池辺晋一郎プロデュース、第3回は〈1931年生まれの作曲家たち〉

 第1回以来生まれ年に的を絞り(初回=1929年、第2回=1930年)作曲家とその名作にスポットを当ててきた〈日本の現代音楽 創作の軌跡〉シリーズ。第3回となる今年は〈1931年〉。今回登場する作曲家を見てみたら、凄いメンツが揃っているのに驚いた。

 日本の主要産業に成長したGAME MUSICの先駆けとして老若男女問わず知られる盟主〈すぎやまこういち〉。

 日本語オペラの発展に寄与し、現代音楽と映画・TV音楽の垣根を打ち払った〈林光〉。伊福部昭の非西欧型音響を継承・発展させ〈古代主義〉とも呼ばれる独自スタイルを確立した〈池野成〉。セリーからMIDIまで駆使し、今もって進化を続ける前衛派の申し子〈松平頼暁〉。シュトックハウゼンのアシスタントとしても知られ、和洋の音楽的融合を目指す〈篠原眞〉。民謡などの純邦楽をオーケストレイションする技法に長けた〈外山雄三〉。

 まぁ、実に色の濃い事。前年(1930年)には武満徹という巨星がいたものの、それにしたってよくぞここまでというレベルだ。気になって1931年を調べてみたら……様々な分野に人材を輩出している奇跡的な年だった。

 ゴルバチョフ、エリツィン、谷川俊太郎、いかりや長介、ジャニー喜多川、小松左京、中村八大、ジェームズ・ディーン、高倉健、ジャック・ドゥミ……正直これでもまだ書ききれていない。豪華ではあるが、何やらひとつの共通点がある事に気がついた。

 それは、〈変革〉。

 ゴルバチョフは政治から、谷川俊太郎は日本語から世界を変えた。他の方々も活躍した分野で時代を変えている。

 もちろん今回の作曲家達も例外ではない。

 よくよく時代背景を考慮してみると、彼らにとって変革とは〈当たり前の出来事〉のようであったのだ。何と言っても第二次世界大戦が終わったのが1945年。十四歳・最も多感な時期に終戦という一大転換点を迎える事となった。しかも強制的に。思春期に今までの世界観を真っ向から否定され、異次元の世界へ放り込まれる。……はて?  今時流行りの〈異世界転生〉みたいな流れになってきたぞ。けれどコレは現実だ。チートもご加護もない。それでも前に進み続けた先駆者の苦闘と変革の記録がここには存在する。

 奇しくも今はコロナ禍の真っ只中。今までの常識が通用しない所も作曲家が青春を過ごした時代とよく似ている。彼らが変革の末得たものは一体何だったのか? それを知る事は、今を、これからも前に進み続けたい皆さんほど途轍もなく貴重な体験になるだろう。

 


LIVE INFORMATION
池辺晋一郎プロデュース 日本の現代音楽、創作の軌跡
第3回「1931年生まれの作曲家たち」

2021年7月13日(火)東京・初台 東京オペラシティ リサイタルホール
開場/開演:18:30/19:00

■曲目
すぎやまこういち:子供のためのバレエ『迷子の青虫さん』から(1951~52)
林 光:72丁目の冬(1968)
池野 成:八重奏曲(1984)
松平頼暁:領域(1991)
篠原 眞:波状A(1996)
外山雄三:室内協奏曲(1958)

■出演
池辺晋一郎(プロデュース/お話)/金子三勇士(ピアノ)/神田勇哉(フルート)/荒川文吉(オーボエ)/亀井良信(クラリネット)/依田晃宣(ファゴット)/木川博史(ホルン)/安江佐和子、新野将之(perc)/成田達輝、石上真由子(ヴァイオリン)/安達真理(ヴィオラ)/笹沼樹(チェロ)/片岡夢児(コントラバス)/国立音楽大学バリチューバアンサンブル

www.operacity.jp/concert/calendar/detail.php?id=14360