INTERVIEW

ベニー・シングス『City Melody』オランダのポップ・マエストロが、憧れのCorneliusとの共演も叶った新作について語る

ベニー・シングス『City Melody』オランダのポップ・マエストロが、憧れのCorneliusとの共演も叶った新作について語る

甘い目覚めの朝はもちろん、夢に敗れた夜にさえも特別な輝きを与えてくれる魔法のメロディー。蜃気楼の街にはこんな歌がよく似合う……

 これほどまでに嬉しい気持ちにさせられるとは。ベニー・シングスのニュー・アルバム『City Melody』は、ポップ・マエストロとしての魅力が炸裂した内容となっており、心地良く胸を弾ませてくれる一枚だ。前作『Studio』(2015年)は凝ったプロダクションが特徴だったが、今回はまずメロディーをしっかり聴かせることに意識を集中したとか。

BENNY SINGS City Melody Dox/ビクター(2018)

 「『Studio』の時は新しいサウンドを探していて、プロダクションも新しい手法やテクニックを用いたんだ。少し見失っていた気もするけど、あの時は自分の音楽スタイルが特に重要じゃないように思えたんだよ。そう、心境の変化があってね、2000年以降のヒップホップやソウル・ミュージックに改めて興味が沸いてきた。それらもまた僕のベースにあるからさ。このアルバムでは自分が得意とするスタイルを貫き、好きなやり方で制作するべきと感じたんだよ」。

 ヒップホップ由来のビートを用いたクールなナンバーからミュージカル歌曲のようなチャーミングなものまで、〈なすべきことをなす〉との目標を掲げながら作り上げた楽曲は、シンプルさこそ究極の洗練という真理を伝えるものばかり。タイトルが中身の音楽を見事に集約しているところも良いじゃないか。

 「ワールドワイドでは『City Pop』ってタイトルでリリースする予定だけど、日本には同じ呼び名の音楽ジャンルがあるから『City Melody』にしたんだ。日本ではお馴染みのこの名称も、知らない地域の人々にはクールな表現だと思うし、そもそも本作はいろいろな都市で曲を書いたからね」。

 レコーディングは地元アムステルダムのほか、NYやLA、そして東京といった大都市で敢行。メガロポリスに映えそうな躍動感のあるビートが生成されている点も、『City Melody』の大きな聴きどころである。

 「今回訪れた土地が僕に自信を与えてくれて、それらの街と共に僕の音楽が生きていると感じたよ。もちろん環境だけではなく周囲の人々にも感謝しているし、リスペクトしている。とにかく都市が与えてくれるインスピレーションによって音楽はますます豊かなものになっていくと思うね」。

 ゲストには前作にも顔を出したメイヤー・ホーソーンをはじめ、カナダ生まれのモッキーやドイツのシュコなど多彩な面々がラインナップされており、そのなかでも目を引くのはやはりCorneliusだろう。コラボ曲“My World”は両者のセンスがまろやかに溶け合った逸品だ。

 「Corneliusの作品の大ファンなんだよ。アムステルダムにもファンはたくさんいて、彼はヒーローさ。僕たちの音楽スタイルはとても親和性が高いと思うよ。コード進行も近いものがあるし、たぶん根幹にあるものが似ているんだろうね」。

 ところで、ベニーは日頃から日本生まれのシティー・ポップに強いシンパシーを抱いているというが(とりわけ好きなアーティストは山下達郎だそう)、ひとつ訊いてみたかったのは自身の音楽をシティー・ミュージックだと意識しているかどうか。

 「日本のシティー・ポップと僕の作る音楽には、類似している点がたくさんあると思うんだ。〈イージー・リスニング・ソウル・ポップ〉とも形容できる僕のスタイルは、何となく大都市の生活にマッチすると思うからね」。

 そんな彼が理想とする〈シティー・メロディー〉とは?

 「う~ん、難しいね。マイケル・マクドナルドの“I Keep Forgetting”が僕にとってのベストなシティー・メロディーかな」。

 冒頭に記した嬉しさの一番の理由が何かと言えば、メロディーメイカーとしていっそう成熟した彼と再会できること──それに尽きる。実際、当人は今作における進化の具合をどのように考えているか、最後に訊いてみた。

 「技術的な側面でも成長できたし、自分に自信を持つことができた点も進化した部分だと思う。それはライヴでもそうだし、楽曲制作の面ではよりいっそう強く感じる。自分のスタイルを確立できたと思うよ」。

 9月には来日公演を控えているベニー。進化したその姿をぜひステージでも確認したい。

関連盤を紹介。

 

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