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【西山瞳の鋼鉄のジャズ女】第11回 ミュージシャンとして年齢を重ねること――ウリ・ジョン・ロート来日公演を観て

メタラーのジャズ・ピアニストがHR/HMのアレコレを語る大人気連載

クラシックとユーロ・ジャズからの影響をもとに国内外で活躍中のジャズ・ピアニスト、西山瞳。ジャズ界に身を置きながら、近年はHR/HMをジャズ・カヴァーするプロジェクト、NHORHMとしての活動や、ファンであるBABYMETALの音楽的な魅力を鋭く考察して界隈で支持を得るなど、メタル愛好家としての信頼はグイグイ上昇中。そんな〈メタラーのジャズ・ピアニスト〉という立ち位置からHR/HMを語り尽くす本連載〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉では文筆家としての才も大いに発揮し、多方面で活動の場を拡げています。

昨年末に発表したMikikiの年間アクセス・ランキングのとおり大好評な本連載。今回は元・スコーピオンズのギタリスト、ウリ・ジョン・ロートのコンサートを観た西山氏がミュージシャンとして年齢を重ねることについて、想いを綴ってくれました。 *Mikiki編集部

★西山瞳の“鋼鉄のジャズ女”記事一覧

 


1月21日、ギタリスト、ウリ・ジョン・ロートのコンサートを聴きに、中野サンプラザホールへ行ってきました。

私のメタル・カヴァー・プロジェクト、NHORHMのアルバム『New Heritage Of Real Heavy Metal 3』で、スコーピオンズの“The Sails Of Charon(邦題:カロンの渡し守)”をカヴァーしていますが、ウリ・ジョン・ロートはその作曲者であり、〈仙人〉と呼ばれるギタリスト。スコーピオンズを脱退した後はエレクトリック・サンを結成、フレットが多く高音を出すことができるスカイ・ギターを生み出した、レジェンドです。

原曲。スコーピオンズの77年作『Taken By Force』収録曲“The Sails Of Charon”
 

私は元々、イングヴェイ・マルムスティーンの『Inspiration』(96年)というハード・ロックのカヴァー・アルバムに収録されていた“The Sails Of Charon”がきっかけで、スコーピオンズとウリ・ジョン・ロートという存在を知りました。

生でコンサートを聴くのは初めてだったのですが、期待していた以上のとんでもない内容で、ファンとして感激すると同時に、ミュージシャンとして圧倒されました。

メタルは特に〈この人はこういう芸風だ〉と印象が固定される部分がありますが、音楽の引き出しが非常に豊かで、次々に違うタイプの曲が出てくるんですよ。いままでいろいろライヴに行っていますが、こういうのって、ロック系では意外といままで見たことなかったんですよね。

それも、あんなのできるよ、こんなのできるよ、という散らかった演奏ではなく、ウリ仙人のフィルターを通した、年月を経て熟成したもの。その音楽キャリアに比例した、技術、体力、確信、安定と挑戦に、ミュージシャンとして驚嘆しました。

 

公演は休憩を挟んで、なんと3時間超え。レジェンドのコンサートとして予想していたものよりはるかに長丁場、高密度なコンサートでした。終盤になってもまったく乱れることもなく、〈技術も体力もいまが一番〉ということを、ずっと更新してきているのだろうなあと想像します。

個人的に気になっていたことは、顔に風を当てて髪をなびかせながらの演奏(TM Revolution状態)は、自分も演奏する身からすると意外と体力を奪われてしんどいと思うので、あの年齢だしいつまで風を当て続けるんだろう?と思って観ていたら、最後まで当てていました! ステージ中、水を飲んでいる様子もなかったです。

セットリストも、ウリの歴史を振り返るような非常に濃密な時間で、同時代から追いかけているファンの皆さんには、非常に嬉しいメモリアルなコンサートになったことかと思います。サンプラザも、もうすぐ建て替えのため無くなりますし。

ライヴ作品『Tokyo Tapes Revisited - Live In Japan』(2016年)にもなっている、2015年の来日公演の一幕。風が当てられている様子も確認できる
 

ウリのコンサートを聴いた帰り、〈ミュージシャンとして年を重ねる〉ということについて、とても考えました。

ロック、特にヘヴィメタルの分野では、年をとることに対して、ファンからの厳しい目があります。

〈以前より声が出なくなった、キーを下げている〉〈昔ほど指がまわらなくなった〉〈昔ほど音圧がない〉など、昔の方が良かったと言われることが、あまりにも多い。張りつめたエクストリームな音楽ですから、ある程度仕方無いとは思いますが、私がジャズ・ミュージシャンだからか、経年変化もそれはそれで非常におもしろいと思うんですよね。

 

ジャズは、選手生命が長いです。70代、80代の大先輩ミュージシャンが現役でご活躍で、〈まだまだ勉強することがある〉とおっしゃっているぐらいですから、道のりがとにかく長い。

そして、即興演奏により毎瞬変わっていく音楽なので、常に新しく、常に変化する宿命にあります。若い頃と同じということは、進歩していないことかもしれません。年齢を重ねれば重ねるほど、体験した音楽は増え、洞察も知見も深まり、技術だけでは説明のできない説得力ある演奏とアンサンブルができるのも、ジャズ。

対して、メタルは体力の問題が大きいです。〈速い、重い、大きい〉を、張りつめた状態でやらないといけない。それが、経年の身体の変化によって衰えたと言われるのは、まあ仕方無いとはいえ、ジャズ・ミュージシャンから見ると厳しいなあと思うんですよね。

キーを下げるのも、いまそれが音楽にとって最善だから、ファンに少しでも良い音楽を届けたいと思って選択した結果だと思いますし。

 

また、年齢相応の演奏表現というものがあり、練習できない期間があったとしても、若い頃よりも指が動かなくなっていたとしても、その間に人生は進んでいて沢山の人生体験の肉付けして、その時の人間になっているはず。年齢を重ねるごとに音楽家としての考え方も変わって当たり前だし、音楽人として後退はしていないと思うんですよ。年月での変化も楽しめたらいいなと思います。

そういう意味でも、ウリのコンサートは、年月が経っても、年月が経ったからこそのロック・ギターであることに、強烈に感激したんです。

 

そもそもウリのコンサートに行きたいと思ったのは、彼のソロ作『Scorpions Revisited』(2015年)が兎にも角にも素晴らしい内容で、年月が経ったからこそできる凄まじい演奏だったから、絶対ライヴで聴きたかったんです。

生でいまのウリを聴くと、より成熟した表現でエモーションも衰えず、技術も熟考と開発を重ね、ロック、メタルの分野で年齢を重ねるからこそできる演奏を、強大な説得力を持って実現し、多くの聴衆に提示していることに、感激したのです。

円熟とは変わり続けていくことだなと思い、一人のミュージシャンとして非常に感激しました。

 


PROFILE:西山瞳

1979年11月17日生まれ。6歳よりクラシックピアノを学び、18歳でジャズに転向。大阪音楽大学短期大学部音楽科音楽専攻ピアノコースジャズクラス在学中より、演奏活動を開始する。卒業後、エンリコ・ピエラヌンツィに傾倒。2004年、自主制作アルバム『I'm Missing You』を発表。ヨーロッパジャズファンを中心に話題を呼び、5ヶ月後には全国発売となる。2005年、横濱ジャズプロムナード・ジャズコンペティションにおいて、自己のトリオでグランプリを受賞。2006年、スウェーデンにて現地ミュージシャンとのトリオでレコーディング、『Cubium』をスパイスオブライフ(アミューズ)よりリリースし、デビューする。2007年には、日本人リーダーとして初めてストックホルム・ジャズフェスティバルに招聘され、そのパフォーマンスが翌日現地メディアに取り上げられるなど大好評を得る。

以降2枚のスウェーデン録音作品をリリース。2008年に自己のバンドで録音したアルバム『parallax』では、スイングジャーナル誌日本ジャズ賞にノミネートされる。2010年、インターナショナル・ソングライティング・コンペティション(アメリカ)で、全世界約15,000エントリーの中から自作曲“Unfolding Universe”がジャズ部門で3位を受賞。コンポーザーとして世界的な評価を得た。2011年発表『Music In You』では、タワーレコードジャズ総合チャート1位、HMV総合2位にランクイン。CDジャーナル誌2011年のベストディスクに選出されるなど、芸術作品として重厚な力作であると高い評価を得る。2014年には自己のレギュラートリオ、西山瞳トリオ・パララックス名義での2作目『シフト』を発表。好評を受け、アナログでもリリースする。2015年には、ヘヴィメタルの名曲をカヴァーしたアルバム『New Heritage Of Real Heavy Metal』をリリース。マーティ・フリードマン(ギター)、キコ・ルーレイロ(ギター)、YOUNG GUITAR誌などから絶賛コメントを得て、発売前よりメタル・ジャズ両面から話題になり、全ての主要CDショップでランキング1位を獲得。ジャンルを超えたベストセラーとなっている。

2016年には続編アルバムも発売。自己のプロジェクトの他に、東かおる(ヴォーカル)とのヴォーカル・プロジェクト、安ヵ川大樹(ベース)とのユニット、ビッグバンドへの作品提供など、幅広く活動。横濱ジャズプロムナードをはじめ、全国のジャズフェスティバルやイベント、ライブハウスなどで演奏。オリジナル曲は、高い作曲能力による緻密な構成とポップさの共存した、ジャンルを超えた独自の音楽を形成し、幅広い音楽ファンから支持されている。

NHORHMの最新作『New Heritage Of Real Heavy Metal III』は好評発売中!
★最新作について西山とデーモン閣下が対談した記事はこちら

NHORHM New Heritage Of Real Heavy Metal III APOLLO SOUNDS(2018)

 


NEW!!】NHORHM、ニュー・アルバム『New Heritage of Real Heavy Metal extra edition』をリリース!

「西山瞳によるヘヴィメタル・カヴァー・プロジェクト、NHORHM。
ジャズ界~メタル界を震撼させたアルバム3部作をもって完結.....!!
のはずが、シナリオには続きがあった.....!
これまで発表されたアルバムに惜しまれつつも収録されなかった、第1期NHORHMによる
秘蔵音源に西山瞳によるオリジナル曲1曲をプラスした〈裏作品集〉リリース!!」

NHORHM『New Heritage of Real Heavy Metal extra edition』
2019年4月24日(水)リリース
●収録楽曲(タイトル/オリジナル・アーティスト)
1. Galaxies / Stratovarius
2. South of Heaven / Slayer
3. Highway Star / Deep Purple
4. Enter Sandman / Metallica
5. Don't Let It End / Yngwie Malmsteen
6. P.C.P. / 西山瞳
7. The Seventh Sign / Yngwie Malmsteen
全7曲 収録39分

 


Live Information

2月16日(土、昼帯)東京・成城学園前 Cafe Beulmans(03-3484-0047)
西山瞳(ピアノ)、市野元彦(ギター) デュオ

2月17日(日、昼帯)兵庫・甲南山手 gallery ZING(078-413-4888)
開場/開演:13:00/14:00
チケット:予約3,000円/当日3,500円/学生・アーティスト1,500円
東かおる(ヴォーカル)、西山瞳(ピアノ) デュオ

3月1日(金)東京・池袋 Apple Jump(03-5950-0689)
牧山純子(ヴァイオリン)、西山瞳(ピアノ) デュオ

『New Heritage of Real Heavy Metal extra edition』リリース記念ライヴ
日時:2019年4月23日(火)東京・新宿ピットイン
開場:19:30 開演:20:00
予約:3,000円+税 当日:3,500円+税
出演:NHORHM(西山瞳(ピアノ)、織原良次(フレットレスベース)、橋本学(ドラムス)
スペシャル・ゲスト:SAKI(from Mary’s Blood)
新宿ピットイン住所:東京都新宿区新宿2丁目12−4 アコードビルB1
MAIL予約:shinjuku@pit-inn.com
電話予約:03-3354-2024
予約開始:2019年3月3日AM11:00より

★ライヴ情報の詳細はこちら

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