六角精児による初のソロ・アルバム『人は人を救えない』は、かまやつひろし“やつらの足音のバラード”や高田渡“告別式”、猫“各駅停車”など往年のフォーク/ロックのカヴァーと、〈酒〉〈鉄道〉をテーマにした唯一のオリジナル楽曲“お前の町へ”を収めた一枚だ。一筋縄ではいかない選曲、バックを支える伊賀航や江上徹ら腕利きミュージシャン、鈴木慶一や鈴木茂、高田漣など豪華な面々が顔を揃えたゲスト陣も聴きどころだが、六角の聴き手に寄り添うような温かい歌声は役者による音楽活動の範疇を軽く超えた仕上がり。2022年のベスト・ディスク候補と言っても大げさではない完成度だ。