(左から)梅干野安未、松居直美、廣江理枝

生誕200周年のフランクを中心にオルガン音楽を俯瞰する

 現在ではヴァイオリニストが必ず取り上げる晩年の傑作“ヴァイオリン・ソナタ”などの作品で知られるセザール・フランク(1822~1890)は2022年が生誕200周年の記念の年となる。彼はリエージュ(現在はベルギー)生まれで、若くして音楽的才能を現し、1837年にパリ音楽院に入学。作曲、ピアノ、オルガンなどを学んだ。しかし、彼を楽壇に売り出そうとした父親との対立もあり、いったん帰郷した後、再びパリへ戻ると、教師として、また教会オルガニストとして活動するようになる。1858年にはサント・クロチルド教会(現在のパリ7区にある)のオルガニストに就任して、亡くなるまでその地位にあった。

 ドイツだけでなく、フランスにもオルガン演奏の長い伝統があった。例えばルイ14世時代に活躍したフランソワ・クープラン(1668~1733)だが、彼の父親であるシャルルもパリの教会のオルガニストを勤めており、フランソワはルイ14世に引き立てられて<国王のオルガニスト>となった。

 フランスのオルガン演奏の伝統は、フランス革命時に教会が破壊されたこともあり、いったんは途絶えかけたようだが、19世紀には教会が再建されるなどして、復活した。特にフランクの時代にはアリスティド・カヴァイエ=コル(1811~1899)という優れたオルガン製作者が活躍しており、フランクは彼の製作したオルガンを広く紹介したという。サント・クロチルド教会にもカヴァイエ=コル製作のオルガンが備えられたし、サン=サーンスがオルガニストを勤めていたマドレーヌ寺院のオルガンもカヴァイエ=コル製作によるものであった。

 ロマン派時代にオルガン音楽を復興させたフランクの作品を中心に、オルガン音楽の魅力を教えてくれるコンサートがミューザ川崎で行われる〈ホールアドバイザー松居直美企画 セザール・フランク生誕200周年 メモリアル・オルガンコンサート〉である。