誰もが知る数多くの名曲を生み出したデビュー50年超の大御所バンド――結成メンバーのロナルド・ベルとデニス・トーマスを失っても現役の伝説はまだまだ続いていく。待望の新作をきっかけにその栄光を振り返ろう!

 主に70年代から80年代にかけてヒットを飛ばし、サウンドやリード・シンガーを更新しながら活動してきたクール&ザ・ギャング。ジェイムズ・ブラウンに次ぐとされる夥しい数のリサイクル例にも圧倒させられるが、例えばジェネイ・アイコの“Summer 2020”を聴いても、曲の魅力の半分以上は“Summer Madness”(74年)の引用に負うところが大きく、改めて原曲の素晴らしさを思い知らされるばかりだ。親しみやすいメロディーやリフに、高度な演奏力。そんなサウンドメイキングの要となるのが、ベース奏者のロバート“クール”ベルとサックスや鍵盤を操るロナルド・ベルの兄弟だ。グループは2015年にハリウッドの〈ウォーク・オブ・フェイム〉に名前が刻まれ、2018年にはベル兄弟らが〈ソングライターの殿堂入り〉を果たした。

 64年、ニュージャージー州にて近所の仲間たちで結成。オリジナル・メンバーはロバートとロナルドのベル兄弟、ドラムのジョージ・ブラウン、サックスのデニス・トーマス、ギターのチャールズ・スミス、キーボードのリッキー・ウェスト、トランペットのスパイク・ミケンズの7人。現在は生え抜きのロバートとジョージを中心に、ベル兄弟の弟で元ケイジーズ~フォーキャストのケヴィン・ベルことアミール・ベイヤンらと活動を続けている。

 ジャズを基盤とする彼らは、結成当初ジャジアックスを名乗って活動していた。その後、ニュー・ディメンションズ、ソウル・タウン・バンド、クール&ザ・フレイムズと名を変えていくが、〈フレイムズ〉がJB一派のフェイマス・フレイムズと混同されることを懸念してクール&ザ・ギャング(以下K&G)と改名。コメディアンのリチャード・プライヤーやビル・コスビーのステージをサポートするなどして腕を磨き、69年に初代マネージャーでもあったジーン・レッド主宰のレッド・コーチからレコード・デビューする。やがて彼らはジーンが新設したディライトに籍を移し、ここから数々のヒットを放っていく。デビュー直後の70年代初頭は、ホーンが高らかに鳴り響くタイトでファンキーなソウル・ジャズ系のインストがメインで、そのサウンドはJB’sやヤング・ホルト・アンリミテッドなどに通じていた。

 当時の東海岸では同タイプのファンク・バンドであるブラス・コンストラクションらも活動を始めていた。が、ヴォーカル・パートを設けてセルフ・プロデュースを開始したK&Gは、ジーン・レッドの提案を受けてコマーシャルな成功をめざし、ひと足先にブレイク。プレ・ディスコ期の名曲としても語り継がれるヒット“Jungle Boogie”(73年)などで〈ブギー〉のブームも築いた。同じタイミングでブレイクしたアース・ウィンド&ファイアとは、ジャズ・ファンクから出発したホーン隊を擁する大所帯バンドとしてライヴァル関係になっていく。そんなK&Gの活躍は弟分のケイジーズやクラウン・ハイツ・アフェアにも刺激を与えていただろう。一方で、冒頭で触れた“Summer Madness”のようなフュージョン感覚のメロウ・チューンも展開し、ファンク・バンドとしてのアーシーさをキープしながら女性シンガーも起用して洗練度を高めていく。70年代中期、リッキー・ウェストの脱退前後からは、程良い距離を保ちながらディスコ・ブームにも向き合った。ここまでが第1期K&Gのストーリーだ。

 流れが変わったのは、79年にリード・シンガーとしてジェイムズ“JT”テイラーを迎えてから。それまではヴォーカルも楽器の片手間に歌う感じで、集団コーラスでサビをキメることが多かったが、JTの甘い歌声を活かしたポップなヴォーカル&インストゥルメンタル・バンドへと変身したのだ。現在も活動を共にするトランペットのマイケル・レイ(90年代にはサン・ラー・アーケストラにも在籍)もこの頃に加入している。

 サウンドの変化は、ブラジル出身の鍵盤奏者エウミール・デオダートをプロデューサーに起用したことが大きい。そんなデオダートの援護で“Ladies’ Night”(79年)や“Celebration”(80年)に代表されるダンサブルでポップなヒットを放ち、ブラック・コンテンポラリー道を邁進。83年頃からはエンジニアのジム・ボンヌフォンドと共同制作を始め、打ち込みのアップと共にAOR風のバラードを出しながら第2黄金期を迎える。2011年に共演曲を発表したシックと同じくヨーロッパでの人気も上々で、84年にボブ・ゲルドフが企画したUKの〈バンド・エイド〉に数少ない米国勢としてJTらが参加し、2004年にヨーロッパ主導で作ったコラボ・トリビュートを発表したのも欧州での高い支持あってのことだろう。

 85年にディライトがマーキュリーに吸収合併されてからの彼らは、後にSOSバンドも手掛ける鍵盤奏者のカーティス・ウィリアムス(82年に加入)を中心にストリート色も強調。89年にJTがソロ転向した後はインディー・レーベルの住人となり、人気にも翳りが見えはじめるが、トランペッターでもある元ダズ・バンドのスキップ・マーティンらがリードを引き継いだ時代も悪くはない。90年代半ばにJTが一時復帰する前には、リード・シンガーを探していたロバートが、当時NYにいた久保田利伸をスカウトしにきたという(久保田氏談)。結局実現はしなかったが、ロバートは息子のDJプリンス・ハキームをラッパーとしてステージに迎えるなど、バンドに新しい風を取り込むことも忘れなかった。

 ディライト初期にライヴ・アルバムを立て続けに出した彼らは、精力的にツアーを行う実演重視のバンドでもある。近年のライヴでは、90年代に加入したギターと兼任のショーン・マッキラー、2010年代に参加したラヴェル・エヴァンスがヴォーカルを担当。久々のヒットとなった2016年のシングル“Sexy (Where’d You Get Yours)”あたりからはフィリー出身のウォルト・アンダーソンがメイン・リードを務めている。

KOOL & THE GANG 『Perfect Union』 Omnivore(2021)

 そのシングルを含むのが、このたび14年ぶりに登場したオリジナル・アルバム『Perfect Union』だ。昨年から今年にかけてロナルドとデニスが相次いで他界したが、キース・マーレイがラップで客演した“Pursuit Of Happiness”はロナルドが2012年のバラク・オバマ大統領再選キャンペーンに向けて書いたというから、この10年くらいの間に作った曲を収録しているのだろう。プロデュースもロナルドが手掛けている。JT加入時のポップネスを基調にキャッチーなリフを交えた楽曲はどこまでもポジティヴで、ライヴをこなしてきたバンドならではの一体感がある。

 結成から57年。クールなロバートを中心に高度な演奏で音楽の楽しさを伝える陽気なギャングたちは、往時のフィーリングを失わずに前進し続けているのだ。 *林 剛

左から、デオダートの80年作『Night Cruiser』(Warner Bros.)、フォーキャストの82年作『Forecast I』(RCA)、スキップ・マーティンの2017年作『Love Notes』(Sound Success)