ロリン・マゼール(1930-2014)が2008年8月にイタリアで行ったベートーヴェンチクルスのライブ録音が没後7年を経てソフト化された。速いテンポを基調にグイグイいくかと思えば、要所で入るブレーキや木管などの強調にドッキリする〈マゼール節〉全開の内容。とりわけ大胆な凹凸とラストの追い込みが決まった第7番、変幻自在のバランス操作が冴える第9番は圧巻。当時結成から数年だったオーケストラの鳴りっぷりも上々。野外コンサートにおける収録だが細部まで明瞭に聴き取れるし、響きがドーンと拡がった時のスケール感もとらえている。何かひとつ面白いものを聴きたい向きにおすすめ。