壮絶な物語性、狂気と見紛うほどの情熱、重力を倍増させる緊張感、そして異世界へと誘う幻想的旋律。ディエゴの音楽を聴いていると時々気が狂いそうになる。それでも聴くことを止められない。自分の中の〈なにか〉が解放されそうな気がするからかもしれない。五重奏によるこの新作、現状聴ける唯一の曲“Arbol”の感想でしかないが、タンゴの破壊者とはよく言ったものだ。タンゴに置けるリズム面に振り切れた楽曲と言えばいいか。叙情性は排除されミニマルに、全ての楽器が打楽器のように使用される。太古の昔、現在よりもはるかに進んだ文明を築いていた人類がいたなら彼らの音楽はこうだったかもしれない。