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ジョー奥田『Tokyo Forest 24Hours』 都会の森の24時間を伝える~2020年、明治神宮の鎮座百年を記念して

ジョー奥田『Tokyo Forest 24Hours』 都会の森の24時間を伝える~2020年、明治神宮の鎮座百年を記念して

都会の森の24時間を伝える~2020年、明治神宮の鎮座百年を記念して

 「フィールド・レコーディング」という言葉も高音質な小型ICレコーダーやYoutubeなどによってずいぶん一般化されてきた。

ジョー奥田 Tokyo Forest 24Hours MiMSound(2018)

 ジョー奥田『Tokyo Forest 24 Hours』は、明治神宮の森で収録された音風景アルバムである。ヘッドホンで聴くことにより、録音環境と同じ感覚を体験できるとされている、人の頭部の形をしたステレオマイク=バイノーラル録音で全て収録されている。元キャバレー・ヴォルテールのクリス・ワトソンに代表されるフィールド・レコーディング・アルバムは、人工音が存在しない環境での特殊な”自然音”に特化するすることが多い。同じフィールド・レコーディングでも、角田俊也のような自然環境で響く(振動する)音を抽出して作品化するサウンドアートもある。これらと異なり、このアルバムでは交通音、人々の話し声など人の営みを感じさせる都会のノイズが鳥や虫の鳴き声といった森の音と入り混じり、その場で収録された音全てが同列化されている。

 そもそも、人間は自然の一部であるから、全ての音は「自然音」であるはずだ。そうなると、アルヴァ・ノトや池田亮司の超電子音でさえ、自然音と捉えることもできる。「人工」の音と「自然」の音をなんとなく区別する、この私たちのマインドが、このアルバムを聴くことによって問われるのかもしれない。異なる周波数、倍音構成、発音タイミング、残響効果、位相効果が音楽同様に録音物として記録されていることでは同じで、それらがどのように組み合わさり、どのような印象を与えるのかが違いとなるのであろう。当たり前の話だが、ただ音を聴いただけなのに、他のどこでもない、やはり明治神宮界隈の“あの雰囲気”が記憶に残る。「サウンドスケープ」の提唱者R・M・シェーファーがかつて分析したように、実際にこのような記録物を聴き、それについて注意を払うことにより、音楽的な側面だけでなく、我々の生態に関わることまで興味の幅を広げてくれる。

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