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アレックス・オリエ(ラ・フラ・デルス・バウス)演出『トゥーランドット』 誰も見たことのない衝撃の舞台がいよいよ幕を開ける

アレックス・オリエ(ラ・フラ・デルス・バウス)演出『トゥーランドット』 誰も見たことのない衝撃の舞台がいよいよ幕を開ける

いよいよオリエ演出による誰も見たことのない衝撃の舞台が幕を開ける

 2020年のオリンピック・パラリンピック開催を見据えた国際的なオペラ・プロジェクト「オペラ夏の祭典2019-20 Japan↔︎Tokyo↔World」の第1回の公演『トゥーランドット』の公演がいよいよ7月12日に東京文化会館で幕を開ける。

 今回は、指揮、オーケストラ、演出、歌手のどれもが揃った上演で、なかなか見ることができない充実した公演になるだろう。指揮の大野和士と歌手については、日本でもおなじみの顔ぶれだが、演出は世界的な鬼才アレックス・オリエが手がける。

 ベルギーのモネ劇場の音楽総監督、フランスのリヨン国立歌劇場の首席指揮者として、またエクサンプロヴァンス音楽祭などで、大野はマクヴィカー、ファーブル、カシアス(振り付けにシェルカウィ参加)、シュタイン、ワルリコフスキ、チェルニアコフ、ペリー、カステリッチ、ルパージュ、笈田ヨシなど、最前線でオペラ文化を作っている演出家たちと仕事をしてきた。その中から今回、大野が選んだのがスペインの先鋭演出家集団〈ラ・フラ・デルス・バウス〉芸術監督のオリエだ。

 この集団は、1979年に街頭演劇からスタートし、カタルーニャを本拠地として活動、92年のバルセロナ・オリンピックの開会式を演出し、パラリンピックのアーチェリー選手が、火の矢で聖火台に点火するという伝説のシーンが知られるが、同時に、カレーラス、ドミンゴ、カバリエ、ベルガンサ、クラウスなど、スペイン出身を中心にした世界的な歌手の饗宴や坂本龍一に管弦楽作品を委嘱、指揮させるなど音楽的にも優れた演出でその存在感を世界に示した。また1999年のザルツブルク音楽祭でのベルリオーズ『ファウストの劫罰』の舞台演出での映像が話題となり、以降も2007年のスペイン・バレンシアでの『ニーベルングの指環』、3Dを取り入れた『トゥーランドット』などで注目された。

 日本では、過去には愛知万博やサントリーホール・サマーフェスティバル、2008年のパリ・オペラ座来日公演でバルトーク『青ひげ公の城』、ヤナーチェク『消えた男の日記』の斬新で色彩感溢れた舞台で衝撃を与えた。

 オリエは、この集団の中でカルルス・パドリッサとともに指導的な役割を担っているが、その演出で衝撃を受けたのは、大野指揮リヨン国立歌劇場で演出した2本の舞台だった。シェーンベルクの『期待』での主人公の心情を千変万化する映像を駆使して表現した演出、そしてワーグナーの『さまよえるオランダ人』では、冒頭に舞台に荒れ狂う海が現れ、聴衆は映像だとわかってはいても、圧倒的な臨場感の世界に引き込まれ、シーンが変わると客席から緊張から解放された溜息が出るといった、これまでに体験したことのない異次元の体験を味わった。

 また『トゥーランドット』では前述のパドリッサがバイエルン州立歌劇場で3Dを使った演出があると聞いていたが、先日、オリエに今回の演出について聞いた。

 プッチーニについては「まるでビートルズと仕事をしているような感覚にとらわれるほどヒット曲を作る作曲家で、なおかつドラマ性を持っていて、すごく魅力を感じています」と話す。

 『トゥーランドット』については「社会階層のヒエラルキーがあり、そこにある“権力”の重みを描きたい」と全体の演出のコンセプトを語る。

 続けて 「権力を行使する要因であるトゥーランドットが抱えているトラウマを明らかにしたい。つまり、先祖の中で男性に虐待を受けたものがいて、それが彼女の男性に対する憎しみを育てていったところを描こうと思います」。「もう一つのポイントは、結末をどう描くかということ。と言いますのは、この作品を完成することなく、プッチーニは亡くなったのです。『リューの死』までを彼は書いたのです。それまでのプッチーニの作品を見ると、例えば『ラ・ボエーム』、『蝶々夫人』など全体的に結末は悲劇が多く、『トゥーランドット』はハッピーエンドですが、そこに疑問が湧きます。彼女はカラフの名前を聞き出すため多くの民を殺し、リューを拷問にかける。ペルシャの王子の処刑を命じる時にカラフは彼女に一目惚れするのですが、このような女性とカラフが幸せに暮らすという結末は考えられないと思うんです。私はハッピーエンドに終わるようにはしません」

 まさに日本ではこれまでに体験したことのない演出になるようで、その未知の舞台に期待が高まる。

 


LIVE INFORMATION

オペラ夏の祭典2019-20 Japan↔Tokyo↔World
『トゥーランドット』

○7月12日(金)17:45開場/18:30開演
○7月13日(土)13:15開場/14:00開演
○7月14日(日)13:15開場/14:00開演
会場:東京文化会館 大ホール

【演目】プッチーニ:オペラ『トゥーランドット』(全3幕 イタリア語上演・字幕付)
【出演】大野和士(指揮・総合プロデュース)バルセロナ交響楽団/新国立劇場合唱団/藤原歌劇団合唱部/びわ湖ホール声楽アンサンブル/TOKYO FM少年合唱団
[7/12&14]イレーネ・テオリン(トゥーランドット)/テオドール・イリンカイ(カラフ)中村恵理(リュー)/リッカルド・ザネッラート(ティムール)/持木弘(アルトゥム皇帝)/桝貴志(ピン)/与儀巧(パン)/村上敏明(ポン)/豊嶋祐壹(官吏)
[7/13]ジェニファー・ウィルソン(トゥーランドット)/デヴィッド・ポメロイ(カラフ)砂川涼子(リュー)/ 妻屋秀和(ティムール)/持木弘(アルトゥム皇帝)/森口賢二(ピン)/秋谷直之(パン)/糸賀修平(ポン)/成田眞(官吏)

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