サキソフォニストの山田光とギタリストの黒澤勇人による即興アルバム『we oscillate!』がカンパニー社からリリースされた。

hikaru yamada and the librariansfeather shuttles foreverでの活動、あるいは多数の客演で知られるサキソフォニスト/トラックメイカーの山田光。山田は2010年から2年間、ロシアのサンクトペテルブルグで活動しており、同地のフリー・ジャズ・シーンで多くのミュージシャンと共演を重ねた、という経歴の持ち主だ。

一方の黒澤勇人は、自身のリーダー・バンドである毛玉のインタヴューでも語っていたとおり、大友良英の音楽との出会いをきっかけにギターの即興演奏を始めている。一度は即興演奏の活動に区切りを付けたものの、山田の誘いで2012年から再び即興に取り組むようになったという。

横川理彦+山田黒澤高島トリオの2013年のパフォーマンス映像。横にしたアコースティック・ギターを、黒澤がさまざまな道具を使って弾いている様子を観ることができる

その毛玉のインタヴューでも言及されていた山田と黒澤の即興演奏作品が、hikaru yamada hayato kurosawa duoによる『we oscillate!』だ。マックス・ローチの名盤『We Insist!』(60年)を想起させるタイトルを掲げた本作。一聴してサックスやアコースティック・ギターの音色だとは判別しがたい、特殊な奏法による2人の音が絡み合う刺激的な12の演奏が記録されている。

また、ライター/批評家の細田成嗣による1万字超のライナーノーツも必読の内容。同じギタリストとサキソフォニストという組み合わせの高柳昌行と阿部薫によるクラシック『解体的交感』(70年)を始点にギターとサックスによる即興の歴史を紐解きつつ、『we oscillate!』の批評も試みている労作だ。

『we oscillate!』収録曲“#19 (steel board attachment+E-bow)”“#9 (long tone+bow)”“#5 (free jazz!)”

なお本作は、CD/レコードのオンライン・ショップ〈p.minor〉を運営するカンパニー社からのリリース。2018年の大里俊晴『間章に捧げる即興演奏』に続くレーベル第2弾作品となる(ちなみに同作のライナーノーツを書いているのは、あの山崎春美だ)。

『we oscillate!』の取り扱い店は、宮城・仙台のvolume1(ver.)東京・水道橋のFtarriといった実店舗ほか、リリース元のp.minorやAmazonなど。またp.minorのBandcampではCDとデジタル・アルバムが販売されている。店舗の詳細については下記を参照されたい。

毛玉のファースト・アルバム『新しい生活』(2014年)、セカンド・アルバム『しあわせの魔法』(2016年)には山田も参加している。本作に興味を持たれ方にはライブラリアンズなどと併せ、ぜひ2人の(比較的)ポップ・サイドでの仕事も聴いてもらいたいところ。

 


RELEASE INFORMATION
hikaru yamada hayato kurosawa duo『we oscillate!』

レーベル:カンパニー社
品番:cmpns-003
フォーマット:CD
​価格:1,600円(税抜)
ライナーノーツ:細田成嗣

収録曲:
1. #9 (long tone+bow)
2. #4 (tube attachment, feedback+prepared)
3. #19 (steel board attachment+E-bow)
4. #13 (feedback+E-bow)
5. #5 (free jazz!)
6. #1 (contact mic+prepared)
7. #6 (blues!)
8. #7 (contact microphone duo)
9. #14 (alternative country! with mixer feedback)
10. #10 (circular breathing+contact mic)
11. #17 (binaural recording)
12. #8 (long tone+bow)

取り扱い店:
volume1(ver.)(宮城・仙台)
more records(埼玉・大宮)
Ftarri(東京・水道橋)
ディスクユニオン吉祥寺ジャズ館
月光茶房(東京・表参道)
喫茶茶会記(東京・四谷)
Lilt(東京・吉祥寺)
ART×JAZZ M's(東京・国分寺)
CATFISH RECORDS(福岡)
p.minor
Amazon
Bandcamp