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【Pop Style Now】ヴァンパイア・ウィークエンド、ニルファー・ヤンヤ、J・コール……今週必聴の5曲はこれ!

2019年1月18~25日

【Pop Style Now】ヴァンパイア・ウィークエンド、ニルファー・ヤンヤ、J・コール……今週必聴の5曲はこれ!

田中亮太「Mikiki編集部の田中と天野が、この一週間に海外の音楽シーンで発表された楽曲のなかから必聴の5曲を紹介する連載〈Pop Style Now〉。今週もフォールズブロークン・ソーシャル・シーンライアン・アダムスが新曲を出したり、フューチャーヘッズが再始動をアナウンスしたりと賑やかでした」

天野龍太郎「他にもウィ―ザーがカヴァー・アルバム『Weezer (The Teal Album)』をサプライズ・リリースしたり。……って、もっとフレッシュなアーティストについて語りましょうよ!」

田中「えーっと……なんかありましたっけ?」

天野「シカゴ、サウス・サイドの女性ラッパー、ドリージーの『Big Dreez』が良かったですよ。あとはエミネムのヴァースが話題になっているブギーの『Everything's For Sale』。さらなるブレイクが期待できそうという点では、〈PSN〉でも紹介したブリング・ミー・ザ・ホライズンの『Amo』が力作でした」

田中「BMTHの『Amo』については内容を解説したコラムを準備中なので、乞うご期待。では、今週も〈Song Of The Week〉から!」

 

Vampire Weekend “Harmony Hall”
Song Of The Week

田中「今週はこれっきゃないでしょう! ヴァンパイア・ウィークエンドの“Harmony Hall”が〈SOTW〉! 6年ぶりの新曲です。ついに出ましたね~」

天野「ニュー・アルバムのタイトルが『Father Of The Bride』であることも発表されました。フロントマンであるエズラ・クーニグのパートナーが女優のラシダ・ジョーンズなんですが、このタイトルは彼女のお父さんのクインシー・ジョーンズを指しているのでは?と話題に」

田中「リリース日はまだ発表されてないんですが、今月から毎月2曲ずつ×3回公開するそうで、となると4月か5月くらいですかねー。18曲入りだとか」

天野「この“Harmony Hall”は120分のティーザーでループしていたギターからスタートした後、鍵盤やコンガなど打楽器が加わっていって、ゆっくりと昂揚していくナンバーです。ゴスペル調のサビは完全にローリング・ストーンズの“You Can't Always Get What You Want”!」

田中「なるほどー。全体的にバレアリックなムードも強いので、むしろ僕はプライマル・スクリーム“Movin’ On Up”を感じました。まあ、ストーンズが元ネタなんですけど……。90年前後のテリー・ファーリーっぽいというか」

天野「ダーティ・プロジェクターズのデイヴ・ロングストレスやグレッグ・リース、ハイムのダニエル・ハイムが参加してるっていうのもすごいですね。リリシスト、エズラの歌詞も感動的ですよ。〈I don't wanna live like this, but I don't wanna die〉とか〈Anger wants a voice, voices wanna sing / Singers harmonize 'til they can't hear anything〉とか……。スーパーオーガニズムのオロノも新曲についての思いを語ってました

田中「あと、彼らは最近ライヴでダスティ・スプリングフィールドの“Son Of A Preacher”をカヴァーしているんですけど、そのアレンジがこの曲の方向性にかなり近いんですよ」

天野「そのカヴァー、〈フジロック〉でも最後にやってたとか。ロスタム・バトマングリの脱退以降に大所帯でライヴをやってきた成果も“Harmony Hall”に落とし込まれている気がします。ロスタムはこの曲のプロダクションにも関わってるんですが、もうひとつの新曲“2021”は細野晴臣の曲をサンプリングしてたりと、新作はこれまでの3作とはちょっと違うサウンドになってるのかも。来月リリースの2曲も待ちきれませんね」

 

Nilüfer Yanya “In Your Head”

天野「2曲目はニルファー・ヤンヤの新曲“In Your Head”。個人的にはこちらも〈SOTW〉!」

田中「ニルファー・ヤンヤは昨年の11月にもご紹介しましたね。詳しくはそちらの記事をご覧いただくとして、彼女はトルコなどにルーツを持つロンドンのシンガー・ソングライターです。日本ではUKソウルの文脈から紹介されることも多いのですが、前回の“Heavyweight Champion Of The Year”から完全にロックに振り切れましたね」

天野「歪んだギターとドライヴするベース、ドラムが叩きだすビート、ひっくり返ったようなニルファーの歌声、静と動のコントラストが効いたピクシーズ的な楽曲構成……すべてが勢いに満ちてて痛快な一曲です。そういえば前の曲もピクシーズの“Gigantic”っぽかったな~」

田中「ビートのズドン!って強調が印象的ですね。3月22日(金)リリースのニュー・アルバム『Miss Universe』にはジョン・コングルトンが参加しているそうなので、彼の仕事なのかも。フェスで聴いたら超アガること間違いなしです」

天野「ですね。一方で歌詞は、恋愛にまつわるパラノイアについてのもので、かなり混乱しています。〈ちょっとしたサインに深い意味を読み取ってしまったり〉とか、結構生々しい」

田中「ちなみにホステス・エンタテインメントさんからの情報によれば、彼女は年末年始、プライヴェートで日本に滞在していたとか。知らなかった……」

天野「日本でもぜひライヴを! 2月はシャロン・ヴァン・エッテンのツアーに参加、3月は新作をリリースと、〈PSN〉的にも2019年最注目のアーティストであることは間違いありません!!」

 

HÆLOS “Kyoto”

田中「続いて、ヘイロスの新曲“Kyoto”です。タイトル……。〈Cherry blossom〉と連呼するコーラスにも笑みがこぼれちゃいました」

天野「MVもお寿司屋さんが舞台ですね。カメラがズームアウトすると、人魚に扮したヴォーカリストのアーサー・デレイニーが板場に横たわっているというオチが凄いです」

田中「現代の食産業への批判的なメッセージなんですかね……。そうしたポリティカルな問いかけを感じさせるところと、物悲しいピアノやエレクトロニカ風の音作りはレディオヘッド的とも言えそう。ナイジェル・ゴドリッチのバンド、ウルトライスタのサウンドに近い印象を受けました」

天野「あと、ビートやサウンド・デザインも魅力的ですね。くぐもった鳴りの4つ打ちで、ディープ・ハウスっぽい感じ。スモーキーでジャジーなんだけど、モダンな音作りになってますよね」

田中「最初のコーラスが終わる1分49秒あたりで入ってくるワブル・ベースもカッコイイです。一曲のなかに段階的にフックを作っていて、よく練られた曲ですよ。なお、セカンド・アルバム『Any Random Kindness』は5月10日(金)にリリース。ジャケットは盆栽……?

 

J. Cole “MIDDLE CHILD”

天野「続いては、J・コールの新曲“MIDDLE CHILD”です。最近のラップ・ソングのなかでは物凄く話題になってる一曲。カニエ・ウェストとプッシャ・Tを暗にディスり、プッシャ・Tとビーフ中のドレイクを擁護する内容だと言われています」

田中「いろいろな要素が盛り込まれているんですね。彼は去年もアルバム『KOD』をリリースしていたそうで」

天野「ええ。『ミュージック・マガジン』の2月号で池城美菜子さんが〈ケンドリック・ラマーの次くらいに重要〉とおっしゃってましたが、にも関わらず日本での評価や知名度がとにかく低くて……。知性派のリリシストで、アメリカではセールスも評価もトップクラスなのに。みんなもっと聴いてください!」

田中「僕も聴きます。で、コールは昨年の『KOD』のラストで今年リリースする新作『The Fall Off』をアナウンスしてたんですよね」

天野「でも、その後の新曲“Album Of The Year (Freestyle)”で『The Fall Off』の前に『The Off Season』というアルバムを出すことを宣言しました。“MIDDLE CHILD”はそこに収録予定です」

田中「ハード・ワーキン……。本題の“MIDDLE CHILD”ですが、勇壮なホーンのループとダークなトラップ・ビートが対照的な一曲。プロデュースはコール本人とT・マイナスによるものです」

天野「この曲の後半部でコールは、旧世代と新世代に挟まれた自分自身について〈真ん中っ子〉と表現しています。〈俺は2つの世代の間で死んでいる/弟であると同時に兄でもあるんだ/21サヴェージとレコーディングした後は/ジェイ・Zとランチを食べに行く/コダック・ブラックと長話をして/地元の若者たちを思い出す/あいつには導いてくれる人が必要だと思うよ、本気で〉とラッパーたちの実名を出しています」

田中「毎日、忙しいんですね。でも、中堅としての責任感や悩みを率直にラップしているところが素敵です。サビの〈手の中にある金はお前をリアルにはしない〉〈握っているピストルはお前をリアルにはしない〉というリリックも、社会派のコールらしくてグッとくるなー。新作にも期待大!」

 

Koffee “Throne”

天野「今週最後の一曲はコーフィーの“Throne”。〈PSN〉初のレゲエかなと思います」

田中「彼女はジャマイカ、スパニッシュ・タウン出身のレゲエ・シンガーで、2000年2月生まれだからまだ18歳。すごくフレッシュな才能が現れましたね」

天野「ですね。彼女のデビュー・シングル“Legend”(2017年)はウサイン・ボルトに捧げた歌で、それがInstagramを通じてヴァイラル・ヒットしたんだとか。続く“Burning”がアメリカのレゲエ・チャートでヒット……と物凄い勢いで成功を掴んでいきます。すでにUKのコロムビアと契約し、EP『Rapture』を今年リリース予定です」

田中「表面的にはルーツ・レゲエなんですけど、どこかサンプリング感覚がありますよね。一方でキックがどんどん倍で刻まれていく構成はEDMっぽかったり、トラップ的なハイハットやスネアの音も聴ける。コーフィーの太い歌声と共に、さりげなく現代的なプロダクションにも注目です」

天野〈The FADER〉が彼女に取材しているんですけど、この曲についてはこう語っているそうです。〈力強くポジティヴな女性のエネルギーとエンパワメントを表現しています。ジャマイカのみならず世界から汚職を追放し、文化と若者を擁護するきっかけにしたい〉。カッコイイ!」

田中「レゲエ・シンガーらしいアクチュアリティーと政治性、それにポジティヴィティーにあふれた一曲ですね。それでは今週はこのあたりで。また来週!」

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