(左から)山本紀行、倉橋慶治、青木ロビン、河合信賢、Taka Goto

来たる5月12日(日)に開催が決定した〈After Hours〉は、今回初の試みとして海外4ヶ国からのアーティスト――エクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイ(US)、エイミング・フォー・エンリケ(ノルウェー)、スヴァールバル(UK)、レッドネック・マニフェスト(アイルランド)を招聘。toeやBoris、bachoら日本の精鋭たちと競演するということで、大きな反響を呼んでいる。加えてこの度、第2弾ラインナップとしてLITE 、OOIOO、Vampillia、skillkills、NOT ll BELIKESOMEONE、5kaiという剛腕の6組が発表された。2016年に〈SYNCHRONICITY〉とのコラボレーションという形で東京・渋谷でプレ・イヴェントが開催され、翌2017年にふたたび東京で正式開催。2018年には上海、台北で開催され、ともに前売り券の発売からわずか数分でソールド・アウトするという展開で一気にワールドワイドな広がりを見せた〈After Hours〉は、海外からのゲストを迎える今回、新たな次元に突入したと言っていいだろう。

そもそもバンド仲間が集まる飲み会で盛り上がり、開催が決まったという経緯が示すように、アーティスト主導のDIYなフェスティヴァルとして、閉塞した日本の音楽シーンに一石を投じてきた。今回はその主催者であるMONOのTaka Goto、envyの河合信賢、downyの青木ロビンに加え、昨年の上海・台北時から加わり、イヴェントの運営面をサポートするスマッシュの倉橋慶治、山本紀行の両氏を加え、〈After Hours〉の過去と現在、未来について存分に語ってもらった。


 

DIY精神を持ったバンドが世界中から集まる祭典

――ついに〈After Hours〉が東京に戻ってきますね。

Taka Goto(MONO)「今回は新しい試みで、海外のバンド、USのエクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイ、UKのスヴァールバル、ノルウェーのエイミング・フォー・エンリケ、アイルランドのレッドネック・マニフェストを呼びました。去年は海外(上海、台北)でやったんですけど、それには僕たちが共感できる日本の良いバンドたちと海外を攻めたいっていう気持ちがあったから。両方を同時進行して行きたいんですよね」

――そもそも〈After Hours〉は、2016年に〈SYNCHRONICITY〉とのコラボという形で始まりましたね。

Goto「もともとは、ノブくん(河合/envy)がフェスをやりたいと言い出したんです。でも僕らにはノウハウがまったくない。ただロビンが〈SYNCHRONICITY〉主催の麻生(潤)くんと友達だったんだよね。それで実験的に始めたのが2016年。そこから自分たちでやれることは何か探っていって、2017年に単独で開催。それで去年は海外でやってみようと。で、もう1回日本でやりましょうっていうのが今回の企画なんです。まだ探り探りの段階なんですけど、10年とか20年かけて、きちんとした形ができれば良いのかなと」

――それだけ長いタームで考えているんですね。

Goto「そうですね。そもそも日本には、僕たちが信じられる音楽シーンがない。僕たちが自信をもって紹介できるバンドたちが一堂に集まる、海外で言うなら〈All Tomorrow's Parties〉のようなフェスティヴァルが、日本にはない。だったら自分たちで作っちゃえっていうのが、最初の気持ちなんですよ」

河合信賢(envy)「いま(日本にも)フェスはいろいろあるじゃないですか。そういうのを全否定してるんじゃないんだけど、僕らが演奏するとアウェイ感の連続だったというか。例えば会場には何千人も集まってるのに、僕らのときだけ誰もいなくなる……観てもくれないとかね。これだけ準備して、これだけ機材運んで、これだけのチームで乗り込んで行ったのに、草むらに向けて演奏してる切なさっていうね(笑)」

Goto「ははははは!」

河合「寂しかったんですよね。なんて言うのかな、自分が主役になりたいわけじゃないけど、もうちょいホームな感じというか、自分の国なんだから、せめてもう少しだけでも楽しく演奏できるフェスがあったって良いんじゃないかな、みたいなところから始まってるんです」

Goto「envyとうちは英国でやった〈All Tomorrow's Parties〉で同じ回の違う日に出たことがあって、そこでの経験を共有してるんです。ああいうフェスの場って、お客さんもそうだし、アーティスト同士もすぐ仲良くなっちゃう。知らない人とも友達になれるし、あの空気感っていうのが、やっぱりすごく良いんですよ。日本でも、あの空気感に海外勢も呼べて、みんなで力を合わせて何か作れたらな、っていうのがあるんです。日本のフェスとはなんとなく違う。ギスギスした雰囲気もなく、リスペクトがあって、ファンともいつでも話せてっていうような、そういう空間が作れたら良いなって思っています」

河合「海外のバンドを呼ぶときも、そと様のすごく有名なバンドに出ていただくっていう感じよりも、お互いにリスペクトを込めて何か一緒にやらないか、っていうところからスタートできたらいいなと。そこは商業主義じゃなくて、人間関係のなかでね」

Goto「ハートに響くアーティストが一斉に集まったらどういうふうになるんだろう。そういう景色を観てみたいんだよね。〈All Tomorrow's Parties〉は本当にそういう感じで、どのステージに行っても、観たかったバンド、ずっと好きだったバンドはもちろん、知らなかったバンドでも全部を楽しめるフェスだった。呼ばれて、大物気取りで現れて、挨拶もなしに帰って行くようなアーティストはほとんどいない。〈After Hours〉もそんな感じでやりたいと思ってます」

〈All Tomorrow’s Parties〉でのMONOのライヴ映像

――なるほど。

Goto「うちは結成して20年ですけど、海外も含め、このフェスに出たら知名度が上がるんじゃないかみたいな雰囲気のところにはあまり誘われないし、出たいとも思ったこともない。むしろ、自分の好きなバンドが何かおもしろいことやってたら、小さなフェスであっても出たいと、僕だったら思う。そういうフェスを、自分たちで作ったら良いんじゃないかと思った。たとえばフガジとかシェラックみたいなDIYの精神を持ったバンド――僕らも胸を張って紹介できるような、インディペンデントなアーティストが集まる祭典を作れたら良いかな」

青木ロビン(downy)「若い子たちが、あそこに出たいってめざしてくれるようなフェスというかね」