インド洋の小さな島レユニオンから届くコール&レスポンス!

 「ママのお腹にいるときから〈マロヤ〉で踊っていた。パパとはサトウキビ畑で農作業しながら歌っていた。〈マロヤ〉を聴くと、腹が立っていても心が穏やかになって落ち着く。心配事もストレスも癒される」

 ランディゴのリーダー・オリヴィエが熱く語る〈マロヤ〉は、レユニオン島の“心”ともいえる伝承音楽だ。長らく植民地支配を受けてきた歴史の中で、マロヤを歌うことが禁じられた時代もあった。政治的なメッセージや、シャーマニズム的な要素もタブー視され、民族楽器も壊され、人前での演奏は御法度に。それでも人々はマロヤを愛し続けた。そして生き残った。今では ユネスコ無形文化遺産に登録されている。

 グループ名の〈ランディゴ〉は、植物の“藍”=インディゴに由来している。抗菌作用のある天然藍は傷ついた奴隷たちの肌を癒してきた。音楽の力で心も癒してほしいという願いを込めてネーミングしたという。

LINDIGO Komsa Gayar オルターポップ(2018)

 そんなランディゴの最新アルバムは、キューバ録音だ。オリヴィエは、ルンバとマロヤの共通性を感じた。キューバでもレユニオンでも、サトウキビ畑の労働力は奴隷たちによって支えられてきた史実も重なる。キューバ音楽のカリスマ的なグループ、ロス・ムニェキートスとのコラボは、「もう一目惚れのような最高の相性だった!」。オリヴィエは、ドキュメンタリー映像もつくり、三日間で収録した作品は賞を獲得した。

 「クレオール音楽家として好評価され、世界を回れるなんて運が良いことだ。見たり聴いたりしたことは記録して音源や映像で多くの人々にシェアしたい」

 故郷の歳時記も音楽の中に息づいている。レユニオンでは、セルヴィ・カバレの音楽祭儀で先祖に想いを馳せる。年に一度のお盆のような祭の時は火の上を歩く儀式もあるという。オリヴィエのルーツには南インドからやってきた先祖もいる。語り継がれる伝統文化と子供時代の甘い記憶。「ママは朝からスィーツを用意して優しくハグしてくれた。ああ、もしもあの時間に戻れたら……」

 そんな感謝の気持ちで書いた曲は《SI SOLMON》。9歳の息子の独唱からはじまる歌に、マロヤの大御所音楽家であるダニエル・ワロもコーラスで加わる。まるで三世代親子のように息のあった歌声。「息子が健闘して、録音は一発OKだったんだ!」。オリヴィエは目を細める。

 アルバムタイトル曲《コムサ・ガヤール》の意味は、“これが人生だ!”。オリヴィエの解説では、「ハッピーになろう!大人も子供も集まって!」。

 レユニオンのマロヤの心に触れてあたたまりたい。