と越智もステージに呼び出し、「レコ発の対バン相手を疲れさせるなんてね」と笑みを浮かべながら、ファンキーな共演を披露する一幕もあった。

そして、CRCK/LCKSの5人がいよいよステージへ。小田が大きく息を吸い込み、“No Goodbye”のイントロを艶やかに歌い上げると、石若がハットを高速で刻みつつパワフルに叩きまくり、会場はたちまちヒートアップしていく。

そのあとインストの“Skit”を挟んで、緩急と変拍子を駆使した“Get Lighter”(前作『Lighter』収録)、軽やかにフレーズを反復させる“窓”(新作収録)と対照的な2曲が続く流れは、『Double Rift』によって新たなグルーヴを獲得したことを告げるようでもあった。人気曲の“パパパ!”で、キーボードによる最初の1音が鳴るだけで歓声が沸き、シンガロングが巻き起こる。

『Double Rift』からの全曲と、過去作からのベスト的選曲となったセットリストは、アッパーな序盤、じっくり歌を聴かせる中盤を経て、再びキャッチーに攻めるという構成。そのなかで、メンバー5人が存在感や成長ぶりをアピールしていた。

特に驚かされたのは井上銘のギターだ。結成当初はジャズ・ギタリスト出自らしい繊細なプレイが、バンド全体の突進力とミスマッチに映る瞬間もあったが、今ではプレイと音色への意識が飛躍的に向上。インディー・ロック的なギター・カッティング、エフェクティヴな音像から流麗なソロまで自在に弾きこなし、バンド演奏のカラーリングを中心で担っていた。この日は中村佳穂のバンド・メンバーを務めていた西田修大(吉田ヨウヘイgroup)との交流も、きっと刺激になったのだろう。

ceroのサポートやSPANK HAPPYでの経験もフィードバックされているのか、フロントを務める小田も、見違えるほど華のあるシンガーになった。表情豊かな歌声だけでなく、ポップなアクションもこなしてみせる彼女は、以前よりも余裕が感じられるし、表情が本当に明るくなった。そうなるとダークな側面も映えるようになるわけで、“病室でハミング”における感傷的で厳かなヴォーカルは実に味わい深いものがあった。

それから、『Double Rift』で大活躍を見せていたのが、前作からバンドに加入した越智。ファンキーで腰の据わったベース・プレイは、ここにきて一気に存在感を高めている印象だ。くるりとの共演など進境著しい石若のドラムは、ただ上手いだけでなく、テンポアップして楽曲をドライヴさせたり、じっくり歌を引き立てたりと、ライヴのほぼ全曲がハイライトといえそうな叩きっぷり。“OK”や“簡単な気持ち”では、このリズム隊による反則的なコンビネーションが披露された。

そして、「最近はMCの評判がいい」と自信を覗かせていたのは、TENDREや中村佳穂のサポートなど、サックス/シンセ演奏で活躍の幅を拡げているリーダーの小西。そんな彼にとって、これまでのようにヴォコーダーに頼らず、“Shower”で初めて生歌を披露したのは、「死ぬほど怖かった」と漏らすほどのチャレンジだったという。音程を思い切り外していたが、それでも歌い切るのが何ともエモかった。

あまりに濃密だったので、1時間弱のステージはあっという間に感じられた。アンコールでは中村佳穂が再登場し、CRCK/LCKSと共に“傀儡”を披露。また、ライヴの途中で9月の全国ツアーについても発表され、東京公演は過去最大スケールの渋谷WWW Xが会場となり、CRCK/LCKSの初期メンバーこと角田隆太を擁するものんくるとの対バンも発表されている。

ちなみに、本編のラストを飾ったのは、バンドの代名詞ともいえる“Goodbye Girl”。この曲がライヴで披露されると、演奏の途中で〈いくぞー!〉と小西が叫ぶのだが、そのガムシャラな掛け声には、今もありったけの初期衝動が詰まっているように聴こえた。あんなに昂ぶる瞬間はなかなかない。

バンドは確実に前進しており、新たな節目を迎えようとしているが、一方で変わらない〈本質〉も見せてくれた。〈いくぞー!〉の声がフロアに響き渡る限り、本人たちにとってもファンにとっても、CRCK/LCKSは特別なバンドであり続けるような気がする。

〈CRCK/LCKS 3rdEP『Double Rift』 Release Party〉
2018年7月15日(日)東京・新宿MARZ

1. No GOODBYE
2. Skit
3. Get Lighter
4. 窓
5. パパパ
6. すきなひと
―MC―
7. たとえ・ばさ
8. Zero
9. Shower
10. 病室でハミング
―MC―
11. O.K.
12. 簡単な気持ち
13. エメラルド
14. Goodbye Girl
En. 傀儡

 


〈CRCK/LCKS 3rdEP『Double Rift』リリースツアー〉

9月24日(月・祝)京都UrBANGUILD
w/さとうもか
9月26日(水)愛知・名古屋TOKUZO
w/ermhoi
9月27日(木)大阪・梅田Zeela
w/SIRUP、YOKOYURE
9月30日(日)東京・渋谷WWWX ※ツアー・ファイナル
w/ものんくる

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