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【1983の〈第三者面談〉】第1回 イトケン × 柴田聡子のinFIRE面談

(左から)新間功人、イトケン、柴田聡子

Mikikiをご覧のみなさま、はじめまして。1983(イチキュウハチサン)リーダーの新間功人です。

我々1983のメンバーはそれぞれいろんな場所で演奏しています。リーダーにとってメンバーは家族も一緒、できればみんなの1983以外の顔も見てみたい――。

そんな想いで始まりました1983の〈第三者面談〉。メンバーと縁の深いミュージシャンをゲストに迎え創作とその周辺についてインタヴューしていきます。

記念すべき第1回はドラマー・イトケン × 柴田聡子の〈inFIRE〉面談。イトケンもフル参加したアルバム『がんばれ!メロディー』を軸に柴田さんに歌詞世界やイトケンメンバーの超人ぶりについて勝どきのファミレスでたっぷり語ってもらいました。それではどうぞ。


 

いちばんに欲しいものは〈ワールドワイドラブ〉

新間功人(1983)「柴田聡子inFIREってアレンジどうやって進めるんですか?」

イトケン(1983/柴田聡子inFIRE)「一回みんなで合わせてみてって感じだよね」

柴田聡子「それで〈ここのノリはもうちょっとこうして〉とか〈パッドの数を減らして〉とか言って。もちろん岡田くん(岡田拓郎、ギター)とか、しのぶさん(かわいしのぶ、ベース)が演奏している感じからもアレンジは決まるんだけど、みんなでシューっとアレンジを詰めていく」

イトケン「意外とバンドっぽい作り方してるんだよ」

新間「曲だけ持ってきて、みんなでアレンジするのか」

柴田「そう、なるべくイメージを伝えて」

新間「他のインタヴュー記事で読んだけど、歌詞の意味も伝えたりするんだよね」

イトケン「今日のスタジオもまた〈え! その歌詞の意味ってそうだったの?〉があって」

柴田「やっぱり全然伝わってないところがね。歌詞の意味がわかるとバンドのグルーヴも上がりますよね」

イトケン「そう、グルーヴ上がる」

柴田「私の歌詞、結構意味不明系だから」

イトケン「“涙”のトップの歌詞、〈今年いちばんに欲しいものは?〉で始まるんだけど、恋愛のことを歌っていると思ったら全然違うらしい」

柴田聡子の2019年作『がんばれ!メロディー』収録曲“涙”

新間「え、マジで? 〈君の好きな人が好き 〉って歌詞はじめて聴いたとき、柴田さんめちゃ怖いって思った」

柴田「でしょ、でも違うんだよ。お正月に実家で甥っ子姪っ子とか家族みんな集まって、〈あけましておめでとう〉って言い合ってる時に、うちのお父さんが〈じゃあ今年一番欲しいものはなんだ!〉ってみんなに言い出して。〈iPhone!〉とか〈Nintendo Switch!〉って、甥っ子たちが欲しいものをどんどん答えるのを〈iPhoneはなし。ゲームもだめ。じゃあ次に欲しいものは? 無理かもしれないけど欲しいものは?〉ってお父さんと子どもたちがニコニコしながらどんどんやりとりしているのがすごく良くて。子どもを大事にしないと未来はないと思って作った曲」

新間「子どもが主題なのか。全然わからなかった」

イトケン「騙されるよね」

柴田「〈for all children〉の曲なんだよ」

新間「じゃあ〈誰かの言葉ばかり言ってるのわからないの?〉は?」

柴田「そこは私情をちょいちょい挟んで。SSWだから、私」

新間「なるほど。それはわかってもやっぱ怖い」

柴田「私情が怖いなんてみんなわかるじゃん、それはもういいかな。恋愛だ何だで悩んでる暇があったら子どもたちを救え!って常に思ってるから」

新間「それでもって、タイトルが〈涙〉か。ちょっとこれは」

イトケン「すごいんだよね。歌詞の意味きいて最初のほうは子どものことを歌ってるって一旦わかっても、演奏しているとBメロくらいから、やっぱこれは恋愛じゃねって思ったり」

柴田「私情はちょいちょい挟んでるけど、それがいかにバカらしいかってことを自分に言ってる。一番愚かなのは私、みたいな感じ。恋愛で悩むのはもうやめようって曲。でも大体みんな恋愛にとるよね曲は」

新間「『愛の休日』(2017年)ってアルバムを作る人だから」

柴田「私が欲しいものは〈ワールドワイドラブ〉。マイケル・ジャクソンのネバーランドみたいに」

イトケン「そっちだ、人類愛」

柴田「マイケルってほんっとすごかったんだと思ってる。すごくシンパシー感じる」

新間「マイケルを共感の対象にしたことなかったわ」

柴田「いやいや、もちろん世界の片隅からだよ。でもすごく気持ちはわかる」

 

必然性のない歌詞の感じが今楽しい

新間「さっきちょっと出てきましたけど、イトケンさんはドラム叩く時に歌詞の意味とか考えるんですか?」

イトケン「やっぱバタやん(柴田)は歌詞がほんっとに凄いから」

柴田「嬉しい…」

イトケン「昔は歌詞とかあんま気にしてなかったけど、内容を理解できるとグルーヴが上がるってわかったのは最近。あと曲作りにアレンジから関わる部分もあるかもしれない」

柴田「松田聖子の“風立ちぬ”をカバーした時に歌詞と音楽の絡みがすごく大事って思いましたよね! 意味がわからないところでシャラランって入るよりやっぱ」

イトケン「1番では入ってないシンバルがここには入るとか、演奏一つ一つに全部意味がある」

新間俺はこんなもんじゃないの狩生(健志)さんのブログに書いてあったけど、スティーリー・ダンも歌詞の内容が陳腐なときはベタなコード進行にアレンジし直したりしてるらしいし、やっぱ歌詞って大切。柴田さんは曲と歌詞はどちらが先に出来る?」

柴田「曲かな、同時が理想だけど」

イトケン「新曲“MSG(マディソン・スクエア・ガーデン)”も最初コード進行だけ持ってきて〈とりあえずやってみたら歌詞できるんじゃない?〉ってセッションして出来たよね」

柴田「今までは詞と曲が同時じゃないと、必然性がなさすぎて曲に対してうまく詞が乗せられなかった。最近はその〈無い〉感じが楽しいかな。歌詞をほめられるのは嬉しいけど、いってもそんな〈こだわりあります〉って感じでもないんだと思う」

イトケン「すごくこだわりあるように聴こえるよ。上手すぎるんだよね日本語の乗せ方が」

柴田「え、本当ですか? 嬉しい。いつも難しいなって思いながら書いてます」

イトケン「新間は曲先行?」

新間「え、俺っすか。俺も曲先行っす。歌詞は必要に迫られて書くだけで」

柴田「えー! ならなんで歌詞を乗せるの? インストとか全部スキャットじゃだめなの?」

新間「それを言われると、まあ、やっぱポップスは歌詞が好きだから」

柴田「そっか。歌詞を書くのってなんでこんなに辛いんだろうね」

新間「精神とか身を削る作業だし、段々出がらしになるというか使える言葉がなくなってくるのはあるのかな。イトケンさんは歌詞を書いたことありますか?」

イトケン「ない。『いないいないばあっ!』のコンペで言葉遊びのような歌詞は作ることはあるよ」

※NHK Eテレで放送されている幼児向けの教育番組。イトケンはコンポーザーとして長年同番組に携わっている

イトケンが作曲した「いないいないばあっ!」の楽曲“ね〜んど ねんど”

柴田「歌詞で感動したりすることは?」

イトケン「感動はする。“佐野岬”とか」

柴田聡子の2019年作『がんばれ!メロディー』収録曲“佐野岬”

柴田「え、ありがとうございます……」

新間「俺は“結婚しました”の歌詞に感動したな」

柴田聡子の2019年作『がんばれ!メロディー』収録曲“結婚しました”

柴田「でもやっぱあれも〈結婚したんですか?〉って訊いてくるからびっくりするよね。そのへんみんなと感覚がちょっとずれてるんだよな、もう自分のことを歌わないから」

新間「そうだよね。私情を挟みつつも」

柴田「挟むぐらいだよ本当に」

 

1秒でキレられるようになんないとだめ

新間「イトケンさんがinFIREのメンバーになって変化ってある?」

柴田「たくさんある! えーっと」

イトケン「休憩取るよね」

柴田「そう! 創作の場面って切り替えが大切だけど、私は考え込みすぎてダメになっていくから〈おやつ食べようか〉とか〈じゃあご飯にしますか〉みたいに言ってくれる人がいるのはありがたい」

イトケン「超俺だよね、それ。スタジオに朝来た時点で〈晩飯どうする? カレー?〉とか」

新間「まだ俺朝ごはんも食べてないのに夜の話されてビビった記憶が」

柴田「創作の場面って休憩が難しいじゃん、あれができると結構強い。だから今回の録音はそんなはまり込まなかったかも」

新間「今まではじゃあ行き詰まったりしてたの?」

柴田「考えすぎるし被害妄想だからやばい」

イトケン「制作中に意見合わない時もあったよね」

柴田「うん、意見が合わないとかアイデアが出ないとかも今までは〈あーもうだめだ。絶望だ、終わった〉みたいな感じだったけど、アルバム作りでは普通にあることなんだなぁと思えた感じかも。みんなを嫌いになりかけたり、嫌われたかもって不安になったり。でも私が勝手に思い込んでるだけで意外とみんなそんなことないんだなーって」

新間「すげえわかる。俺も制作中はいろんな人に怒鳴ってしまった」

柴田「私も。のほほんとしたいのに。でもそれぐらいのことだよね音源を出すって」

イトケン「人生かけてやってるから」

新間「まあお互い事情とか意見もあるし相手の気持ちもわかるから怒りきれない部分もある。感情の処理は難しい」

柴田「怒りの瞬発力、失わないほうがいいよね、1秒でキレられるようになんないとダメかなって思う」

新間「社会人を経験すると、いかに感情的にならないかってのを最初に叩き込まれるのよ。だから俺はキレそうになったらまずはケータイ遠くに放り投げて頭冷やしちゃうな」

柴田「最近アンガーマネジメントの本読んでさ、でも怒りを我慢するだけ無駄だなって瞬間がよくある。考え直していい時もあるけど、意味ないことのほうが多い」

新間「それは多分もう柴田さんが芸術家になったからじゃないかな」

柴田「いや、ちょっと待って(笑)」

新間「柴田さん最近いつブチ切れた?」

イトケン「俺の顔見ないで(笑)」

柴田「私は多分バンドとか一緒に作ってる人にはあんまブチ切れない。でも事務所の人とかマネージャーさんには多分気づかれてると思う、こいつ今キレてるなって」

新間「キレるとどんな感じ?」

柴田「テンパっちゃうしバカだからスマートには怒れない。黙ったり、喋りながら泣いちゃったり。子どもと一緒」

新間「マイケルみたいに子どもの心を永遠に」

柴田「いや、絶対失ったほうがいい。人間関係においては」

イトケン「それは、アーティストだって認められてるからOKでしょ」

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